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2007年10月10日(水) お金を落としちゃいけません

もう、ちょっと前のことなんですが。
きょんが出先からワタシの携帯に電話をかけてきまして。
何事かな?と思いましたら

「あのね、○○○(近所のショッピングモール)の入口のところで1万円拾ってしまった。あたしはどうしたらいいだろう」 と。

この人、自分が望んでいないときにワタシが口を出すとぷりぷりしたりするんですが、たまにこのように「それをなぜワタシに?」ということで電話をかけてきます。
でもなんだか、今回のこれは気持ちがわからないでもありません。

1万円。
そのまま自分の懐に入れるには気が咎めますし、かといってむき出しの1万円を警察に届けたところで、はてどうなんだろう、という気持ちでしょう。
お財布を拾った、とかでしたら、中にお金が一銭も入っていなかろうと、たぶんきょんもためらうことなく警察に届けたのでしょうけど。
そして、500円玉くらいでしたら「えへへ」なんて自分のものにしちゃったんでしょうけど。
1万円というのが、なんというか、微妙です。

「あなたどうしたいの?(笑)」とワタシ。
「1万円札をわざわざ警察に届けるのもどうなんだろうって思うけど、自分の懐に入れるのは気が咎める」
「気持ちはわかるよ」
「それに、そんなことあるはずないのに、誰かに見られてる気がして(笑) 何か落ち着かないのよ」
「ドッキリとかね(笑)」
「そうそう(笑) ・・・どうしよう?」
「おまわりさんにつまらぬ仕事を増やしてしまうけど、届ければ半年後にはあなたのものだね」
「そうねえ。他に思い浮かばないし、じゃあ近くの派出所に届けてくる」
「気をつけてよー。そんなもんのために回り道して事故った、とかだとシャレにならん」
「わかったー」

ということで、律儀に警察に1万円を届けたきょんでありますよ。

帰ってきたときに「おまわりさん、イヤな顔しなかった?」と訊ねましたら
「なんかね、定年退職した元おまわりさんが、代理で派出所の留守番してるとかで、すごく暇そうだったから気にしないで済んだ」
「それはよかった」
「でね、名前とか住所とか書かなきゃならないんだよ、書類に」
「それはあなたも面倒だったね」
「それはいいんだけどさ。その書類の中で『持ち主が現れたら連絡が欲しいですか?』みたいな項目があってさ」

持ち主が現れたときに、1割貰えるから、ということでしょうかね。

「うん」
「そこは連絡いりませんてことにしたのよ。めんどくさいしさ」
「うん」
「でもそうすると、半年後に持ち主が現れなくても、警察からは連絡くれないんだってー。
 こっちから半年後に『どうでしたー?』って確認入れるんだってさ」
「なに?! じゃあほら!忘れないうちにスケジュール帳の半年後の今日に印をつけておくのだ!」
「あはははは」
「笑い事ではない。1万円のボーナスはうれしいじゃないか」
「まあ、それもそうだけど。でも忘れそうねー」
「そうだねー」
「そのまま届けないで貰っちゃえばよかったかな?(笑)」
「金額的に悩むところだけど、でもたかが1万を懐に入れたせいで、なんだかドキドキしてるよりも健康にいいんじゃない?」
「それもそうだ」

ということで、きょんが1万円を拾ったという、景気がいいのかせこいのかという話は一件落着したんですが。

この話は、「けっこう良い額を拾っちゃったけど、貰っちゃおうかどうしようか」という迷いの話だったわけですが。

ワタシはつい最近、逆のパターンの経験をしましてね。

いつものように、朝、じゃー!じゃー!とキックボードを漕ぎながら近所の自動販売機に缶コーヒーを買いに行ったときのことですよ。
120円入れてごろんとコーヒーが出てまいりまして、コーヒーを取り出そうと下を向きましたら

お金が落ちてました。


1円。



すごーーーーーーーく、拾いたくない。
変な話ですが、きょんが1万円を拾ったときに「誰かに見られているんじゃ」と自意識過剰なことを感じたように、
ワタシもこのとき「誰かに見られてるんじゃ」と思ったんですよ。
さらに言うなら「見張ってるんじゃ」って思っちゃったんです。
この1円玉を拾う貧乏人は誰だ!みたいな企画まで勝手に鮮明にワタシの脳内に。

見られているのなら、1円玉なんて、拾いたくない。

見栄っぱりなんでしょうね。
うわ!あの人、1円拾ったよ!せこーーーー! とか思われたら、なんかヤだーーーって思っちゃったんです。

そして、葛藤。
なんかもう、ホントに、たかが1円でものすごく葛藤してしまいましたよ。
拾いたくない、拾いたくないが、1円とはいえお金はお金です。
ここで「けっ、たかが1円かよ。( ´_ゝ`)プ」なんて感じでお金を粗末にすると、後で大きなバチが当たるのではないか。
そんな強迫観念にかられてしまうわけですよ。
今こうして書いていると実にくだらない葛藤なんですが、そのときはまさに葛藤の渦。
なんでこんなに「1円玉を、わざわざ拾って、我がものにする」という行為が恥ずかしく思えるのか。
そしてそこまで恥ずかしいなら捨て置けばいいのに、「お金を粗末にしてはいけない」という道徳的観念がワタシを縛ります。

ぐ、ぐおおおおおおお めいた気持ちでもって、ワタシは1円玉を拾い、さりげなくきょろきょろして誰も見ていないことを確認した後、自分のポケットにその1円玉をしまいました。
挙動不審者じょりぃ。

このお金は、次にお金を払うときに必ず使おう。
このままポケットに入れて洗濯しちゃうようなことは断じてしないようにしよう。
だってだって、ワタシがこんなに葛藤して、ぐおおおおおおって手にした1円なんだもの。

あ、そうだ。いいこと思いついた(・∀・)

ということで、その日のお昼にコンビニに行ったときに、その1円玉を募金箱に入れて、ワタシの葛藤は終了いたしました。
ありがとう募金箱。
キミは恵まれなかったり困ったりしている人を救うばかりでなく、ワタシの葛藤まで救ってくれたのだよ。

アルミ玉ですし、何か非常に軽い音がしました。まるで厚紙でも落としたかのような。かさ、みたいな軽い音。

音は軽かったですが、こんなに1円玉が重たい存在だったのは初めてでしたよ!


・・・という話をきょんにしましたら「あ、それで思い出したことがある」ときょん。

きょんは先日、ちょっと大きめの病院へ行ったのですが。
自分の用事を終え、駐車場へ向かって歩いておりましたら、きょんのすぐ前を歩いていたおじさんが、かがんで何かを拾ったのだそうです。
と思ったらそのおじさん、くるりときょんの方へ振り返り

「これ、拾ったから、やるよ」と。

手に持っていたのは、今拾ったばかりの1円玉。

い、1円くれるの?Σ (゚Д゚;) しかも今拾ったヤツ? しかも見ず知らずのあたしに?

と、いっぺんに3つも「?」を飛ばしたきょんは、「いえ、いりません」とお断りしまして。

「拾っちゃったんだよ。100円玉ならともかく、1円玉じゃあなあ」とおじさん。照れくさそうに笑いながら。
「あ、あはは・・・」ときょん。
「だからあげるよ」とおじさん。
「あー、いやー   けっこうですよー」
「そうか・・・そうだよな・・・・1円だもんな・・・」と言って、おじさん、バツが悪そうに自分のポケットに入れたそうです。


たぶん、このおじさんの心境も、ワタシが1円玉を拾ったときと似たようなものだったんじゃないかなーと思うと笑えました。

オレ、うっかり1円玉拾っちゃったよ!Σ (゚Д゚;)
でもすぐ後ろに女の子
(に一見見えるきょんのファッション歩いてるし、き、きっと見られたよな!
このままポケット入れるの恥ずかしいし!どうしようかな!よくわかんないけど、この子にあげちゃったほうが気前良さそうかも!


なんて葛藤が、きっとおじさんの脳内に。
しかしきょんにあっさり「いりません」と言われてしまったかわいそうなおじさん(つд-。)
きょん、貰ってあげればよかったのに!

・・・しかし、「あげるよ」と1円玉を差し出されたきょんにも、きっとワタシやおじさんと似たような葛藤が。


1万円を拾うよりもタチが悪いと思います、1円玉を拾うって。


みなさん、このように無駄な葛藤に陥る人間をなくすためにも、お金は1円たりとも、いえ、1円をこそ、落とさないように気をつけましょう。
落とすときは、財布ごと。 これがマナーというものかもしれません。なんてわけがありません。


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