なべて世はこともなし
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|アイルランド真実紀行へ
2002年06月30日(日) |
前略Seanさん... |
どうも、はじめまして。くされアイルランド人のショーンと申します。 私は日本に4年間住んでいて、とても楽しかったです。もちろん、好き じゃない部分(ATMが24時間じゃないこと、夜の電車が酒臭いこと、 サービス過剰なこと)もあったけど、基本的に日本や日本人が大好き です。
このサイトを訪れる日本の方はアイルランドでの生活に不満があるということがよくわかりました。しかし、ひとつの大きな疑問があります。アイルランドがこんなに嫌いだったら、どうして未だにアイルランドにいるんですか?「アイルランドの真実を伝えるため」とか「日本人にアイルランドがこんなにひどい国を教えるため」もういいんだけど、ちょっと偽善的すぎるではないでしょうか?まず自分の幸せが第一だと思うので、幸せになれるところに行ったほうがいいのではないでしょうか?どの国でもいいところとわるいところはあるはずだけど、本当にアイルランドに何もひとつのいいところが見つからないというんだったら、ほかの国に移ることを考えたほういいんじゃないでしょうか?
最後に「真実」というのは人によって違うので、なんであなたがアイルランドにいる真実を見つけてほしいです。
以上、くされアイルランド人からの投稿でした。
ショーンさんはじめまして。掲示板への書き込みありがとうございます。少し長くなりそうですし、少しまじめに返信する必要があると思い投稿を日記にて返信します。ご了承ください。
ショーンさんはこのサイトを「アイルランドに対する悪意ある『偽善的な』サイト」と取られたようです。確かに、私の書き方は乱暴ですし、そういうふうに取られても文句は言えないかもしれません。
基本的に私のこのサイトの方針は「是々非々」です。これは過去の掲示板に何度も書いています。いいことがあればいいこととして書きますし、逆に悪いことがあれば悪いこととして書く。そういうふうにして一年ほどこの日記を続けてきました。が、「アイルランドに何ひとつのいいところが見つからない」とは書いていません。いいことはいいこととして書いてきたつもりです。
まず何よりも指摘しておきたいことは、私はアイルランド人に対し、悪意、もっと言えば憎悪の念を持ってこの日記を書いてはいません。もしそう感じられる文章があったのならば、アイルランド人の私に対する悪意に対する反応と取られて結構です。私は悪意ある人間には悪意を持って接しますが、そうでない人間には決して悪意を持って接しないようにしています。ちなみにショーンさんはご自分を「くされアイルランド人」と書かれていましたが、私は日記の上でその言葉を使ったことは一度もないはずです。くされバス会社、くされ銀行などとは書いた記憶はありますが、「くされアイルランド人」とは一度も書いていません。この点からぜひショーンさんに理解していただきたいことがあります。私は決して、アイルランド人を憎んだり嫌ったりはしていないことです。
私のこのサイトの目的は、「日本人にアイルランドがこんなにひどい国を教えるため」とは思っていません。ただ、アイルランド関係のサイトが数多くある中で、私の知る限りではただのひとつも、アイルランドの生活者からの視線から切り取ったものがないという意味で、ひとつのアイルランドの側面を伝えられればと思っているというのは事実です。が、それは「アイルランドがいかにひどい国か」を伝えるということと同義ではないということを理解してほしいと思います。
ここで考えて欲しいのは、私たちは果たしてどのくらい幸せかということです。自分の生活が何不自由なく、毎日が本当に充実しており、素晴らしい家族や友人に囲まれ、悩みがひとつもない…という人が果たしてこの地球上にどのくらいいるでしょうか。私が考える限り、何かの宗教で洗脳でもされていない限り、そのような人はほとんどいないと思います。たいがい、やりたくない仕事をして、つまらないお金のことにくよくよしたり、自分の将来に不安を持ったり、そんな感じでそれぞれが多くの悩みや不満を抱えながら生きているのではないかと思います。私だってそうです。
これは私がアイルランドから出ても同じことです。仮に日本に行ったとしても、アイルランドではなかった別のストレスや不満がきっと出てきます。世界中のどこに行ったって同じです。「地上の楽園」などはきっと存在しないものだと思います。あえて一つ違いを上げれば、日本で起こる不満は、きっと日本人の目線から見て驚きに値しない当たり前のことで、あえてウェブに載せても目新しくない…ということになるかもしれません。
現在私はアイルランドに住んでいます。ここが私の生活の舞台です。その中で起こることのほとんどはいやな話、辛い話ばかりです。一日のうちに100のことが起こるとするとそのうちの90、あるいは95はきっといやなことではないかと思います。ただそれは「アイルランドにいるから」ではなく、「生きているから」だと私は考えます。そのいやなことの質が外国に住んでいるので日本のそれと違う。そこを読者の方が面白おかしく読んでいただけるのであれば私はこのサイトは成功だと信じています。
上にも書きましたが、ネット上にはたくさんの日本人がアイルランドに対するサイトを持っています。そのサイトのほとんどすべてはアイルランドへの旅行記です。人間、旅行だとかそういう日常から離れると、きっと一日のうちに起こることの100のうち90か95はいいこと、新鮮な驚きに変えられると思います。そういう新鮮な驚きを写真で紹介することに私は何の異議も唱えませんし、いいことだと思います。
しかし、私がいつもこの日記で書いているとおり、「観光することと生活することは違う」というのはこの点が言いたくてのことです。住むことによっていろんな不満や問題が出てくる。この問題は、何度も書きますがアイルランドのに住んでいようと日本に住んでいようとスワジランドに住んでいようと質の違いはあれ同じことです。ショーンさん、あなたが日本にいらっしゃったときどうでしたか?最初の数週間は楽しかったけれども、だんだん自分の日本での「滞在」が「生活」に変わってくるに連れて、いやなことやつまらないことが増えてきたのではないでしょうか?
もっと書けば、ショーンさんも人には言いたくないような本当にいやな体験を日本でされたのではないかと思います。例を挙げれば人種差別などがそれにあたります。「ガイジン」というだけで不必要に警戒されたりしたことはありませんか?
私はそういう本当にいやなことはこの日記には書いていません。町中でひどいことを言われて掴みかかったこともありますし、10代の子供に石を投げられてケンカしたこともあります。ショーンさん、なぜ私がそういう本当にいやな体験をなぜ書いていないのか分かっていただけますか?それを日記のネタにして「これだからアイルランド人は…」という書き方をしなかったのはなぜだか分かっていただけますか?
もう一度だけ繰り返し書きます。このサイトの目的は「日本人にアイルランドがこんなにひどい国を教えるため」では決してありません。もしそういう側面を感じられたとすれば、他の「観光客」の視点のアイルランド関係のサイトに反旗を翻して「アイルランドも決して地上の楽園ではなく住んでみるとこういうところだよ」と言いたいだけのことです。むろん、アイルランド人のショーンさんが何も知らずに読まれたら確かに不愉快になる表現も多いとは思います。その点に関してはお詫びをするしかありません。
が、すこし大げさな言い方を許してもらえば、私のこのサイトでの表現ははある意味で「アイルランドに対する逆説的な愛情」と取ってもらえれば嬉しいです。これは私が言ったのではありません。とあるサイトの管理者の方が、私のサイトの紹介をするときに使われた表現です。この言葉、私は大変にありがたく思いました。ちゃんと私の言いたいことを偏見なしに読み取ってくださった方がいらっしゃることを発見したからです。
最後に、ご存知の通り、電子メールやウェブサイトなどコンピューターの上では言葉がどうしても悪意を持って取られる傾向があるようです。もし、ショーンさんがダブリン近郊にお住まいなら、一度パブにでも行きませんか?こんな日記上ではなくたぶんショーンさんが納得していただけるようなお話ができる…そう信じています。今後、ショーンさんがこのサイトの常連さんになってくれ、アイルランド人としての意見を聞かせていただければ私は本当に嬉しく思います。そういう意味でこれからもよろしくお願いします。
2002年6月30日 Snigel@アイルランド真実紀行管理人
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