KALEIDOSCOPE

Written by Sumiha
 
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  ひとやすみ・5


2003年11月02日(日)
 



What is your wish?
4





 ほんっと仲、悪いのよね。
 険悪な顔つきで睨み合っている二人に挟まれ苦笑いした。他にどうしろと。
「わざわざ送り届けて下さって有難う御座います。もうあなたの役目は終わりましたからお帰りになって結構ですよ」
 レゾがそう言えば相対する彼のいとこも負けじと言い返す。
「生憎とリナに帰りも頼まれているんでな。あんたも忙しいだろう。早く戻ったほうがいいんじゃないのか」
「お気遣い無用です。一段落ついてこれからリナさんとお茶を飲むところですから」
「は、だからさっさと帰れとでも言いたげだな」
「頭は悪くないようですね。その通りです」
 ふたりはびちばちと季節外れの花火――もとい、火花を散らしている。あたしなんてどうでも良くて、あたしをダシにして相手を言い負かしたいだけなのではないだろーか。
 被害妄想? 自分を無視して悪口に夢中になられたらそう思いたくもなる。
 遠い目で二人のいがみ合いの発端を思い出し現実逃避に走った。



 レゾの問いに首を振る。横に。
「あたしも最初はそうしようと思ってたんだけど。送ってもらったの」
 彼はいぶかしむように首を捻り、ややしてはっきり眉間に皺を刻む。
「……誰にですか」
 うわ。怒ってる。怒ってるよー!
 首を竦める。
「えーっと、ね。その、ゼルに。あなたのスケジュール訊いたのよ。急に行って驚かせたかったから。行って留守だったら意味無いでしょ? そしたらついでに送ってくれるって言うから」
 全部言ったほうが変に隠し立てするより責められない。過去の経験から学んでいた。
 ゼルガディスから言われた時にはタクシー代を払わなくて済むと喜んで飛びついたのだ。
 レゾは家にいても忙しいだろうから、長居せずすぐ帰るつもりでいた。だからゼルに帰りも頼んだ。引き止められるとわかっていたら――現状を予測できていたら――タクシーで来ていた。
 ふたりの会話は何と言うか、筆舌に尽くしがたい。なごやかに会話できた例が無いのだ。あたしは天敵と称する以外彼らの関係を表す適切な言葉を知らない。
 なにが原因でここまで仲が悪いのか。いとこなのに。
 突然レゾの腕の力が強まる。痛いとか息が苦しいとかの不平不満ならあとから付いてきた。それらよりも先に、単純に驚いた。
「リナさん」
「な、なに」
 今更だがあたしたちがいるのは廊下の吹き抜けだ。マンションの住人がいつ出てきてもおかしくない。率直に言ってしまえば早く離してほしかったりする。
 見られたら恥ずかしいでしょーが!
 あたしの内心など素知らぬ顔で(レゾは気付いててやってる。絶対そうだ)どことなく思いつめた目であたしを見ている。
「私といる時間とゼルガディスといる時間、どちらを選びますか」
 子供かぁぁぁッ!
 彼には悪いが思いっきり脱力した。
 たまーに、こういう子供っぽい嫉妬をするから普段との二面性に呆れる。とは言え、まあ、嫉妬してくれるのは、……うれしいけど。
「しごと抱えてるんでしょ?」
 日曜も祝祭日も無く――盆暮れ正月くらいはある――忙殺された毎日を送っているのに。家にいる理由が暇だから、ではないと知っている。
「息抜きは必要です。休まなければ倒れると仰ったのはリナさんですよ?」
 さっきの思いつめた目などどこへやら。いたずらっぽい笑いであたしの答えを促してくる。
 しょうがないなぁ……もう……。
 なんて言ったところで、あたしだって同じなのだ。顔を見たのは今月の五日以来。久しぶりに会えて話せる時間があるなら。一緒にいたい。一秒でも長く。
 気恥ずかしくて言えないけど。
「じゃあかわりに約束して。毎日最低でも五時間以上寝ること! 分割睡眠は駄目よ」
 言わなかったら何日でも徹夜で動き続けるんだから。
「お約束します」
 頷いた彼を見て身体を離す。レゾは名残惜しそうに苦笑したものの、なにも言わず逆らいもしなかった。
 遠くなったぬくもりに心を冷やされる。身勝手なさみしさを切り離し笑顔を作った。永遠の別れではないのだ。大袈裟に考えるほうがどうかしている。ぬくもりを感じていたいならすぐ行って戻ってくればいい。ゼルガディスには悪いが。
「んじゃ、ちょっと下に行ってくるから」
 再度踵を返す。ところがまたもや邪魔された。
 ぽんと肩に手を置かれ、肩越しに振り向く。
「待ってください。私も行きます」
 にっこりという擬音付きの微笑みに了承以外の返答を封じられた。
 念の為に鍵をかけエレベーターへ向かって歩き出す。
「車はどこに?」
 ゼルガディスの名前さえ言いたくないのか、実に簡潔な言葉だ。風が肌に突き刺さる。いや正直に言おう。突き刺さる痛みは風が原因ではない。レゾである。
 ぴりぴり伝わってくる怒気に似た感情。空気が急に重さを増した。
「下。駐車場じゃなくて、道路のほう」
 余計な言葉――すぐ帰るつもりだったからというセリフ――は言わなかった。ささくれ立っている神経を刺激したくない。
 違法駐車だ。長居する予定がなかったから駐車場に入れなかったのだ。早く行かないとゼルの機嫌まで損ねてしまう。既に結構待たせているから怒っているかもしれない。煙草の本数が増えていなければいいが。ガンになると脅してもクサイと文句を言ってもやめない。それどころか「あんたの前じゃ吸ってないんだ、副流煙の心配は無いんだからいいだろう」なんて開き直る始末だ。そーじゃなくてゼルの体が心配なんだけど。
 頭はすっかりゼルガディスで占められ気付かなかった。沈黙の長さと圧力を更に増やしていた空気に。
 エレベーターを降りマンションから出る。車はすぐに見つかった。ゼルガディスはマンションの玄関付近を窺いながら車中で待っていたようだった。こちらが車を見つけるのとほぼ同時に出てくる。
 皺が眉間に深く刻まれている。……これは怒ってるな。
「遅かったな」
 口を開くなり非難された。やっぱり怒っている。眦はつり上がっているし目を細めていかにも怒っていますと顔に書いてある。腕を組んで左足に重心を置き、右足を軽く前に出している。
 今の声が目に見えたなら、いがぐりかウニかハリネズミの形をしていたに違いない。
 そんな態度にまで怒りを噴出させなくても。遅くなったのは悪かったけど。思うものの、非はこちらにあるので素直に謝る。
「ごめん」
「リナさんが謝られる必要はありませんよ」
 割って入った声に驚いた。レゾが斜め後ろからにこやかにあたしを庇う。
「私が引き止めたんですから」
 ゼルの視線がすいと移動した。唇が嫌味な形に歪む。
「いたのか。気付かなかった」
 あー……あああああ。こうなるからイヤだったのだ。一度ふたりにもっと仲良くできないの、と言った覚えがある。その時に返ってきた答はというと。「無理です」レゾには笑顔で却下され、ゼルガディスはゼルガディスで思いっきり顔を顰め無言での抗議をされた。
 あたしは運命だとか輪廻転生だとかまるっきり信じていない。そのあたしでも、このふたりには前世でよっぽどの因縁でもあったのだろうと思ってしまった。
 手のつけようがない仲の悪さを他にどうすればいいというのだ。
「おや。目が悪くなったようですね。眼科へ行くことをお勧めしますよ」
 程度の低い悪口だ。尤もレゾに限らず先のゼルも同様に。あたしは傍観者の立場を選んだ。罵詈雑言の応酬となると入る隙など無いも同然。下手に口を挟むと激化するのだ。大人しくしていたほうが賢明なのである。
「余計なお世話だ。両目とも裸眼で1.5ある。眼科に行く必要があるのはあんただろう。老眼は心配じゃないのか、レゾさんよ」
 空気がびきりと音を立てる。亀裂が走ってガラガラ崩れてしまわないだろうか。
 レゾはたまに本を読む時など眼鏡をかける。乱視入りの遠視らしい。
 知ってたのかな……ゼル。レゾの視力を。どこかで眼鏡をかけている場面を見たのかもしれない。それとも単純に自分より年上だからと悪口の種にしたのか。可能性としては後者が有力と見た。
「ご心配なく。そんな年齢ではありませんから。それよりもこんな場所でうろうろと何をなさっているんですか」
 ゼルはフンと鼻を鳴らした。
「リナの送迎役さ」
 言ってもいいだろうか。どっちも低い次元での争いだ。ふたりとも気づいているんだかいないんだか。レゾに言ってもゼルに言っても、相手に合わせてやっているんだと言い返されるのが目に見えている。この件に関しては見て見ぬふりを通している。そうはいっても目の前で(あたしを無視して)口論されると低レベルだと言いたくなってくる。
 レゾにとってもあたしにとっても貴重な時間のはずなのだが。
 なにやってるんだろ。せっかくアメリアに見立ててもらった服も泣いているよ。
 あたしが現実から目を逸らしている間にレゾがわざとらしくもああと頷き――冒頭に戻る。
「陰気なあんたの部屋にいるよりアメリアたちとパーティーしているほうがリナも楽しいだろうよ」
 ゼルガディスは違うか、とあたしに話の矛先を向けた。
 はっと意識を目の前に戻す。そうだった。待っていてくれたゼルに謝りに来たんだった。ようやく本題を思い出した。口論が続いていたから忘れていた。だれのせいとは言わないが。
「気持ちは……嬉しいんだけど」
 ゼルは落胆を隠すように無表情になった。
 良心が痛む。なまじ彼が皮肉を言ったりせず、あからさまにがっかりした顔を見せないだけに。
 ごめんごめんごめん。
 ゼルもアメリアも、連絡を取れば必ず会ってくれる。だけどレゾにはそう簡単に会えない。ふたりでいられる時間を大切にしたいのだ。やっぱり電話だけじゃ、声だけじゃ足りない。近くにいたい。だれよりも。
「ごめん。送ってくれてありがと。アメリアに伝言、お願いできる? 誘ってくれてありがとう、また今度誘ってって」
 レゾは確かにいま一番傍にいたい相手だが、ゼルだってあたしにとって大切な友人なのだ。
 両手を合わせ片目をつぶる。
「埋め合わせ、するから。あなたにもね」
 ゼルは仕方なさそうに溜息をつき苦笑した。
「わかった。ま、あんたが言うならな」
 いやあの。わざわざレゾにケンカ売らなくても。
 そのレゾは横槍を入れてこないどころか何も言わない。耐えているのか聞き流しているのか。後者かな。なんとなく。
「アメリアには伝えておく。じゃ、またな」
 あたしに片手を上げ素早く車に乗り込む。あっという間に車を発進させ視界から消えた。
 ゼルの車が完全に見えなくなってから。ちらと横目でレゾを見上げる。
「――じゃ、お茶にしましょうか?」
 あたしが言うと、レゾは微笑ってあたしの肩を抱いた。



――続く。

対ゼラスの時もそうだったんですが(損な役回りだよごめんなさい)、すっごい楽しいです低レベルな悪口の言い合い!(笑) レゾも大人げないね(笑)。レゾの毒舌を止められる人(あるいはレゾを口で負かすことができる人)はどこかにいないものですかね(笑)。でもってゼルさんの出番少なくてごめんなさい。最後までレゾにケンカ売ってました。すこしでも報われる日が来るといいなあって他人事かい!(しかしゼルが報われたらレゾの立場が無い。苦笑)(すぐ載せるつもりでしたが、文章の不自然さに耐えきれず加筆修正していたせいで遅くなりました)(現在午前四時半すぎ。あまりねむくない。今日も睡眠時間一桁かなv/自虐)(四時間以上書いていたおかげで今回の話は長さが書き終えた直後と比べ二倍になりました。驚き)

さてー。次回からよーうやーく本題です。前振り長すぎ。本題のほうが短いです。がっくり。てゆか今までのが前振りだって言って信じる人が何人いるのか。閑話休題、次回のサブタイトルは「同レベル……」です(笑)。誰と誰が?



◆雑談・マウス編(笑いたい方は必読。嘲笑可/痛)

文字数、大丈夫そうなので書く(笑)。先ほど(つっても↑を加筆修正する前です。日付かわってませんでした)マウスがイカれました。てゆか逝きました。あまりにも唐突に使えなくなったのでビックリさ。買っておいて良かった。先見の明に感謝(自画自讃)。とゆことでさっそく付け替え。……。…………。使いにくいっ! マウスポインタが飛ぶんです。拘束移動(どんな移動ですか)(マウスカーソルひょっとして受ですか)(ここに馬鹿一名)(攻が拘束されているってのも案外萌えですが)(マウスカーソルが受なら攻は誰だろう。マウスかな)(もうその話題から離れなさい)(正→高速移動)するんです。マウスを右に動かすとマウスカーソルは左にぎゅいんっと動く。マウスを左に動かすと右に、上に動かすと下に。動きが目で追えないと言うか、でたらめな方向に勝手に動いている感じ。……使えるかぁぁッ!(がっしゃーん)(お約束・ちゃぶ台返し)

しょーがないのでキーボード操作のみで検索してみました。日ごろからキーボード使うようにしているものの不便です。膨大なリンクを移動する時はマウスのほうが早い。使っていないようでいて頼っているよーです。それはさて置きいろいろ見て初めて知りました。光学式マウスには専用パッドが必要なんですね。←無知。買わなきゃ駄目なのか!? 悲嘆にくれつつも更にぐぐる。マウスの設定を変えてみたが変わらない。飛ぶ(笑)。そらもーびゅんびゅんと。素早く動かなくていいから言うこと聞いてくれよ。頼むよ。などと(心の中で)言ってみるも当然聞く耳持たず(持つほうが怖いよ)。願いは一瞬通じ、五秒ほど普通に動きました。五秒だけ。意味ない。ぜんっぜん意味ない。←リナ@13巻

そんななか、某所で見た情報を思い出しました。確かペンタブの話だったと思うのですが、一枚紙を敷いてその上で使うといいらしいです。→即実行。動く!(いや今までも動いていたんだが。速さと動きが尋常ではなかっただけで) 言うこと聞いてくれてる!(喜) てことでいま新マウス使ってます。ふつーのマウスパッドの上に紙を敷いて。あまりの嬉しさに(余計な出費しなくて済んだ喜び。笑)踊りはしませんでしたがマウスに名前をつけてみました。ミリーナ。うわ!!(痛) いたい痛いイタイ。痛いよこの人。だってボディが銀色なんだ!(安直) ホイール周辺は黒。ルクミリ的色だなあv(……) 私も逝ってきた方がいいでしょうか。修理に出してもどこもかしこも壊れているから直せませんとさじ投げられます。捨てられるだけです。リサイクルも出来ません。生ゴミだし。某獣神官と同類は嫌だなあ(向こうもそう思っているだろうよ)。自分で書いてて痛。そんなところで今日はお開き。イヤな〆だ。

……あ。私、物に名前を付けたのはこれが初めてです。嘘じゃないです。本当です。生き物に名前を付けたこともありません。つか初めて名前を付けたのがマウスってどうよ。



BGM無し。
 



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 廻れ廻れ独楽のように  
 止まった時が命尽きる時  
 廻れ舞えよ自動人形 
 踊り疲れて止まるその日まで