なべて世はこともなし
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|アイルランド真実紀行へ
注意:今回の日記には航空会社の専門用語がたくさん出てきますが、おいらはその業界の人間ではないので、それらの用語を正しく使っているかどうか保証の限りではありません。話半分で聞いてくださるようにお願いします。
先月の末にアイルランドを離れ、半月ほどかけて、ドイツと日本に行ってきました。いやー、忙しかったです。特に日本では、限られて時間でいろんな人に会おうと駆けずり回ってきました。時間的な制約もあったので、ほとんどの人には日本行きを知らせませんでした(ホームページではしっかり告知してたけど)。というわけで、不義理のあった皆様にはこの場を借りて心からお詫びいたします。
実は、今回の日本行きで人生初の「世界一周」をしちゃったんです。
ダブリン ↓ フランクフルト(ドイツ) ↓ 関空(大阪…あれ、和歌山なのかな??) ↓ 九州の某ローカル空港 ↓ 羽田(東京)・成田(千葉) ↓ ニューヨーク(アメリカ) ↓ ロンドン(イギリス) ↓ ダブリン
ね?ちゃんと、地球を西から東に一周してるでしょ?何でこんなばかなことをしたのか、話せば長くなるのですが、まあ、お付き合いください。
前にも数回書いた通り、うちのアパートには数人の住人がいます。で、その中の一人が、ひでかす(仮名)という名の日本人なんです。で、彼、実は某アメリカの航空会社に勤めており、偶然この時期に本に帰省してアメリカ経由でダブリンに戻る彼と一緒に飛べば、私もかなり破格の値段で旅行ができるというわけ。
とはいえ、この話に最初おいらは乗り気ではなかった。彼と一緒に飛ぶと確かにキロ当たりの運賃は安いが、アメリカ経由となる。つまりシベリア回りに比べて距離が倍近くなるため、実は結局シベリア回りの格安航空券と値段は変わらなくなる。で、距離が倍になれば当然時間も倍かかる。シベリアまわりの12時間も閉口するには充分なのに、その倍となったら、もはや生死にかかわる問題。ところが、ひでかすは、とんでもない殺し文句でおいらを誘惑したのだ。
「ボクと飛べば、ファーストクラスで旅ができるかもよ」
ファーストクラス!ああ、なんて甘美な響き。おいらの一生のうちでは決して乗れないであろう別世界。エコノミーとは雲泥の差のすばらしいシートと、贅を尽くした食事、ついでに美しいスッチーさんのスペシャルサービス(←何か激しく誤解してますね)。そんな体験ができるなら、アメリカだろうとインドだろうと行ってやろう!と、USITに行きダブリン−関空の格安片道航空券を購入。日本からダブリンの帰りはひでかすとアメリカ経由で飛ぶことにしたのです。
ダブリン−フランクフルト間、およびフランクフルト−関空間は言うまでもなくエコノミークラス。ひでかすが、わざわざおいらのためにベジタリアンミールを注文してくださった(嫌がらせか?)以外は取り立てて書くことはなし。というわけで、話は一気に帰りに飛ぶ。
今回のように、航空会社に勤める人間の家族や知人等が、格安で旅行するチケットを「コンパニオンチケット」というらしい。で、この、コンパニオンチケット、安いだけの理由があって、予約は一切できない。当日、席が空いていれば乗れる。そりゃそうだ。航空会社だって、まともな運賃を払うお客の方が大事に決まっている。ま、考えてみれば、国内線の「スカイメイト運賃」みたいなもんだね。
で、日暮里でひでかすと待ち合わせをして、京成線の特急で一路成田へ。道々ひでかすが言うには、この日(金曜日)のフライトは実に混んでおり、乗れるかどうかわからないとのこと。かなりの数のオーバーブックがあるというのだ。なんだか空港到着前にして、おいらのファーストクラスの夢に暗雲が漂う。
オーバーブックについて説明したい。世界中のどこの航空会社も、実際のキャパシティ(定員)以上の数のチケットを販売する。というのも、われわれ貧乏旅行者の(一緒にするなって?)チケットの多くは、予約の変更はできない。それに対し、ビジネスクラスやファーストクラスの多くのチケットは、他の便への振替や、また、返金すらできるものもある。ま、高い金を払えばそれだけの利点があるということでしょう。
こうなると、当然予約をしながら空港にやってこない客というのが必ず存在する(専門用語でNo Showというそうな)。で航空会社としてはこの空港に来ないであろう客の数を見越して、定員よりも多い数のチケットを売る。空で飛ばすよりはいいもんね。ところが、まれにNo Showの客が少なく、定員以上の客が空港に来たりする。そうすると、航空会社はホテルなどを用意して次の便に一部の客を振り替えるか、または他社の便に振り替えたりする。このような状況で一番先にあぶれるのはコンパニオンチケットで飛ぼうとしてるおいらのような人間。
閑話休題。話を成田に着いたおいらたちに戻そう。で、ひでかすの事前の調査では、アメリカ行きの飛行機は軒並みオーバーブックしておりその中で唯一乗れそうなのがおいらたちの狙う成田−ニューヨークの最終便。ちなみにこれを逃すと、おいらたちは家に帰らなければいけない。まさに1発勝負状態。
で、祈るような気持ちでカウンターに行くと、この便はなぜか、ファーストクラスとビジネスクラスがすでに一杯で、エコノミークラスなら何とかなるだろうとのこと。この瞬間、おいらのファーストクラスへのはかない夢は愛川欣也によって「はい消えたー」と潰されてしまった(古いね)。
で、このカウンターで搭乗券はふつう貰えない。搭乗口で一番最後の客が乗り終わり、それで空きがあるという状態になって初めておいらたちは搭乗できるのだ。まったく立場が狭い。
で、出国審査を受け、搭乗口へ。空港に着いたのが遅かったのと、出国審査が長引いたことで、もうすべての客は搭乗した状態。そこでおいらたちがもらった搭乗券にかかれていた座席番号は…エコノミークラスのものだった。
「こんなことならおとなしくシベリア経由で帰ればよかった」と大ブーイング中のおいらをひでかすは、「ニューヨーク−ロンドン間ではファーストクラスに乗れる…と思う…から」となだめる。
おいらたちが乗ったのは、最新鋭のB777の後ろから2列目の席。こればまたよく揺れた。聞けば、前方の方の席よりも尾翼に近い後方の席の方が特に左右方向に揺れるんだそうな。というわけで、尾翼の真下のおいらたちの席は、途中でテーブルの上のウオッカのダイエットコーラ割がこぼれるほどよく揺れた。エアフランスでパリーストックホルムを飛んで以来の最悪のフライトだった。そういえばあのフライトも一番後ろのほうの席だったなー。
で、本当に、狭く、つらいエコノミークラスで12時間という拷問に近い長さの時間を過ごす。この最新鋭のB777にはエコノミークラスにもパーソナルテレビがついており、せめて映画を楽しもうと思ったのだが、エンジン後部ゆえの雑音と、ぼろいイヤホンのおかげでほとんど聞き取れず。眠ろうとしても、狭くて眠れない。ああ、悲しいかなエコノミークラス。
で、ようやくニューヨークに着。時差のおかげで、金曜日の夕方6時に出たのに、ニューヨークについたのは金曜日の午後。日付変更線を生まれて初めて超え、狐につままれたような気分になる。入国審査を受け、手荷物を受け取り、空港の建物の外でひでかすはタバコを吸い、そのまま空港に戻る。そう、おいらが初めてのニューヨークで見たものは、ひでかすのタバコを吸う姿のみ!自由の女神もマンハッタンもミュージカルも何も見なかった。これがおいらの初めてのアメリカ体験だなんて、あまりに情けない。
で、チェックインカウンターに行くと、状況は絶望的とのこと。おいらたちが成田を経つ時点ではまだ各クラスとも空席があったのだが、どうもこの便の前の便が非常に混んでおり、乗れなかった客があぶれてきたらしい。機材はB767、つまり、200人ほどの定員の小さな飛行機に30人がオーバーブックしている。そりゃ素人考えで見ても乗れんわな。
とはいえ他の選択はないので、搭乗口でぼーっと待つおいらたち。ファーストクラスの夢はどこへやら、乗れなかったら空港に泊まろうか、などと情けない言葉が交わされる。搭乗口の前にできていた乗客の列が機内へ続くブリッジに消える。が、まだおいらたちは呼ばれない。ああ、このまま、ファーストクラスどころか、ニューヨークの空港で1泊する羽目になるのか。この続きは、6/17(便宜上、この下の昨日の日記が続きになります)の日記に続く。
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