2005年09月14日(水) |
第507話 それはペットロスだと思う。 |
先日、しばらくぶりのお客さんが憔悴したご様子で来院されました。
16歳の柴犬を4ヶ月かけて見取ったあと、ずっと体調がすぐれないんだとか。 「あの子が死んだことは納得できてるの。それがつらいんじゃないの。 4ヶ月の介護がこたえてるの。」
お客さんはそうおっしゃるけれど。 それはやはりペットロスだと思った。
眠れない、気分がすぐれない、食欲もない、微熱が続く。
内科のお医者さんはメンタルクリニックを勧めてくれたそうな。 「すべての原因は精神的な疲労からきてるんですよ。」と。
メラノーマが愛犬の歯茎にでき、レーザーで焼いても10日もせずに再発し、それを取ったら耳に転移し、それも取ったら今度は内臓に転移したそうな。
そしてそれ以上の治療は年齢的に無理と言われたこと。
「どうぞ痛みを取ってやってください。それだけをお願いします。」 その要望にこたえて治療がされ、最後は病院の一室で愛犬は胸に抱かれたまま静かに息を引き取ったそうです。
だんだんに歩けなくなっていく愛犬を抱いて外のトイレに連れてったこと、 寝たきりになってからは膀胱をそっと指で押して排尿させたこと、 床ずれを防ぐために2時間ごとに体位の交換をするために抱いて寝たこと。
淡々と語られてるお話を涙無しでは聞けず。
仕事しながら涙がたくさんこぼれました。
「もう2度と犬は飼わないわ。すぐに次の犬を飼う人の気が知れないの。 もうたくさん。もう飼わないの。」
指圧を受ける体力もなく、全身をゆるくさすって欲しい、と言うお客様が早く元気になることを願いました。
ノア。
長生きして。
その夜、顔を眺めながら心の底から願いました。
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