『日々の映像』

2002年12月08日(日) 拉致に関する朝鮮外務省

 拉致問題の日本の世論と北朝鮮当局との間には、埋め難い「ミゾ」の深さがある。拉致問題に関連した日本の国内世論に対して「我々との問題解決ではなく反対に外国勢力のそそのかしの下で、我々との対決を求める不順勢力の行為としか見ることが出来ない」と主張している。日本人の拉致帰国者5人に対する同情の念などは、全く理解が届かないようだ。

 同スポークスマンは、日本の過去の問題について「数百万人に達する強制連行、日本軍の『慰安婦』、文化財や資源の無制限の略奪行為」などを挙げ「過去に犯した国家犯罪について真相の公開や補償をしないまま、何人かの拉致被害者問題にしがみついている」(11月16日 毎日)と批判しているのだ。

 確かに過去には、国家犯罪と言われるものもあった。ただ、敗戦によって、当時の指導者及び軍人900余名は、戦勝国の裁判によって絞首刑となった。すなわち戦前の国際法に照らしての違法行為は、形式的に清算されているのだ。この日本の戦前の指導者が行なった行為を北朝鮮が今の時点わめき立てても北朝鮮にとってプラスのことはないと思う。

 どう考えても、相手国の過去の非だけを叩こうとする北朝鮮の思考・・・帰するところは自国に大きなマイナスと働くと思う。

 北朝鮮の機関紙「民主朝鮮」は、日朝関係の論評で、次のように指摘している。「本当の拉致犯は日本だ。拉致問題では歴史的に日本は加害者であり、朝鮮は被害者である」とし、「豊臣秀吉による文禄・慶長の役や植民地支配時代の強制連行や従軍慰安婦の問題を指摘『日本は久しい前から多くの朝鮮人を拉致、強制連行した歴史に類例のない最大、最悪の拉致国である』と強調した」(12月3日 産経)北朝鮮のいう植民地支配とは、今から約90年前から60年前のことをいっている。

 北朝鮮当局は、日本を指して「最悪の拉致国」というのであれば、150年ほど前のアメリカの奴隷船はどうだろう。人間を家畜同然に扱い、しかも、人間を売買していたのだ。その規模からいったら、アメリカが歴史に類例のない拉致国になる。

 イギリスはどうだろう。わずか60年前までインドや他の多くの国を植民地として支配していた。インドが声を大にしてイギリスを批判しているだろうか。90年、150年前のことを非難すること自体が時の流れを無視した言論といわねばならない。

 更に、400年以上前の豊臣秀吉による文禄・慶長の役などを持ち出して「日本は久しい前から朝鮮人を拉致した歴史に類例のない最大、最悪の拉致国である」と強調している。北朝鮮の日本に対するイメージがこの程度であれば、国交を結ぶ必要もないのではないか。

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石田ふたみ