なべて世はこともなし
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2002年04月05日(金) とっても親切かつシアワセそうなバス運転手...その真意とは?

「ひいいいいいいい、チコクだーーーーーー」


とうちの前の道をバス停に駆け出す。何せ乗り換えの町からのバス(例の腐れバス会社)を逃すと、その後は20ユーロ出してタクシーとなるのだから、スーツ姿で走る走る。が、うちの近所のバス停からはすでにバスは行ってしまったようだ(いつも待っている人がすでにいない)。


仕方がないのでそのまま数百メートル離れた大通りのバス停へ。


数分後、あまり見ない系統のバスがやってきた。このバスに乗ってもいいのだが、変なところがターミナルになっているこのバスCity Centreで5分ほど余計に歩く羽目になる。乗ろうかどうか迷っていると(←遅刻しそうなんだから素直に乗れば良さそうなものだが)、運転手氏、外に立つ私に向かって、


「Marlboro Stまで行くよ!」


Marlboro StはO'connell Stから1本ずれた所にある裏通り。そこまで行くなら乗ろうというわけでこのバスに乗る。で、運賃を払うと、運転手氏、


"Thank you, sir"

今、Sirって言いました?ねえ?運転手さん?そんな言葉をアイルランドで聞くことはほとんどないぞ。とりわけダブリンバスの運転手からは。


私は興味を持ったのでこの運転手の行動を観察開始。よく見ると、この運転手、仕事が楽しくて楽しくて仕方がない様子。女性には、

"Thank you, darling"


なんてほざいている。で、鼻歌を歌いながら、楽しそうに渋滞した道のバスレーンを走りぬける。


で、あと7-8分でCity Centreに着こうという頃になって、今度は運転手氏、他の運転手が使っているのを見たことのないマイクを使って


"Morning folks, for your convenience, this bus is going to Marlboro street. As traffic is quite good, I expect to get there around 8 O’clock. Thank you and have a good weekend"


…なあ、あんたはヒコーキのパイロットか?こんなことをわざわざマイクで言う運転手を私は見たことないぞ。「お客様のために、バスを延長して運行する」なんて、そんないい話があっていいものなのだろうか?


で、バスは確かに普段は行かないMarlboro Stへ。私はこの運転手が私たちのためにここまでバスを運行してくれたのならば、この運転手は本当に偉いと思った。しかし、偉大なるダブリンバス様はしっかりとオチを用意してくれていたのでした。Marlboro Stに差しかかる角でこの運転手はバスを止め、窓から身を乗り出して


「The Star(タブロイド紙)をくれ!」


おめえ、自分が新聞を買いたいからここまでバスを運転しただけじゃあねえか!…ま、歩かなくてよかったからよしとしよう。




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