川底を流れる小石のように。 〜番外編〜 海老蔵への道!
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「シアターガイド」のサイトリニューアル記念チケットプレゼントで、昼の部一等席が当たった! やったー!と大喜びしたものの、平日のチケットではある。 出来れば仕事は休みたくない・・・。 とはいえ、このチケットは後ろの方の席ではあったが、花道のそば。 そして揚げ幕が近い。 でっかい権五郎がノシノシ歩く所を、間近で見られる!と思うと辛抱たまらず、 連休前のバタバタ運行のどさくさに紛れてお休みをもらう。 やったー。 昼の部は三階からばかり観ていたので、初めて地上に降りられるヨロコビ。 この日は、あんず大福捕獲作戦決行を心に誓い、 歌舞伎座に着くなり脇目もふらず二階へ。 朝っぱらから甘い物の事を考えるのは不似合いな気がするが、仕方ない。 するといつものポジションに、ちゃんとありましたとも! 薄いあんず色した可愛い奴ら! 声をかけようとすると、横からオジイの声で「あんず1つ!」。 見ると歌舞伎座にはよくいるタイプの、お年の割に元気でかくしゃくとしたオジイだ。 「む、できるな」と横目で牽制しつつ、 私も「あんずふたつ!」。 オジイと私は、共にあんず大福を手にして、ニヤリと笑みを交わした。 お宝あんず(あくまでも私の中ではお宝)を手にして、 すでに一仕事終えた感の強い私は、満足して席に着く。
三番草は、舞台を清め、成功を祈る意味も含まれた踊りだそうで、 なるほど祈りにも、能にも通じるような趣。
いよいよ暫だ! うわー!ここを権五郎が通るのかーと何度も花道を見てしまう。 権五郎が出てくるまでに、ちょっと長いのだけれど、 その間にも、鳥屋からはバタン、ゴトン、ゴソゴソゴソと 結構いろんな音が聞こえる。 もしかして、あの音、権五郎が狭いところでドタバタしてる音なのだろうか?と思うと、 微笑ましい。 背中から「しーばーらーくう〜〜〜」の声を聞くと、 赤っ面じゃないが、ゾクゾクする。 けども、ズカズカっと進む姿もでっかくて、あっという間に私の横を通りすぎる権五郎。 距離感を失う程の大きさだ。 幕外の引っ込みで、ヤットコトッチャーウントコナー!と声を張り上げる海老蔵。 西の桟敷にいた、かわいらしいおばさま、それを目の前で見て、 うるうる感無量の様子。 うんうん。海老蔵権五郎、よかったよねーと思う。
この後、さらにこの花道を、山神の菊ちゃんや、万野の芝勘さんも、 そして喜助の海老蔵も、駆けてった。 あっという間。 そして「おっとヨシヨシ!」が口癖になってしまって、 仕事中とかに、おっとヨシヨシと言ってしまいそうになる。 隣の小さなおばあちゃんが、ずいぶんと長い傘を邪魔そうにもてあましていたので、 よかったら、こちらの足許にどうぞ、と声をかけると、 一階席はね、足許を色んなものが通るのよ。 だから一階だけは、何か匂うでしょ? あなたも嫌じゃないの? 何しろ鼠や猫や、他にも色んな生き物がウロウロ通るのよ。 嫌ね〜。だから傘も置きたくないの。 気をつけなくちゃね。あなたもね。 と言われてしまった・・・。 古い建物だし、ゴキや、もしかするとネズミくらいはいるのかもしれないが、 猫とか、他の色んな生き物ってのは何だろう。 ばあちゃん、何を見たんだ?
他にも紅葉狩がはじまると、 反対の隣のおじさん(たぶん歌舞伎座初体験、奥さんに何度もつねって起こされてた)が、 腰元をやっている亀蔵さんを見るなり、一人しょうもないのがいるぞ、と言い出す。 いくらなんでも、あれはひどい。 うーん。なんなんだあれは、としつこく唸ってる。 それだけ衝撃的なルックスだったのかも。 っていうか、あの人は普段は立役で、 さっきも暫で、赤い顔してヤットコトッチャって言ってたじゃん。 それが腰元だから、おもしろいんじゃん。とかばいたくなる。 っていうか、他は寝てたくせに、おじさんのツボはそこなのか・・・。
ともあれ、昨夜の当日券二列目と、今日の花道横で、完全燃焼できた気がする。 満足。 翌日からは、普段通り仕事なわけだが、 休みをもらったのだから、頑張らねば!と思う。 それにしても、今までも、こうして雇ってもらって仕事して、 働けるってありがたいことだなあと頭では思っていても、 それを心の底から、体中で実感出来た。 (旧川底をご存じの方は、かつて私がしばらくプーで、 うつうつと過ごしていたことをご存じかと思いますが) 先の休日があんまりにも嬉しくて幸せで満足で、 そんなことが出来る今の環境や、周りの全てに感謝してしまう。 むくむくと仕事に意欲が湧いてくる。 目一杯働いて、その分目一杯遊ぶ、そしてすこぶる満足という黄金のステップ! おおー!
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