『日々の映像』

1996年01月12日(金)  日本国破産 出口なし!

2005-08-19  
さて、これまでみてきたように、どう考えてみても日本の将来は明るくないようです。ただ、財政破綻は「破産」ではありますが「破滅」ではありません。「破産」だけなら一からやり直せば良いだけです。しかし、独特な経済構造を作り上げてきた日本は、また独特な社会構造を持っています。この独特な社会構造が破滅的な状況を呼び込む可能性があります。次に、財政破綻がもたらす「破滅的な状況」とはどんな事態かを想定してみましょう。
人間なら誰でも、なるべくなら怖いものをみたくなし、できれば考えたくもない。しかし、目をつぶって見ないようにしたところで、その状況が変わるわけではありません。リスク管理として、最悪の事態を想定し、その対策を考えておくことは必要です。
 では、本当に国債と日本円が暴落してしまった場合、どんな状況が訪れるのでしょう。まず、銀行に預金していたお金、郵便貯金に貯蓄していたお金、年金のために積み立ててきたお金、保険のために積み立ててきたお金、もちろん、手元に持っているお金もすべて紙切れとなり、海外に資産を逃避させている人以外は無一文となります。国は予算が組めなくなり、公務員および行政に仕事を依存してきた人たちは職を失います。また、金融機関も次々と倒産し、企業は資金繰りができなくなり、ほとんどの企業が倒産していきます。街には失業者があふれ、生活に困窮した人や自暴自棄になった人により犯罪が多発します。ただし、犯罪を取り締まる警察官も、裁く裁判官もいないので、無秩序状態に陥ります。つまり、日本経済そして社会は機能不全となり大混乱が起こるでしょう。
 さて、ここまででも十分悲惨な状況ですが、もっと酷い事態が想定されます。それは日本の致命的な欠陥、食糧不足です。食糧の確保は国家安全保障の要です。食糧がなければ人間は生きていくことが出来ません。しかし、日本は現在、その食糧をほとんど輸入に頼っています。
【グラフ】食糧自給率
http://www.stat.go.jp/data/nihon/g0703.htm
 日本の食糧自給率は、穀物ベースでみると28%、カロリーベースでみても40%しかありません。40%しかないということは、海外から食料が輸入できないとなると60%の人が飢えるということです。これまでは「円」に力があったので外国から食料を買うことができましたが、「円」に力がなくなると外国から食料を買うことができなくなります。そのときに何が起こるか、考えただけでもゾッとします。
 我が国では、政府が非常時に備え農産物の備蓄をしています。その量は、お米が100万t、大豆が5万t、備蓄飼料穀物が100万t、小麦が100万tです。この備蓄量では米ならわずか1ヶ月半しか持ちません。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
2005-08-20 驚くほど簡単な財政破綻回避策‐発想を転換しよう‐

 これまでみてきたように、このままでいくと財政破綻は避けられそうになく、また、それにともなう悲劇的な出来事も、起きる可能性が大きいといえるでしょう。ただし、それは従来通りの常識的な思考方法のままであれば…の話しです。実は、常識に囚われなければ、財政破綻を回避する方法はあります。それは実に呆気ないほど簡単で、しかも合法的であり、やろうと思えばすぐにも実行可能な方法です。
 貨幣を合法的につくることができるのは、政府と日本銀行だけです。現在、日本の法律で規定している通貨とは「日銀券」と「政府貨幣」です。「日銀券」とは「一万円札」「五千円札」「二千円札」「千円札」であり、「政府貨幣」とは「500円硬貨」「100円硬貨」「50円硬貨」「10円硬貨」「5円硬貨」「1円硬貨」その他に「記念硬貨」などもあります。ただし、「政府貨幣」は硬貨だけでなく紙幣であっても良いのです。通貨に関する基本法『通貨の単位および貨幣の発行に関する法律』では「貨幣」の製造および発行の機能が政府に属するという「政府の貨幣発行特権」(同法第4条)が明記されていて、その発行に上限はありません。また、担保も不要で、発行された「政府貨幣」は政府の負債ではなく、全額、財政収入となります。
 原則的には、財政は税収の範囲内でおこなわれるべきものでしたが、現在は財政規模が拡大してしまい、他から資金を調達しなければ国家運営ができなくなっています。そして、現在、政府がおこなっている資金調達の方法が「公債を発行する」ことです。公債は借金です。しかも利子をつけて返さなければなりません。政府には貨幣発行権があるのに、何故、わざわざ借金をして資金調達しなければならないのでしょう。仮に、500兆円の借金があるとして、500円硬貨を1兆個鋳造すれば、500兆円をつくり出すことができるのです。それで返済をすれば、500兆円の借金はなくなります。わざわざそんな面倒なことをしなくても、政府貨幣の発行の上限は決められていませんし、紙幣でも良いのですから、「500兆円札」を1枚つくって日銀に持っていけば、理論的にはそれで完済できます。あまりに簡単すぎて「そんなバカな!」と思われるかもしれませんが、ノーベル賞を受賞した経済学者のJ.M.ブキャナンとR.Eワグナーの共著『赤字財政の政治経済学』やロングベストセラーとなったD.ディラードの著書『J.M.ケインズの経済学:貨幣経済の理論』、またケインズ経済学の古典的名著A.P.ラーナーの『雇用の経済学』の中でも財政赤字の解消策として国債の発行ではなく、政府貨幣の発行を薦めています。また、やはりノーベル経済学者のミルトン・フリードマンやポール・クルーグマンも「国債の発行をやめ、政府貨幣を発行すべきだ」と発言しています。つまり、政府貨幣の発行は決して奇策などではなく、世界を代表する経済学者たちも提言する正当な策なのです。

☆ 理論的なことをお知りになりたい方は、日本の政府貨幣発行論の第一人者、大阪学院大学経済学部教授の丹羽春喜氏が、論文「カネがなければ刷りなさい」
http://homepage2.nifty.com/niwaharuki/siyokun1998-5.htm

☆ で簡潔に説明されているので是非ご覧ください。

 ただ、政府貨幣の発行にもさまざまなリスクがともないます。詳しくは日本経済復活の会の小野盛司氏が『政府貨幣発行で日本経済が蘇る』(ナビ出版)の中で、さまざまな角度から検証されていますので、是非ご参照いただきたいのですが、結論的には従来の方法、つまり国債を発行して財源にあてるより、政府貨幣を発行して財源とした方が数段優れた方策といえるでしょう。
 ただし、政府貨幣を発行して、この急場を乗り切ったとしても、それが「明るい未来」につながるとは私には思えません。国際情勢も合わせて考えたとき、この先にあるのは、果てしなく競争が続く殺伐とした社会。モラルと歯止めを失い野放図にされたレント・シーカーたちが食いあらす荒涼たる砂漠。弱肉強食を肯定され、次々と積み重なる弱者の屍。そんな風景しか想像できないのです。
 私たち人間に必要なのは"希望"です。それは「明日はもっと良くなる」という想いのもとに生まれるものです。希望のない社会では、活気もやる気も生まれるはずはないし、人間が生きる意味さえ見出しづらいのではないでしょうか?
 第5章で、私は政府貨幣の発行よりもさらに良い方法を提案したいと思います。この章で私が主張したかった点は、いわゆる「従来の方法」や「常識」に囚われていると、その「枠」の中でしか思考できなくなり、その「枠」の中にいる限り財政破綻に向かうしかない。しかし、発想を転換し、その「枠」を取り払って柔軟に思考すれば、どんな危機的な状況も打開できるということです。その方法に触れる前に、もう少しお金の世界を俯瞰してみることにしょう。次の章では、世界的な規模で、いかにお金が世の中を混乱させ、人間を苦しめているかをみていきたいと思います。











 < 過去  INDEX  未来 >


石田ふたみ