◆KALEIDOSCOPE◆ |
◆Written by Sumiha◆ | |
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ひとやすみ・7(終) | 2003年12月05日(金) |
What is your wish? 7 沈黙がふたたび訪れる。 レゾはばつが悪そうにそっぽを向いた。 呆れを通り越して笑ってしまう。あまりに彼らしくなく子供っぽい仕草に。 誰かがあたしを盗み撮りしてレゾが没収した、という可能性だってあるのだ。ポーカーフェイスを保てなかった彼の負け。自分から盗み撮りしましたと白状してしまったのだから。ことばで言わなくとも態度で。 「ばっかねー」 ひらひらと写真をもてあそぶ。 わずかに顔が赤くなった。照れと羞恥だろう。 「こんな、あなたに向かって笑っていない写真を撮ったってしょうがないでしょうに」 人ごみで偶然見かけたところを撮ったのだろう。あたしは横にいる誰かを見て話している。話し相手は手前の通行人に隠れ見えない。 我ながら意地悪いと思いつつ正論を振りかざす。 「あたしはあなたを絶対に見ない。そんな写真を撮ってどこが面白いの」 隠し撮りである以上、当たり前だ。被写体は決して撮影者の存在を感知できない。見るのはいつもレゾ。見られるのはいつもあたし。どこまでも一方通行。 あたしはレゾを見ないし笑いもしない。たとえ笑ってもレゾに向けた笑みではない。この写真のように。 彼はどんな思いで撮ったのだろう。ピントは合っていても、ピンボケしているより酷い写真を。 「馬鹿ね」 口元だけで笑って写真をテーブルに置いた。 一歩、間違えたら犯罪だ。まったく。なにを考えているんだか。 「馬鹿ね。隠し撮りなんて必要無いのに」 罵倒の言葉を重ね微笑った。テーブルに両肘をつき、両手で顔を支える。 なにを言われたのかわからない。そんな呆気に取られた顔のレゾに言葉を変え言う。 「あなたにまで写真を撮られたくないなんて言った?」 あたしは写真嫌いだ。撮るのは構わない。撮られるのがイヤなのだ。昔、家族に無理に撮られた。どれもこれも笑っていない仏頂面で写真うつりの悪い顔だった。だからイヤなのだ。撮られると思うと、つい身構えてしまう。 ……でも、撮影者がレゾなら。無理に笑う必要なんてない。撮られたくないと思うより、むしろ撮られてみたい。彼の目がファインダーを通してあたしを見るとどう写るのか。興味がある。 あたしはあなたの目にどう写っているの? どんなあたしを見ているの? レゾが構えるカメラは彼の目の代わり。顔がカメラで隠れてしまっても覗き見されているようなイヤな気分になんてきっとならない。 「隠れてコソコソ撮るんなら堂々と撮りなさいよ。あたしの意識がカメラマンに向いていない写真を撮ったところで虚しいだけじゃないの? そんな写真を見たってつまらないでしょ」 撮影者――この場合レゾ――の意思しか写っていない写真だ。写っているのはあたしではない。撮りたいという彼の意思、それだけ。あたしの意思は彼がどう足掻いても介入しない。ならば撮る意味はどこにあるのだろう。写真という形で一瞬を切り取り、残す意味は。 撮った瞬間が楽しい思い出にならないなら、撮る意味など無い。手元に残しておく価値すらも無い。 「あなたは自分の立場をもっと理解すべきよ」 撮りたいなら言ってほしい。拒まないから。なんの為に、だれの為にあたしがいるのだ。 彼は何故あたしを撮りたいと思ったのか。いちばん最初の動機を見失っている。 ややして彼は両手を上げた。降参のポーズだ。 「参りました」 苦笑いのようにも、見ようによっては悲しそうな、泣きそうな顔にも見える。 手を下ろし右手で口を覆う。 「そうですね。私が馬鹿だったようです」 言ってなにかを堪えるように目を閉じる。ほどなく視界に入る全てを恐れるようにそろそろと目を開けた。テーブル上の写真に寂しげな笑みを送る。言葉を変えれば自嘲だったのかもしれない。彼の胸中は複雑すぎて(彼が見せまいと常日頃から努めているせいもあり)まったく推し測れない。見当違いかもしれない。 何にせよレゾの誤った考えを改めさせられたなら良かった。それ以上は無粋だ。 「もう隠し撮りなんてしません。ですから……私がカメラを向けても、逃げないで下さい」 レゾは口を覆っていた手を退けた。真っ直ぐあたしを見つめる。 甘く見られたもんね。まだ彼はわかっていない。あたしという人間を。 「なにを今更。あたしは一度でもあなたから逃げた?」 無粋を承知で憶測する。もしかしたら――もしかしたら、逃げるなと言った時に怯えていたのかもしれない。拒絶されたら、嗤われたら、さめた目で見られたら。だれでも持つ恐怖をレゾも持っていたのかもしれない。 心配は杞憂でしかない。あたしは逃げないから。過去も現在も、未来も。 「いいえ――いいえ、一度も。あなたはいつでも私の目の前にいました。……すみません。私はあなたを侮っていたようです」 あたしはおどけた仕種で肩を竦める。 「そうみたいね」 同意して、カップをソーサーから浮かせ持ち上げた。沈んだ空気と彼の気持ちを変える為に。ついでに物足りなさを訴える胃を満足させる為に。 「じゃ、口直しに紅茶をもう一杯頂ける? お茶菓子も付けてくれたら万点をあげてもいいわよ」 BANG! 右手で銃の形を作り撃つ真似をする。 撃たれた真似か、はたまた騎士か執事の真似か。彼は右手で胸を押さえた。 「仰せのままに」 隙も乱れも無い動作で優雅に一礼しカップを下げる。 レゾが紅茶を淹れている間、テーブルの上を片付けた。パズルは箱の中へ、その箱は脇に立てかける。写真は迷ったがソファに置かれたアルバムの上に乗せておいた。捨てるも取っておくも彼の自由だ。 箱に眠るパズルに思いを馳せる。 買って良かった。今日ここに来て良かった。喜怒哀楽、すべてをめまぐるしく体験した一日だった。 いきなり行って驚かせられたし。パズルは喜んでもらえたし。望みは叶えられた。 熱い紅茶は飲めるし、お茶菓子もあるし、レゾもいるし。望みはここにある。 すれ違いに悲しんだり誤解に苦しんだり非常識な行動に怒ったり。必ずしも楽しさばかりとは言えないけれど。 美味しい紅茶とお菓子で機嫌をなおしたり、共通の話題で盛り上がったり、顔を見て話せる喜びを噛み締めたり。苦しみばかりでもない。共にすごす時間を幸せだとはっきり言えるから。 「どうぞ」 「ありがとう」 間違えたくない。レゾを見て歩いて行きたい。 望みは、ここに在る。 彼と共にある。 ――終。 稿了 平成十五年十月三十日木曜日 改稿 平成十五年十二月五日金曜日 これで完結です。お付き合い有難う御座いました。m(_ _)m 各話の配分がおかしいですね。短すぎたり(特に一話)長すぎたり(特に五話)。うーん。なかなかキリの良いところで切るのは難しいです。そしてまたいらん伏線を散りばめ。よろしい。こうなれば私も腹をくくりましょう。新たなネタも思いついたことだし、とことん付き合ってやろーじゃないの。ミルリナとあわせてv(笑) ミルリナは兎も角、↑のレゾリナはなんだか結婚式だとか新婚さんだとか子供とか果ては初孫だとか(笑)そんな話にまで発展しそう(※今のところそこまで書く予定はありません)なラストになってしまいました。何故だ。〆の言葉が悪いのかレゾが悪いのかリナが悪いのか。全部? 予定がだいぶ狂いました。最初はリナがソファに座るシーンからだったのです。パズルをレゾに渡すシーン。そこからアルバム見て挟んであった隠し撮り写真発見のシーンへ持って行こうと。そーです最初は写真の話のみ書く予定(で短編のつもり)だったのです。んが。パズル渡すんだったら玄関先だろうと思い直しまして。ふつーに受け渡しちゃつまらないかと舞台をハロウィンにしてお菓子か悪戯か、の常套句でリナを登場させたくなり。ただパズルを渡すだけじゃ萌えが足りない(……)(余計なこと考えたな過去の自分)、それならすれ違いさせてみましょーか、リナが一人でレゾの家に来るより誰かの送り迎えがあった方がいいかな、じゃあリナがレゾの予定を訊いたゼルさんにご出演願おう(ここで前振りのオチ決定)(あーああ)、と雪だるま式に内容が増えたのでした。はう。 全編通して浜崎あゆみの「SURREAL」聴いてました。内容には全く関係無いですね。いや前半は関係あるか。「evergreen with you」のときと同じく(あれはマイラバの「evergreen」がベースです)、前半で言いたいことは「SURREAL」ですな。でも書きたかったのは後半、と言うか最後の写真の話です(笑)。だから本題が短く前振りが長くなってどうする。 魔剣士「期待させるだけさせておいて俺がオチか」 ご、ごめん。でもほら、前回声だけ出演の某獣王様や名前だけ出演の某姫や某獣神官よりマシだってことで! なぐさめになってないか。いやでも一番悲惨なのは姫だと思うぞ。ずっと名前オンリーの出演。ひとこともセリフ無し。獣神官が報われないのはいつものことなので問題無し。(いいのか!?)だって報われる方が違和感あr(略)。 余力があれば某獣王様のその後を書きます。伏線を張りっぱなしで放置したくないので。初ゼラリナ(名前に某を付けた意味は)の予定(あ、いっかい女子校話で書いたか。リナ出てないけど)。獣神官は……今のところ出番無しです(笑)。主従で醜い争いを繰り広げるのも面白そうですが。そうするとゼラリナにならないしリナそっちのけで会話することになりそう(これはこれで面白いかもしれないけどリナを除け者にして、とゆーのが気に食わん)だしで今のところ保留。 さてシリーズ化の覚悟をしたところでちょこちょことキャラクターの設定なぞも作っていたりします。……何を読んでも引かないで下さいね。原作の彼らとは別人です。パラレルということでひとつ大目に見てやってください。ここには詳細を書きません。いろいろ想像する楽しさをなくすのは無粋というもの。 とりあえづ。限りなくオールキャラ(流石にロッドやレミーさんは出しません。某姫のおねいさんも……出せない、かも)ということは確定してます。訂正、限りなくリナ総受けです(笑)。そのうち、各キャラとリナの初対面時のエピソードなども書きたいと思います(レゾリナがベースじゃなかったのか)。脱線。ここに書くのは場違いなんですが、同じく現代パラレルのミルリナは、こちらのレゾリナと違ってミルガズィアさんとリナの二人だけの世界v になるハズ。他のキャラの乱入とか横恋慕とか一切無しで。と言いつつ書くかもしれませんが(どっちだ)。レゾリナのほうで書きたいのは周りに振りまわされるレゾとリナなのかもしれません。ミルリナはミルガズィアさんとリナのらぶらぶ(笑)。まあどちらのカップリングにしろラブラブなのは(連呼したくない単語だなあ)変わりません。恋は レゾとリナに心休まる日は来るんだろうか。たとえ結婚する日が来たとしても心休まる日は来ないと思う……。面白半分でちょっかい出してくる輩から本気で横槍いれてくる人から、もーライバル(と書いて敵と読む)は掃いて捨てるほど、いや失礼、事欠きませんからね。ライバルさんたちはわらわらと増殖してるんでしょうか。アメーバでしょうか。分裂してるんでしょうか(うわイヤだ)。単細胞相手ならレゾも扱いやすいだろうにねえ。ある意味単細胞だが皆様、悪知恵が働くから(笑)。レゾさん頑張って下さい。幸せは果てしなく遠いです。辿りつく前に力尽きて倒れないように適度にリナさんの傍で休んで下さい(それがまたライバルの神経を逆撫でするんだろうけど)。勝手なことばかり言ってと怒られちゃいますかね(笑)。 今日の日記は全てこの話題です。最終話が二倍の長さになった為と後書きが異様に長くなったせいです。こんな日があってもいいでしょう。いいということにしましょう(笑)。 またもやこそこそ。この「What is your wish?」も緋崎様へ捧げますv(懲りろよ) あれの続きですし、緋崎様のカキコが無ければ生まれなかった話ですので。新たな妄想を有難う御座いましたv 駄文に磨きが掛かっていてすみません。そしてせっかく出番があったのにゼルさん報われなくてごめんなさい(苦笑)。行きの車中で幸せを堪能したということでお許しを。せーつーなーいーかたおもいーあなたはきづかーなーいー♪(歌って誤魔化すな) 没。(入れる場所が無かった) 車内で溜息をつく。 帰り道はいつだって憂鬱だ。だれもいない部屋、彼女の気配だけを色濃く残して。言葉も体温も直接とどけられない場所にいる。 別れは一分ほど前だった。もう会いたくなっている。依存と中毒症状は日増しに比率を上げていく。重症だ。麻薬などよりよっぽど迷惑だ。効果的な治療法が存在しない。 かぶりを振る。意識を切り替えた。 なんだか謝ってばかりの一日だった。らしくもなくテンションの針が大幅に揺れ疲れた。短時間の内に何度天国と地獄を行ったり来たりしただろう。 地獄(と天国)を見た原因のひとつを思い返す。密かに撮った写真の一枚を。 冷汗が背中を流れ落ちる。 良かった。見つからなくて。 もし寝顔も撮っていたと知られたら。笑って許してなどくれなかったに違いない。きっと彼女の性格からして、怒り狂いアルバムごと燃やすと言ってきかなかったはずだ。 彼女には一生、秘密だ。 寝顔の写真は隠し金庫にでもしまっておこう。実物――彼女の寝顔――が日常的に見られるようになるまで。写真という形で保存しておく必要が無くなる日まで。 そこまで考え苦笑する。 「いつになるやら」 呟きはひっそり空気に紛れ消えた。 ――終。 レゾさんあなた……。(-_-;) どんどん彼のイメージを崩している気がします。こんな彼でもOKですか。ダメですか。私はダメ男スキーなので(それもダメだな)OKです(笑)。んんんーと。わーらーあってーゆるーしてー♪(@和田アキ子) このレゾさん本当に性格悪いですね。リナさん彼で後悔しませんか? そんなひとだとは思わなかった……って(リナに)言わせてみたい気もする(笑)。姫なら簡単に言いそうなんだけど(笑)。なんて書くからまた話が膨らんでしまったよ。レゾさんの地位を地の底の底まで落として楽しいか私。楽しくなかったら書かないけど……(楽しいのか!)あまりにリナが不憫だ。てゆかどんな話を書こうとしてるんだ私。おっかしいなーリナ至上主義の筈なのに。 レゾさんが変態なのか私が変態なのか。どちらもですか。(笑)てゆかレゾさんのキャラクターを歪曲させている私だけに責があるのでしょうか。悩むところ(悩むまでもない)。 BGM無し。脳内BGMも無し。 | ||
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