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王者の姿 - 2004年01月18日(日)

「相手がどうこうではなく、自分たちの信じる戦い方を貫き通す」

王者の本来あるべき姿とはこういうものだと思う。バスケット高校日本一の能代工の加藤監督は常にこの事をモットーとしている。先日、高校サッカーで日本一になった国見の主将・兵藤も優勝を決めた直後のインタビューで似たような事を口にしていた。相手に合わせた戦術を考える前に、いかにこれまで日々練習してきたことが試合で出せるか。どんなスポーツでも、この事が一番重要だと思う。

関東学院大が決勝で昨年の王者・早大を33−7で破り、2年ぶり5度目の日本一に輝いた。試合内容、チーム力、集中力、すべての面で関東学院大が上回り、圧倒した。そこには昨年の王者・早大の「王者の本来あるべき姿」はほとんど感じられなかった。

この試合、早大は伝統の「ヨコ」を使った展開ラグビーを捨てた。これまでのようにまともに行ったら潰される。だったらキックを多用した「タテ」を使った戦術で相手の裏を狙うラグビーをする。早大の狙いはまさにこれだった。

前半13分、大田尾が相手ゴール30メートル位のとこからDGを狙うが外れてしまう。気持ちは分からないでもない。関東学院大はFWも強いが、DFも強力。そう簡単にトライを決めることはできない。ここは一つ、先制点を取って流れを自分たちに持ってくるためにも3点でいいから決めておこう。しかし、この時点で多くの観客の頭の中から「王者・早大の姿」が消えてしまったと思う。僕はこの試合、早大には「守り」の姿勢に入ってほしくないなと願っていたが、大田尾のDGに試みた姿を見て、試合の行方は決まってしまったかなと直感的に感じた。

前半を0−0で折り返した。多くの人が早大の健闘ぶりに感心を抱いたことだろう。しかし、僕はむしろ関東学院大の戦いぶりに感心を持った。前半の中盤あたりから春口監督を含め、関東学院大の選手達は自分たちの戦術を徹底的に研究され、自分たちのラグビーをさせてもらえない展開に気づいていたと思う。確かに早大のDFは素晴らしかった。しかし、それに対して関東学院大は戦術を変更せずに、真っ向から自分たちのラグビーを貫いた。その結果、前半0−0で折り返した。

「王者」は、この時点で決まっていたのである。

後半8分、霜村が後方から抜け出し先制トライ。関東学院大FWに気を取られた早大DFの隙を突き、ついにこの試合、国立の電光掲示板に「TRY」の文字が表示された。

後半13分、ハーフライン付近で大田尾の「タテ」に展開しようとし、キックをしたところを河津が足でカット。そのボールを自ら確保し、そのまま70メートル独走しトライ。早大の「タテ」に展開しようとした付け焼刃的な戦法が裏目に出てしまった場面だった。

このあとも関東学院大の勢いは増すばかり。「自分たちこそ王者」といわんばかりに強力FWで早大に襲い掛かる。後半35分を過ぎて33−0。試合の流れからして、関東学院大の完封勝利での日本一奪回が目の前まで迫ってきているように感じた。

試合終了1分前。早大が関東学院大ゴール前で、止められても止められても左右に展開し、遂に池上が抜け出す。執念のトライを決めた。ここにきて、最後の最後で早大らしいアタックが見られた。僕がこの試合ずっと観たかったのは、「タテ」に固執する姿ではなく、伝統の「ヨコ」を使った姿であり、後半39分にようやくその姿を観る事ができた。

今年の大学ラグビーで最も王者に相応しかったのは、紛れもなく関東学院大だった。彼らは最後まで自分たちのラグビーを貫き通した。

相手を考える前に、まず自分たちが持っている全ての力を出し切る、という事を考える。その考え方一つで、勝敗を分けた決勝戦だったように感じる。


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