『日々の映像』

2007年12月26日(水)  銀行による保険販売が12月22日全面解禁

 銀行による保険販売が12月22日から全面解禁となった。大手銀行は死亡保障、がん、医療、介護保険などに販売商品を広げ、手数料を新たな収益源にすることを目指している。この新たな動きに対する主要銀行の動きをメモしたい。

1、三菱東京UFJ銀行は全面解禁後、支店など173の営業拠点で死亡保険やがん、医療保険も販売。

2、三井住友銀行難波支店は、近畿2府4県で窓口販売を開始したのは26支店。連休明けには4支店が加わり、平成20年度末には155支店で販売する。
同行が保険の窓口販売(窓販)向けに外部から採用した約150人。

3、りそな銀行は生保OBの派遣社員160人を確保したほか、行員教育のためアリコジャパンからの出向者も迎え、アリコの医療保険などを全店で販売する。
などなどである。保険に関する社会の様相が変わってくることは確かだ。しかし、銀行の保険窓口販売が消費者に役立つかどうかは未知数といわねばならない。

*銀行による保険販売がきょうから全面解禁
           2007.12.22 産経新聞
*【窓販 全面解禁前夜】変わる保険サービス百貨店化する銀行
           2007.12.11 産経新聞
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銀行による保険販売がきょうから全面解禁
2007.12.22 産経新聞
 銀行による保険販売が22日、全面解禁された。大手銀行は死亡保障、がん、医療、介護保険などに販売商品を広げ、手数料を新たな収益源にすることを目指しており、地方銀行も追随する見通し。保険業界では、第一生命保険が相互会社から株式会社に転換を表明。政府も金融自由化を加速しており、銀行と保険会社の間で再編が起こる可能性もある。
 新たに解禁されるのは、生保が主力商品としている毎月保険料を支払う平準払い型の死亡保険をはじめ、がん保険や介護保険といった第3分野商品など。金融庁は「銀行での保険販売が広がれば消費者の利便性が高まる」(幹部)とみている。
 三菱東京UFJ銀行は全面解禁後、支店など173の営業拠点で平準払いの死亡保険やがん、医療保険を販売。みずほ銀行は405拠点で医療保険を販売。三井住友銀行も86拠点で死亡保険、がん、医療、介護保険を幅広く売る。りそな銀行は328拠点でがん保険や医療保険の契約獲得を目指す。
 このうち、大阪市中央区の三井住友銀行難波支店では午前10時から新たな保険商品の販売が始まった。同行で、近畿2府4県で窓販を開始したのは26支店。連休明けには4支店が加わり、平成20年度末には2府4県の全155支店で販売する。
 三井住友銀行コンサティング事業部の山中裕二事業推進グループ長(40)は「高度な商品知識が必要なのでしばらくは専門コンサルタントが販売する」と話していた。
 同支店で保険商品の説明を聞きに来た和歌山県橋本市の男性(48)は「銀行だといろいろな保険会社の商品説明を聞くことができるのがメリット」と話していた。



【窓販 全面解禁前夜】変わる保険サービス百貨店化する銀行
2007.12.11 産経新聞
 「今やみなさんは三井住友銀行の行員です」。三井住友銀が今月3日に都内で開いた研修会に参加したのは、同行が保険の窓口販売(窓販)向けに外部から採用した約150人。講師役のコンプライアンス(法令順守)部門の担当者は「これまで勤務した保険会社の商品ばかりを顧客に説明しないように」とくぎを刺すのを忘れなかった。

 三井住友銀は全面解禁をにらみ、今春から生保の営業経験者約250人を正社員として中途採用してきた。国内・外資系生保の営業職か管理職からの転職組が大半を占める。全国の約100店に配置され、解禁される死亡保険や医療保険など保障性商品を扱う。保険販売のプロを集めたのは、顧客への十分な説明が要求されるからだ。
 
国内の大手生保に13年間在籍し、8月に三井住友銀に転じた40歳代の女性は、保険会社時代に「自社の保険商品だけしか売れない」というもどかしさを感じていた。「これからは保障性商品から運用商品まで顧客の幅広いニーズに応えたい」と意欲を示す。
 解禁が近づき、大手銀行の保険販売の拡充の動きも激しさを増す。
 
りそな銀行は生保OBの派遣社員160人を確保したほか、行員教育のためアリコジャパンからの出向者も迎え、アリコの医療保険などを全店で販売する。みずほ銀行は生保からの出向者50人程度を受け入れ、全店で医療保険を扱う。
また、三菱東京UFJ銀行は死亡、医療、がん、介護の4種類の保険のうち、対応可能な商品から販売を始める。取り扱い店舗も段階的に全店まで広げる。指揮をとる和田哲哉常務は「顧客と店舗の多さが当行の強み。行員と保険のプロがペアで販売にあたり、コンプライアンスでも万全を期す」と意気込む。
 
すでに証券分野では、規制緩和で投資信託の銀行窓販や銀行による証券仲介業務が解禁されている。銀行の保険販売も平成13年以降、個人年金保険など貯蓄性商品から段階的に解禁され、今回の全面解禁に伴い、消費者は死亡保険や医療保険など保障性商品も含む保険商品を銀行で買えるようになる。
 大手行の場合、同じ種類の保険でも複数の生保から商品供給を受ける可能性が強く、消費者は自分に適した保険商品を選べる。銀行は金融サービスの「百貨店」に変貌(へんぼう)しつつあり、消費者の利便性は高まると期待されている。

 一方の銀行にとっても保険契約者を引き込むことで営業基盤の厚みが増す。大手行幹部は「社会人になって保険に入る人は多いが、結婚して子供ができると、住宅や教育にお金がかかるし、貯蓄もしたい。『なじみの銀行で一貫した金融サービスを受けたい』との要望は根強い」とみる。
ただ、「保険サービスの革命」(大手行幹部)とみられているだけに、落とし穴もひそむ。

 最大のリスクは販売・支払い責任やコンプライアンスだ。保険金の不払い問題で保険会社のずさんな管理態勢が浮き彫りとなり、「販売後に銀行はどこまで責任を負うのか」「きちんと保険金は支払われるのか」などの不安は尽きない。
 
「保険金・給付金は支払ってこそ顧客の役に立つ。保険金が支払えないのはどんなケースか、勧誘時に注意喚起するのが大事だ」。11月に開かれた、りそな銀の保険業務の管理者向け研修会でも、講師役のアリコの担当者はこう訴えた。
 
年金不安が高まる中で、消費者は老後に備えた動きを強めている。保険窓販の全面解禁が消費者に役立つかどうかは、消費者の利便性と契約者保護を意識した態勢づくりができるかにかかっている。

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石田ふたみ