今日米国防省の新たな軍事戦略が報道されていた。テロ攻撃などの脅威を与える敵に対して「あらゆる手段を行使する」(日経から)するという。このあらゆる手段とは、核の使用も選択幅に含め、テロに対して先制攻撃もあると言っているのだ。この発表は、テロまたは支援国に対する警告なのか、それとも本気でテロに対して先制攻撃を行なおうとしているのか。答えはどうも後者のようだ。
これはテロに対する基本認識によるものだ。「圧倒的な軍事力にも関わらず、アメリカ国民の多く、とりわけ指導層は、アメリカに対する脅威がこれほど高まった時はないと認識していることである。いつ何時テロリストがアメリカを襲うか。いや必ず襲うに違いない。アメリカはそれらの中で敵に囲まれている。敵すなわちテロリストや『ならず者国家』(悪の枢軸)が原爆を保持すれば、必ずアメリカに対する攻撃に使うに違いない」(8月11日 時代の風から)と思っているのだ。
アメリカの軍事力は圧倒的である。世界全体の軍事費の40%(約50兆円)を1カ国で占めている。アメリカの軍事費は、世界の2位から14位での各国の軍事費をすべて足し合わせたものよりも大きいのである。この世界最強の軍備を持つアメリカが、テロリストの攻撃に脅えているように映る。
前段に引用したとおり、テロリストが必ず攻撃を加えて来るとの前提に立っているのであるから、個人的な感覚で言えばかなりのストレスである。アメリカの指導層の実感を個人に当てはめると次のようになる。「ヤツは必ずおれを殺してくるに違いない。殺される前にヤツを探し出し、先制して殺すのだ。そして恐怖の根を絶つのだ」果たしてアメリカの恐怖の根を絶つ事が出来るのだろうか。
アメリカではイラク攻撃については「もはやその是非でなく、その方法や時期のみに議論の焦点が移っている」(同)と言うから困ったものだ。「テロに対して先制して攻撃」という論理は単純化して言えば暴力には暴力で解決しようとしているだけだ。果たしてこの手段で問題が解決するのであろうか。テロが仮に攻撃を加えるとしても「何故攻撃するのか」と言う根本的な問題に対する論議が必要だと思う。
ただ、際限の無い軍事費の増大は、2億7000万人のアメリカ人に重くのしかかり、最終的には、この軍事費の負担で自由の国アメリカそのものがおかしくなるのではないか。
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