なべて世はこともなし
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2006年08月11日(金) 実証実験:ドイツとアイルランド、銀行口座の開設が簡単のはどっち?

時系列的にはワイマール旅行記その3になるんですが、内容的には旅行記じゃないのでタイトル変えました。


アイルランドで銀行口座を開くのは大変です。


…ドイツの旅行記のはずなのに、また、突拍子もないことを言い出してすいません。すぐに話はつながりますのでしばらくおつきあいを。


知り合いのドイツ人がしみじみ言ったのです。彼女、数年前にアイルランドに来たはいいが、銀行口座開設に一苦労したそうなのです。


「いやー、アイルランドで銀行口座を開くのは大変だったわ。銀行に行ったら、仕事がないと口座は開けないって言われて、仕事を探そうと思ったら、銀行口座があるか聞かれたりなんかして」


そうなんですよ。振り込め詐欺だなんだが横行する今はどうか知りませんけど、私が大学生だったころの日本なんか(10年ほど前の話ですね)、銀行口座など簡単に開けて、口座を開いたら、銀行から紙袋いっぱいの記念品をもらえたりしたもんです。


それに比べると、なぜだか知りませんけどアイルランドで銀行口座を持つのは実に実に至難の技です。例えば語学留学なんかで長期に滞在するなんて時は、語学学校から在学証明書をもらわなきゃいけないなど、あーだこうだでいじめられた挙げ句に断られることが多いとか。こと、言葉に自信がない段階で銀行に口座を開きに行くというのはかなり勇気のいる行動だと思います。


語学留学なんてのはまだマシなほうで、無職で銀行口座開設ってのはほとんど無理…という話です。外国人の場合、どっかの会社に就職後に会社の総務から「この者は確かにうちに勤めてます」ってな一筆をもらってこないといけないとか。この辺のアイルランドの最新情報に詳しい方、銀行口座を最近開いた方はぜひ掲示板だかメールでご報告を。


で、一番最初に出てきたドイツ人がしみじみと呆れるわけです。


「なんで、銀行口座を開くのにこんなに苦労しなきゃいけないんでしょうね。お金を預けてあげるんだよ。お金を借りようとしてるというならわかるけどねえ」


アイルランドに長く住みすぎてそんな当たり前のことに考えが及ばなくなってました。そりゃそうだ。お客がお金を預けてあげようとしてるのに、なんで銀行は、銀行は最上段に構えてそれを断るんだ。


「こんなこと、ドイツじゃ考えられないよ」


…ドイツじゃあ考えられない。ホンマやな。絶対やな。


そう、ここでようやく話がつながるわけです。何だかんだ言ったって、ドイツでガイジンが銀行口座を開くのは大変に違いない。日本でもガイジンが銀行口座を開こうとしたら、やれ外国人登録証明書を出せとかなんだとかきっとうるさいと思うんですよね(こんなページがありました)。


だから、たぶんアイルランドでガイジンが銀行口座を開くのが大変なように、ドイツでもガイジンとして銀行口座を開くのは難しいに違いない。アイルランドの銀行の批評を書くためには、ドイツで同じ目に遭ってみないと客観的な批評はできないのだ!


そこで、玉砕覚悟でドイツの銀行に乗り込んでいったのです。そして、


「銀行口座開かせて(はあと)」


...と言ってみました。


むろん、そんなくだらない実験のためだけに銀行に行ったわけではありません。ドイツによくくる私としては、別の理由で銀行口座を持ってたかったんですよね。というのもドイツって日本と似てダメなところがあるんですよ。すなわち、


クレジットカードが通用しない。


これ、本気で困るんですよ。アイルランドでクレジットカードを使い慣れて、ほとんどすべての買い物は全部クレジットカードで支払う癖がついてしまいました。アイルランドでは、どんなイナカに行ってもクレジットカードは広く通用します。かくして私の財布に現金はほとんど入ってません。その感覚でドイツでクレジットカードを出すと断られることがあまりに多いのです。


空港や駅・ガソリンスタンドなどではたいがいのクレジットカードは大丈夫。ビザ・マスターはもとより、アメックスも歓迎。ところが、スーパーなどになると雲行きが一気に怪しくなります(アイルランドのスーパーでクレジットカードを受け付けないのはドイツ系の格安スーパーAldiとLidlくらい)。で、一番イヤなのは、ドイツの店でカードの読み取り機があるから大丈夫と思いクレジットカードを出してみると


「ECカード以外はダメ!」


とかなりの高率で言われるのです。で、ECカードとは、調べてみると、アイルランドでいうとこのLaserカード、日本でいうとこのJデビットカードのことらしい。店としては、数パーセントの手数料を取られた挙げ句に、支払い拒否なんかをされるリスクのあるクレジットカードよりも、口座から直接回収できて手数料も安いデビットカードを歓迎したいという気持ちは分かる。…が、ドイツに住まない私にしてはただただ迷惑な話。


というわけで、現金などできる限り持ち歩きたくない私としてはこれがほしい!と思ったわけ。銀行口座を持てばこのECカードとやらがもらえるに違いない。


というわけで、アイルランドが「バンクホリデー」だった某日にドイツの某有名銀行の支店に。狙ったのは、とんでもないイナカにある小さな小さな支店。


待つこと15分ほどで私の順番がやってきた。


私:「あのー、口座を開きたいんですけど…」


…と、英語で話す私に一瞬引きつつも、それでもお姉さんは対応してくれる。


係:「パスポートはお持ちですか」
私:「はい。日本のパスポートですけど」
係:「ドイツにお住まいですか」
私:「いえ。まだなんですけど、もうすぐごにょごにょ」



「いいえ」と答えたら誰がどう考えても口座は開けないに違いないと踏んだわけ。そりゃそうでしょ。だからドイツになどさらさら住む気もないくせにテキトーに答えました。


係:「口座を長く持たれるつもりですか。一年とかそれ以上」
私:「もちろん!」
係:「それではこちらへどうぞ」



…あれ、うまくいくとは思ってなかったのにうまく行きそうな気配。と、私は別室に案内される。すごいすごい。アイルランドの銀行はもちろん、日本の銀行でも別室になんか案内されたことないのに。それとも不法就労か何かの疑いで通報されたのか?(←ないない)


で、お姉さん、わたしのパスポートを持って別室に消える。で、コピーを持って帰ってきた。


別室に案内されたのでお茶でも出るかと期待したがそこまで世の中は甘くなかった。しかし、数枚の書類、おそらくドイツ語で意味不明だったがお姉さんのいまいちの英語での説明によると、口座開設依頼書に個人情報保護法か何か絡みの承諾書などだったよう。それらにサインをして口座開設に成功。言うまでもないことですが、書面を読まずにサインするなど論外です。良い子も悪い子もマネしないように。


係:「じゃあ、今日は以上です。ありがとうございました」
私:「あれ、お金、入れなくていいの?」
係:「あ、今日に入金されますか。なら、こちらへどうぞ」



…って入金しなくても良かったの?


かくして、いくらかの金を入金して終了。


結論:ドイツでの銀行口座開設は確かに簡単だった。やはりアイルランドが異常。


ひとつ大きな罠がありました。


口座維持手数料。一ヶ月2.5ユーロ(360円)也。


…そうだった。そんなもんがアイルランドにもあるんだった。すっかり忘れてたよ。ただし、アイルランドの場合は、ある程度の残高とインターネットバンキングの利用により無料になるのですが。ま、面白そうだから、しばらくこの口座、使ってみます。




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