KALEIDOSCOPE

Written by Sumiha
 
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  ねむい


2004年04月07日(水)
 



◆bitter

 彼女は笑う。とても幸せそうに。
 お茶の時間はおしゃべりの時間だ。彼女の話は聞いていてこちらまで幸せになれる。のろけが大半でも。
 彼女が幸せだとあたしも幸せだ。彼女が嬉しいとあたしも嬉しい。いつまでも笑顔でいてほしいと思う。笑顔でいられる日々が長続きしてほしいと願う。こころから、そう思っている。――いっぽうで現実逃避だと嘲笑う声を聞きながら。
 偽善だと指摘する冷たい影を消せない。
「コーヒーならなんでもいいって言うから、いろいろ試してる内にね。わたしまで好きになったのよ。もともと食わず嫌いならぬ飲まず嫌いだったんだけど」
 言葉通りアメリアはコーヒーを飲んでいる。これまではどこへ行っても紅茶しか注文せず、自らお茶を用意するときも紅茶だった。好みがほんの一ヶ月程度ですっかり一変している。
 頑固な一面を持つ彼女の苦手意識を克服させてしまうとは。しかも強制したのではなく自然な流れで。
 恋は偉大なり。
「リナは?」
 角砂糖をぽとんとひとつカップに放りこむ。ティースプーンでかき混ぜながら何の話かと訊き返した。
 あたしは紅茶だ。オーソドックスなダージリン。ここのところずっとミルクティーにして飲んでいる。レモンティーには飽きた。ストレートにはしたくなかった。渋い紅茶は飲みたくない。コーヒーを選ばず紅茶を飲んでいる意味が無くなる。
 ティースプーンをソーサーに置く。
「コーヒー飲まないのって飲まず嫌いかなって」
 カップを持ち上げた手が一瞬、止まった。
「……嫌いなのよ」
 ふーっと表面に息を吹き掛ける。気休めで冷ましてから口をつける。
 やや薄めの琥珀色。真っ黒のコーヒーを思い出す。しわが眉間に寄った。
 黒くて苦い。苦味はシュガーやシロップで誤魔化しても尚残る。まるで誰かさんのようではないか。
 思い出したくない。考えたくない。
 ふたくち飲みカップを下ろした。
「あの苦さが」
 笑顔と丁寧な言葉遣いの裏に隠された本性をイヤでも感じ取ってしまう。
 彼が意識して片鱗をあたしに見せているのか。それとも。
「砂糖入れればいいじゃない。甘くなるわよ」
 尤もな意見だ。
 ――――だけど、ねえ。溶かしきれないほど砂糖を入れてもまだ苦いのよ。
 舌に残る苦みを忘れられない。甘いミルクティーでは上書きされない。どうあっても拭い去れない苦さを持て余すしかない。
 知らなければ飲まず嫌いでいられたのに。
「苦いのと甘いのが混在してるでしょ。そういうのイヤなの」
 白か黒かハッキリさせたい。中途半端に甘いから気持ち悪い。だったらまだブラックで飲んだ方がいい。
 飲まないという選択肢もある。
 世の中に飲み物は星の数ほどある。飲みたくもないコーヒーをわざわざ選ぶ必要がどこにある。紅茶を飲んでもいい。ジュースを飲んでもいい。日本茶でも水でも何でもある。コーヒーを飲まねばならない理由も必然性も無いのだから。
「苦みが無いコーヒーもあるわよ」
 目を伏せる。
 ふんわり香るコーヒーの匂い。胸が悪くなりそうだ。
 苦いから、きらいよ。きらいなの。
「わざわざ探してまで飲みたい代物じゃないわ」
 味覚を捨てられたら。あるいは麻痺すれば。コーヒーだろうが何だろうが構わず飲める。一回でも考えなかったとは言えない。
 楽になれる方法を模索している。どうすれば解放されるのか。
 逃げられませんよ。そう言って耳障りな笑い声を立てるコーヒーから。
「ふうん……。あ、ね、じゃあ、次はリナの話も聞かせてよ。さっきからわたしとガウリイさんの話題しか出てないわよ。リナはどうなの?」
 どうして、こうも。話しにくい話題ばかり選んで突きつけてくるのか。
 わざとではない。アメリアはこちらの事情を全く知らない。そう、だから余計に痛みを覚える。
 手をつけていなかったレアチーズケーキの端をフォークですくう。
「どうなのって言われても」
 やさしい顔。やさしい声。やさしい言葉。
 似て非なるそれら。たとえ常に敬語を使っていても、笑顔を絶やさなくても。決定的な違いがある。あたしに向けられる感情の種類だ。
 無条件の好意。見返りを求めない。与えられるだけの。
 悪意のひとかけらさえ無い。容姿も腹の中までも真っ黒の男と違って。
「うまくいってる?」
 笑顔は仮面。本性を覆い隠す為の。丁寧な言葉遣いは毒を毒と気づかせない為のベール。
 口元で笑って目で裏切る。甘言で惑わし含んだ棘で現実に引き戻す。
 どうせ騙すなら最後まで騙しきってほしかった。違和感も矛盾も見つけられないほど完璧に。そうすれば――――そうすれば?
 嫌わずに済んだとでも?
「いってるわよ」
 やさしさに惹かれた。春の陽気にまどろむような心地良さをくれる。
 昨日より今日、今日より明日。好きという気持ちが蓄積されいつかあたしを満たす。他を追い出して。
 いつかコーヒーの苦さも忘れてしまうわ。
「そうね、今度四人で出掛けない? 大型連休にどっか泊まりに行ってもいいし」
 あたしもそのころにはブラックを平気で飲めるようになっているかしらね。アメリアのように。コーヒー好きの彼に影響されたと笑って。
 フォークで切り分けたケーキを口に運ぶ。クリームの甘さにもうコーヒーの苦みを思い出せなかった。

――終。


あまりにも四周年記念の(現時点での)投票結果が意外でつい手が滑り(嘘)(どこまでが嘘なんだ)書いてしまいました。コーヒー×リナです(違う)。つーか投票して下さった方がここをご覧になっていなければ無意味。まあしかしノルマは果たしたので(あったのかノルマ)これであと一年は書かなくてもOKですねっ!(待てコラ) あ、このカップリングでラブラブは望むだけ無駄ですのでv(……) 私には書けませぬ。そですね、例外として某赤い人(人外だが)のように裏があるなら(仮面かぶって腹の底で嘲笑ってるなら)別かもしれないということもある可能性も無きにしも非ず。(それ日本語か?)結果的に不倫関係のよーな話になってしまってなんだかな。これでルークリナならm(自主規制)。

リナの彼氏はジェイドさんでもレゾさんでも。コピーレゾさんでも(笑)。リナに敬語を使う男性キャラなら誰でも。レゾが絡まないコピーレゾ×リナを書いてみたいなあ。レゾリナならコピーレゾが絡まなくても書けるのに。逆は無理だ。まあ原作であれだけ執着してりゃねえ。そこら辺を吹っ切ってしまったらコピーレゾではなくなる気もします。むずかしい。ってなんで脱線してるんだ。

軌道修正。初期タイトルがコーヒー(珈琲)だったあたり。まんまやんけ。ネタを思いついたのも私が(インスタントの)コーヒーを飲むようなったことが切っ掛け。飲めないものは飲めないんですけどね。本文中にも書いた通りで砂糖を入れても苦いものは苦くて美味しくない。だから私が飲めるコーヒーはほんの一部です。飲めるコーヒーでも豆から煎れると飲めなくなると思います。某が言うにはドリップは豆から煎れたコーヒーに近いものらしいので。にがすぎ。(-_-;)

酒は飲めてもお子様的味覚は健在です。紅茶はストレートが一番好きなんですけどね。これは慣れなのかコーヒーが合わんつー事なのか。はてはてさてはて。閑話休題。紅茶を飲んだほうが体には良いです(私の場合)。なぜならこーちーは必ず砂糖を入れるから。紅茶はストレート。太るんです(笑)。もう飲むのやめようかな。つかなんであちしは紅茶を飲まずコーヒーを飲んでいるのだ。<自分のことだろう

なんかまた脱線してるなあ。んー。まあ言いたいことは作中で言ってるのでいーか。中盤から集中力が切れました。ごめんなさい。この話ももっと短く書く予定が。掛かった時間も長さものびました。びろろろん。

……つかこれのカップリングって……アメリナ?(待てい) じゃあガウアメ(更に待て)。



BGM無し。
 



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 廻れ廻れ独楽のように  
 止まった時が命尽きる時  
 廻れ舞えよ自動人形 
 踊り疲れて止まるその日まで