なべて世はこともなし
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2003年02月11日(火) コメディ菌保菌者の2泊3日ドイツ旅行(3=完)

続きです。その1、。その2をお読みでない方はまずはそちらから。


パスポートが本物であることを証明するために使える身分証明書なんて思いつきませんよね。普通。私がその時持っていた唯一の写真付の身分証明書はアイルランドの威厳のかけらもないペラペラの運転免許証。こちらは数年間財布の中で不自然に折り曲げられているのでさらに胡散臭いことこの上ない。


私:「運転免許証は?」
審査官:「Maybe…」



何がMaybeだ、おまえは中島みゆきかと暴れだしそうになりましたが、Snigelもいちおうオトナ。電車に乗り遅れてはかなわないと、ポーカーフェイスで運転免許証を提出。するとこの入国審査官氏、今度は私の免許証を逆さにしたり透かしてみたり。


ちなみに私の後ろには未だに数十人の人がこのくだらない茶番劇が終わるのを待ってます。後ろの人がイライラしているのが背中から感じ取れます。他方私の唯一の心配ごとは9時発の最終のICE(特急列車)に間に合うかどうか。後ろのことなど構っている暇はありません。


入国審査官氏、私の後ろの人の怒りのオーラを遅れ馳せながら感じたのか、私のパスポートと免許証を私の顔を見ずに投げてよこす。ちなみに今までただの一度もドイツでスタンプを押されなかったことなどなかったのに、この入国審査官氏、スタンプを押さず


スタンプを押されなかったこと自体は嬉しい。なにせ私のパスポート、あと数年有効なのに、もうスタンプを押せるスペースがほとんど残っていない(しかも再発行のパスポートなのに)。いえいえ自慢でもなんでもありません。何せ、そのスタンプのほとんどはヨーロッパので、言ってみりゃ県境を超すたびにスタンプを押されてるだけの話ですので。


ともあれ、私が推察するにこの入国審査官氏の頭の中では…


「なんだかなー。うぜーパスポートだなー。ホンモノかどうかわかんねーけどもうめんどくさいしみんな後ろでイライラしながら待ってるから行かせちまえ。ま、オレのスタンプ押さなきゃオレの責任にはならねーしな」


なんて考えていたんだと思う。たぶん当たらずしも遠からずな推論だと自分では思うのですが。


かくしてたかが入国審査に並んだ時間も合わせて30分も費やしようやく解放される。時刻は8時40分。あと20分。まあ何とかなるというタイミング。私は小走りで勝手知りたるデュッセルドルフ空港のモノレール駅へ向かう。が、そこに待ち構えていたものは…




(超意訳:モノレール故障中。階上のモノレール駅には行かずに階下に行って臨時のバスを使ってね)


自分のコメディ菌を怨みました。本気で。(言うまでもなく写真は帰りに撮ったものです)


この世に神も仏もあるものか…と恨み言をひとりで言いつつ階下に行って外を見るとおお、臨時のシャトルバスのバス停がある。で、バスも待機中。あと15分あるので、もしこのバスがすぐに発車してかつ、どこにも寄らなければ多分間に合う。ただ、モノレールも途中に駅があるのでさあどこにも寄らないという保証はない。


で、永遠とも思える数分が経ちバスはようやくエンジンをかけ発車。バスは幸いどこにも寄らず空港駅に着いたのは午後9時10分前。間に合った


で、ホームに行ってみると案内板には…


「今度の発車のハノーバー行きのICEは10分遅れます」


だ、脱力。



で、ドイツが誇る新幹線ICEは15分遅れで到着。中は最終電車ということもあってか見たこともないくらいガラガラ。私は席を確保するとそのままビュッフェに行き


「ビール!」


この時に飲んだビールのおいしかったことおいしかったこと。で、座席でうとうとしていると2時間30分が経ったとは思えないくらいの早さでハノーバー着。むかし横浜線で通勤していた時のよう。いつも私の中では大口の次の駅は橋本か八王子みなみ野(ローカルですいませんね)と途中駅の記憶がすっぽり抜け落ちている。今回もハノーバーの一つ手前のMindenという駅までの記憶がきれいさっぱり抜け落ちている。


ハノーバーでの乗換えは乗換え時間が30分程度あったのでまったく問題なく乗り換えることができる。最終の推定6両編成の列車はまさにすかすか。私以外に乗っている人がいない。長くなって寝て過ごす。途中で車掌が検札に来て起こされましたが。


で、Mausi(私の彼女=仮名)が迎えに来てくれた某駅についたのは日付などとっくに変わった午前1時。疲れました


帰りは帰りでこれまた大変でした。一分一秒でも長く滞在したい私は、デュッセルドルフでヒコーキに乗れる最後のICEを予約。ドイツ国鉄、私が知る限り多くのところは1時間ごとのパターンダイヤです。つまりハノーバー発の私が予約したICEに乗り遅れると、ヒコーキにも自動的に乗り遅れるという算段。


問題はハノーバーでして、彼女の住む町の最寄り駅からハノーバーまではこれまた毎時1本しか列車がない。で、ハノーバーでの乗換え時間は9分。ハノーバー駅は私、Connolly駅(ダブリンのいちおう中央駅と思われる駅)よりよく知ってるので、9分の乗換え時間があれば余裕。かくしてこれで行こうと思ったら、Mausiが私に言うのだ。


Mausi:「もしハノーバー行きの列車が遅れたらどうするの?9分しかないんだからICEに乗り遅れるよ。もしICEに乗り遅れたらどうなるの?」
私:「ヒコーキに乗り遅れる。ゲームオーバー」
Mausi:「ヒコーキに乗り遅れたらどうなるの?」
私:「安いチケットだし、たぶん、ジ・エンド、新しいチケットを正規料金で買うことになるだろうね。たぶん200ユーロくらいじゃない?」
Mausi: 「1本早い電車にしなさい!」



女性には逆らえません。仕方なく、1本早い電車で行くことに。


で、1本早い電車にのるべく駅に着いた私たち。むろんMausiは見送りに来ただけで、列車には乗りません。で、電光掲示版を見ると…


「ハノーバー行き、15分遅れます」


かれこれ3年目にしてMausiに初めて後光が差しているのが見えました。もし私が何の心配もせずに次の列車に乗ろうとしてたら、たぶん次の列車も遅れるでしょうから、当然ICEに乗り遅れ、結果的にはヒコーキにも乗り遅れていたはず。親と彼女の意見となすびの花は千にひとつも無駄はありません(←ホントかよ)。彼女に素朴に感謝いたしました。


と同時にひとつの事実に気がつきました。


私の中にコメディ菌が住みついているのではなく、私が勝手にコメディ菌を作り出しているだけである。


そう、フツーの人はフツーの感覚で、空港には早く行くのです。乗り遅れる可能性があるならより早目に行くのです。それをしないで私は自分をリスクに晒して、でコメディ菌だなんだと文句を言っているのです。そう、私はある意味治療が必要なのです。そして私がこんな性格をしている限り、この日記は永遠に続きます


さてさて。数行上に「ハノーバーから某駅までの列車は6両編成」と書きましたが、何だか知りませんが、一日に数便例外があります。なぜかたまにHarz Express(名前はかっこいい)と書かれた赤いディーゼル車がやってくるのです。これ、ふだん3両編成でこの列車、例外なくいつも混んでます。いつもこの列車が来るたびに、なんでまたこの列車は編成を長くしないのだろうかと疑問に思います。


で、15分遅れでやってきたこのHarz Express、ドアーが開くと穴のあいたダンボール箱からイモが転がり落ちるかのように、数人の人が降りてきます。「ん?」と思ってみると、いつも3両編成で満席なのに日曜日の今日はなんと2両編成


頭悪いだろう。ドイツ国鉄。


で、ホームには相当の人が待ってます。私としては最後に列車に乗って、ドアーのガラスに額をつけて彼女が見えなくなるまで見ていたい(BGMの伊勢正三の「なごり雪」は恐縮ですが各自でご用意ください)。が、この状態でそんな悠長なことを言っている暇はありません。


で、私が満員の列車に乗ろうとすると、ステップに立っている若い女性が(当然ドイツ語なので推察。こう言っていたという自信はありますが)


「もう満員よ。次の電車を待たなきゃだめよ」


私はこの瞬間にこの国には住みたくないなと思った。何度も繰り返しますが、次の列車は1時間後です。銀座線の3分後の地下鉄を待つのとは次元が違うのです。なのに、まだ数人が乗れるスペースがあるにも拘らず、この女性は自分が乗れたことをいいことに「もう乗れない」とほざくわけです。これまた何度も繰り返しますが、この列車が15分遅れていることからして次の列車も遅れます。もしICEに乗り遅れると、ヒコーキにも乗り遅れます。つまり私にはこの女性が何と言おうと選択の余地はないのです。


…言うまでもなく乗りましたよ。文句を言っていたので、私は英語でかなり口汚ないことを言ったような気もしますがたぶん気のせいです。


と、まあMausiの有意義な助言もあって、ハノーバーではICEに無事乗れました。彼女が助言してくれなかったら、私はまず間違いなく乗り遅れてました。


以上がドイツの旅行記でした。滞在中は何をしていたかというと、彼女とGöslarという町に行ったり、友人の誕生パーティーに行ったりしましたがネタにするほどでないので省略。ひでかすにこの日記に書く前にこの話をしたら、「一つもなんでこんなにネタになるの?」と呆れられてしまった。そして、次のドイツ行きはたった2週間後です。乞うご期待。...いや期待しないで。


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