『日々の映像』

2007年10月14日(日) ノーベル平和賞、ゴア氏受賞

「温暖化防止のチャンピオン」。そう呼ばれるゴア氏が2007年のノーベル平和賞を貰うことは自然環境団体にとってはこれ以上の朗報は無い。ゴア氏の長年の取り組みが、温暖化をめぐる米国の政治状況を大きく変えたのである。
ゴア氏は、地球温暖化の深刻さを訴えた映画「不都合な真実」(06年)にも出演し、話題を集めた。ノーベル賞委員会ゴア氏について、「個人としては、(温暖化)対策への理解を広めることに最も貢献した人物」と評価している。
多少の異論を含めて以下の報道を収録しておきたい。
・ノーベル賞委員長、ゴア氏受賞は「論争覚悟の選考」 読売新聞
・ノーベル平和賞、ゴア前米副大統領らに  読売新聞
・ゴア氏映画に科学的間違い        共同通信
・ゴア氏 米大統領姿勢転換の原動力に  ワシントン=渡辺浩生
・環境、安全保障と密接に関連 ノーベル平和賞に新潮流  産経新聞


ノーベル賞委員長、ゴア氏受賞は「論争覚悟の選考」
 【オスロ=本間圭一】ノルウェーのノーベル賞委員会のオラ・ミュース委員長は12日、当地で本紙と単独会見し、2007年のノーベル平和賞で、国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)と、アル・ゴア前米副大統領を選出した点に触れ、「授賞が議論を呼ぶことは事前に分かっていた」と述べ、受賞者の適否などを巡る論争覚悟の決断だった背景を明らかにした。

 ゴア氏については、気候変動に関するデータが不正確で、地球温暖化の不安を過度にあおっていると一部で批判されているほか、安全保障に対する温暖化の影響を限定的にとらえる学者もいる。だが、委員長は「我々は今年、地球温暖化が世界平和に最も重要なテーマであると認識したのだ」と語った。
 委員長によると、今年は平和賞候補として約180の個人・団体が推薦されたが、委員5人による最終選考の段階では、「ゴア氏への授賞は全会一致で、反対意見はなかった」と述べ、決断の正当性を強調した。
(2007年10月13日3時1分 読売新聞)


ノーベル平和賞、ゴア前米副大統領らに
映画「不都合な真実」のPRで、都内であいさつするゴア前副大統領(今年1月)=ロイター
 【オスロ=本間圭一】ノルウェーのノーベル賞委員会は12日、2007年のノーベル平和賞をアル・ゴア前米副大統領(59)と、各国の科学者らで構成する国連組織の「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」に授与すると発表した。
 「人類が引き起こした気候変動に関する知識の普及に尽力した」ことが授賞理由で、環境関連では04年のケニアの女性環境活動家ワンガリ・マータイさんに次ぐ授賞。同委として、地球温暖化が世界の安全保障に与える影響を強く指摘、人類に緊急の対策を呼びかけた形だ。
 賞金は1000万スウェーデン・クローナ(約1億8300万円)で、授賞式は12月10日にオスロ市庁舎で行われる。
 同委は発表にあたり、気候変動について、「人類の住環境に脅威をもたらし、大量の移動と資源に対する競争をもたらす恐れがある」と強調。その上で、「気候変動が人類の手に負えなくなる前に、いま、行動を起こすことが急務だ」と訴えた。
 ゴア氏は米ワシントンで生まれ、父親は元米上院議員。ハーバード大を卒業後、下院議員や上院議員などを経て、1993年に民主党のクリントン米政権下で副大統領に就任した。70年代から環境問題に関心を持ち、著書「地球の掟」(92年)などを執筆。最近では、世界中で講演活動を行うほか、地球温暖化の深刻さを訴えた映画「不都合な真実」(06年)にも出演し、話題を集めた。同委はゴア氏について、「個人としては、(温暖化)対策への理解を広めることに最も貢献した人物」と評価した。
 IPCCは、国連環境計画と世界気象機関が88年に設立。世界中の科学者が集まり、温暖化の問題点を整理し、最新の見解をまとめてきた。97年には、温室効果ガス削減を定めた京都議定書の採択に貢献したほか、今年5月に採択した第4次評価報告書などで、温暖化の進行と、海面の上昇などその影響を指摘、対策を訴えた。同委員会は今回、IPCCが「人間の活動と地球温暖化の関連を広く伝えた」と指摘した。
(2007年10月12日22時46分 読売新聞)


ゴア氏映画に科学的間違い
2007.10.12 09:27
 地球温暖化を警告したゴア前米副大統領のドキュメンタリー映画「不都合な真実」の内容が「政治的だ」などとして、英国の中等学校で上映しないように保護者が求めた訴訟で、英高等法院は10日、「大筋で正確である」として原告の訴えを退けたものの、映画には9つの「科学的な間違い」があると指摘した。
 BBC放送などによると、判決は同映画の9カ所が科学的な常識として定着していないとして、授業などで上映する際に、教師らが議論となっていることを生徒らに指摘すべきだとした。
 判決は、映画では南極やグリーンランドの氷が解けることにより、近い将来、海面が最大6メートル上昇する可能性があるとされたが、実際には「数千年以上かかる」と指摘した。(共同)


ゴア氏 米大統領姿勢転換の原動力に
2007.10.12 21:26
 【ワシントン=渡辺浩生】ゴア前米副大統領が「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」とともにノーベル平和賞を受賞したのは、地球温暖化防止への参加意識を国際的に高めることに貢献する一方で、京都議定書を離脱したブッシュ米政権を温暖化対策へと促す大きな原動力ともなったからだ。
 「行動するのは今しかない」。先月24日、気候変動に関する国連ハイレベル会合で、各国の首脳たちに熱っぽく訴えるゴア氏は、潘基文事務総長や米側代表のライス米国務長官よりも存在感をみせつけた。
 2000年の大統領選敗北後もゴア氏は「国際環境活動家」として地道な活動を続けたが、逆にブッシュ大統領は、先進国の温室効果ガスの削減目標を定めた京都議定書から離脱。世界の温室効果ガスの25%を排出する米国をどう温暖化防止の取り組みに復帰させるかがゴア氏の最大の目標となった。
 昨年5月公開のドキュメンタリー映画「不都合な真実」は米国内で大ヒットし、人々の意識を大きく変えた。さらに今年7月には、自ら主導して世界7大陸で24時間コンサート「ライブ・アース」を開催し、草の根レベルで一般市民に温暖化防止を啓発した。
 一方、国際的科学者集団であるIPCCは温暖化の主原因が人間行動であることを立証し、今年発表された「第4次評価報告書」では気温上昇や海面上昇など気候変動の影響を具体的に予測。国際世論を大きく動かした。
 こうした流れをブッシュ大統領も無視できず、今年1月、ブッシュ政権は一般教書演説で初めて気候変動対策に言及。2013年以降の「ポスト京都」の構築に向け、「主導権を発揮する」と言明した。排出削減の義務化には依然、消極的な立場を崩していないものの、ブッシュ大統領は京都議定書失効後の国連の新たな枠組み策定作業に積極的な姿勢を打ち出すまでに様変わりした。
 「温暖化防止のチャンピオン」。そう呼ばれるゴア氏の長年の取り組みは、温暖化をめぐる米国の政治状況を大きく変えつつある。



環境、安全保障と密接に関連 ノーベル平和賞に新潮流
2007.10.12 20:06  産経新聞
  【ロンドン=木村正人】ゴア前米副大統領と気候変動に関する政府間パネル(IPCC)のノーベル平和賞受賞は、これまでの授賞理由だった「和平」「民主化」「軍縮」に加え、地球温暖化という「環境」問題も世界の安全保障にとって見逃せなくなってきたことを示した。平和賞は過去にも時代が求めるメッセージを国際社会に送ってきており、地球温暖化問題に対する国際的な取り組みを強く後押ししたといえる。
 ノーベル賞委員会は12日、両者の授賞理由の中で「気候変動が人類の手に負えなくなる前に今、行動を起こすことが必要だ」と訴えた。
 2004年にはケニア出身の女性環境保護活動家、ワンガリ・マータイさんが同賞を受賞しているが、「持続的発展、民主主義、平和への貢献」が理由で、ゴア氏やIPCCのように「環境」単独での受賞は1901年に平和賞が創設されて以来、初めてのことだ。
 今年4月、国連安全保障理事会で気候変動をテーマにした公開討論会が初めて開催された。英国のシンクタンク、国際戦略研究所(IISS)も9月に公表した「戦略概観2007」の中で、気候変動を安全保障問題と位置づけ、「国際社会が温暖化対策に本腰を入れなければ、民族移動や資源争奪をめぐって地域紛争や戦争を誘発しかねない」と警鐘を鳴らした。
今回の決定は、13年以降の京都議定書の次期枠組み作りを十分に意識したものでもある。
 平和賞の歴史を振り返ると、同賞には国際社会へのメッセージが込められている。中国当局が民主化を求める学生を武力弾圧した天安門事件が起きた1989年には、チベット独立運動指導者として非暴力闘争を貫いたダライ・ラマ14世を選出、中国への非難の姿勢を強めた。ヨルダン川西岸とガザ地区でのパレスチナ人の暫定自治に関する「オスロ合意」が成立した翌年の94年には、後に射殺されたイスラエルのイツハク・ラビン首相、シモン・ペレス外相(現大統領)、故ヤセル・アラファト・パレスチナ解放機構(PLO)議長が受賞した。

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石田ふたみ