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大引の凄さ - 2004年06月03日(木)

不動心。大引が神宮のグラウンドで見せるプレーからは、この3文字が強く伝わってくる。

2004年六大学春季リーグ戦が終了した。明大の優勝で幕を閉じ、防御率1位を獲得した一場の凄さを見せ付けられた。

5位という不甲斐ない成績で終了した法大にとって、明るい話題が1つあった。2年の大引が首位打者、ベストナインを獲得した。

大引は僕にとって思い入れの強い選手の一人。ちょうど一年前、僕は大引に単独インタビューし、記事を書いた。その時はまだ大学野球に慣れるのに精一杯の時期で、大阪から上京してきたばかりの初々しい感じが残っていた。「この選手は近々、必ず神宮を沸かすプレーヤーになる」。この直感が、2004年春に的中した。

打率.409、打点9、本塁打0。タイトル獲得者として、爆発的に良い数字とは言えないが、昨秋の打率.143という数字を考えれば、大引のポテンシャルと努力の凄さがうかがえる。打席に立つ雰囲気からも「なにかやってくれそう」という空気を感じる。表情もポーカーフェイスで、大物のオーラを感じる。体も一回り大きくなり、まだまだ可能性を感じさせる。

欲をいえば、本塁打0は寂しい。高校時代、夏の大阪府大会で、清原と同数の本塁打記録を樹立した大引なら量産できるはずだ。もうワンランク上を目指して、打撃向上に努めてほしい。その先に、三冠王が見えてくる。

今季、法大にはマスコミが敵に回った。春季リーグ戦最中、スポニチが「法大、選手全員が練習をボイコット」と報じた。僕はその記事が本当とは信じたくなかった。というのは、そのネタを報じているのはスポニチだけで、他のスポーツ紙には全く載っていなかったからだ。スポニチの特ダネという見方もできるが、やはりその記事に信憑性があるかどうか疑わずにはいられない。

確かに、前兆はあった。金光監督の采配に対して、3,4年生部員が不信感を抱いていた。僕の所属しているゼミのゼミ長が、元・野球部員なので、その辺の情報は少なからず耳にしていた。しかし、野球部の方針として、練習より大学の授業を優先させることというのがある。その日、たまたま部員の大半が授業に出席するために大学に行っていたという可能性も大きい。

舞台は法大野球部である。これまで数々の栄光と歴史を刻んできた伝統の法大野球部に所属する選手達が、そう簡単に、露骨に、反骨心を露にするだろうか。彼らも大人である。監督に言いたい事があれば面と向かって意見を言うだろう。

紙面を見る限り、懸命に取材をした跡がその記事からは見えない。スポニチ記者はどういった思いでこの記事を書いたのだろう。こういった記事を掲載し、及ぼす影響力というものをスポニチ記者は少しでも考えただろうか。詳細に取材し、説得性をもたせれば、記事としての価値も高まり、紙面に掲載する意味も明らかになる。しかし、今回はそうではない。法大野球部を好む自分にとっては、不愉快極まりない。読者の目を惹く記事であればなんでもいいのか。そんなスポーツ報道はあってはならない。

今回、そんな雑音がある中、大引はタイトルを獲得した。その不動心に、心打たれた。


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