やんの読書日記
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夢枕 獏作 中央公論新社
オスマントルコの繁栄した時代 スレイマーン1世が自己の権力の象徴に 建てさせたセリミエジャーミー 建築したのがシナン 彼が建築家として活動を始めるのは 50才を過ぎてからで 若い時代には当時の先進国ベネチアなどを旅して 建築様式を学んだり、スルタンの目として 暗躍したのかもしれない。
この物語の佳境は、スルタンの側近で第二権力者の イブラヒムの死だと思う。 絶対権力者でありながら人を見る目を持っていた スレイマーンが元奴隷のイブラヒムを採用し オスマンの国作りをして繁栄させていくのだけれど 権力争いに負け、スレイマーンの后のわなにはまって 暗殺されてしまう。自らはイスラムに改宗していなかったらしく 死際にアーメンと唱えるイブラヒムの悟りを知って 胸がかきむしられる思いがした。
シナンが思い描いていた建築が数学に基づいていたこと 神も数学によって成り立つと言う 科学者の能力が発揮されるのには時間がかかったが それは素晴らしい遺産だと思う。
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