● ひよこの妄想覚書帳

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2005年01月13日(木)  らぶばーど1月中旬編。

「あ…あの…さっ…こ、こ、こ…ここここここ…」



「?名探偵、落ち着いて。深呼吸なさって下さい。」


すーはー

すーはー

すーはー


ラジオ体操のノリで怪盗に言われるままに深呼吸してしまう名探偵。
それでも自分のそのおかしくも可愛らしい行動に気がついていない彼は、今、その優秀なはずの頭を占める思考にいっぱいいっぱいで。

本当に本当に緊張しまくっていた。



雪が降るのではないかというほど冷え込む東都の夜。
それも、冷たい風がさらにビル風に押し上げられて吹き荒れる高層ビルの屋上。


とにかく、名探偵・工藤新一は緊張しまくっていた。
そして挙動不振に陥っていた。
普段は回りすぎるほど回る頭脳もピタリと止まったかのように動かなくなり、思考が同じ所をひたすらぐるぐると回り続けている。
今日は決心を胸に、一世一代当たって砕けろ!な心意気で乗り込んできてみたのだが、やはり目標を視認してしまうとダメだった。
それはもう、ムネがドキドキなんてレベルじゃなく、うっかりドキがムネムネと言ってしまいそうなほど動揺し、限界まで膨らませた風船のように今すぐこの場で弾けてしまいそうなほどいっぱいいっぱいな状態に追い込まれていた。
相手がナニをした、と言う訳ではないが。


そして、その相手は怪盗キッド。
今日も華麗にショーを繰り広げ、鮮やかに一仕事終えた後での逢瀬。
共同戦線を張るようになってから珍しくも無く、最近では仕事後に中継地点で会うのは言葉にこそしないがお約束なほどの時間である。
何のに何故か。今日の名探偵は様子がおかしい。




――ええい!情け無いぞオレ!ちゃんと言えるようにきっどちゃん相手に1週間毎晩練習しただろう!!?




そんなに練習したんですか。



ちなみに、「きっどちゃん」とは、お隣の灰原女史特製で、白くまにモノクル、シルクハット、スーツにマントを着用させたという、どこから見ても某怪盗をモデルにしたそれはそれは可愛らしいぬいぐるみのことである。
クリスマスにこれをプレゼントされた名探偵は真っ赤になりながらもちゃんと連れ帰り、ベッドの上でぎゅうぎゅうやっている。


すーはー

すーはー

すーはー


…まだ深呼吸していたらしい。


「落ち着かれましたか?焦らずにゆっくりおっしゃって下さればいいですよ?」


にこり、と優しく微笑んでくれる怪盗に。


あぁ、やっぱり優しいなぁ。


などと、また名探偵がきゅんとさせられていたりする。



「…あのな?…その…」


「はい。」


ようやく少しは落ち着いたのか、後ろで手をもじもじさせながらうつむき、ぼそりぼそりと言葉をこぼしていく新一に、キッドは焦らすことなくゆっくりとその言葉を待っていた。
本来なら逃走中の怪盗ではあるのだが、時間経過など一切気にしていないのは確保不能とうたわれるだけの自信と実力があるからだろう。



「その…今週の…金曜か土曜の夜…会えないか?」




to be countinued...
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冬休み企画をことごとくダメにしてしまったのでリベンヂしたいです。
しかし、そんなこと言ってるとすぐにバレンタインとホワイトデーと卒業式とひよこの引越しがやってきます。

ちなみに、この「らぶばーど1月中旬編。(仮題)」は快斗も新一も高校生だった頃のお話です。つまり、新一の高校復帰直後?
テーマは、”高校生に立ちふさがる難関(らしきもの)”です。
ひよこがそれを回想する時、いつも”前日深夜までチャットしていた”と言うダメダメな記憶しか出てきません。
…今週末。何があるか知ってる方は知ってますよね?
皆さん頑張って下さいね。


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