やんの読書日記
目次昨日明日


2002年12月25日(水) アネイリンの歌

ローズマリ・サトクリフ作 小峰書店

ケルトの戦の物語と副題つきのこの物語、古詩「ゴドディン」
イギリスにサクソン人が押し寄せてきた
600年代のスコットランドの王国 ゴドディンの戦いが
竪琴ひきのアネイリンによって語り継がれてきたものらしい。
サクソン人が押し寄せてきた頃に活躍した人といえばアーサー王。
彼の名はケルト読みでアルトス。
アルトスのしたブリテンの統一がもはや失われたときに、
ゴドディン王が民族300を集めて
サクソン王に戦いを挑み、そして敗れ
たった一人の戦士カナンのみが帰還する。
そう言う内容にサトクリフがその想像力で、
従者として戦いに臨んだプロスパーとコンを登場させている。

ゴドディン王の兵の召集に従って、300の戦士に混じった
ゴルシン王子と主従関係を結んだプロスパーは
王の訓練場で戦士たちと友情を培う。
ケルト人としての誇り高き誓いをかわし、サクソンの王の館を攻める。
攻めたときにはその王はもはや退却していて、
来ない援軍を待ちつつ最後の決戦に出る。
ゴドディン王がケルトの召集状クラン・タラをまわしたのにもかかわらず
同盟国の戦士は来なかった。
ゴドディン王の命令により、
途中まではせ参じた氏族たちが故郷に返される。
その事実を知った最後の生き残り
カナンが感じた絶望のシーンが哀れだ。

カナンの命を救い、アネイリンとともに
ゴドディンに帰還したプロスパーの回想録の形を
取っているのだけれど、アネイリンの歌が
プロスパーによって歌われているといった感じだ。
プロスパーはアネイリンの歌には出てこない人物のはず、
それを語り手にしてしまう
サトクリフの想像力の深さにまた感じ入ってしまった。
全文にまたがる凛とした空気は滅び行くものの
最後の誇りを示しているように思えた。

われこの誓いやぶることあらば
緑の大地開いてわれをのむべし
灰色の海おしよせてわれをのむべし
天の星落ちてわが命を絶つべし

訳者が違っていてすこし表現がちがうけれど
ケルトの誓いは、名文だ



やん |MAILHomePage

My追加