大通りに面した店の ペンキのはげかけた木製ドアには 色のくすんだ小さなガラスがいくつかはめ込まれていて 横の柱が腐りかけてるドアの足元には 端から端まで塩が白く帯みたいに続いている 盛り塩ではなく コテで塗り込められたように 夕刻に白く浮かび上がる 隣はもっと薄暗い路地になっていて 塩の道もそこまで
塩の踏切を跨いでドアを開けてみれば 地下道のようなトンネルが下っている 煉瓦造りの円形のトンネルは あちらこちらで枝分かれしていて 声を掛け合うこともない人々が行き交っている 壁には時刻表らしきものも貼ってあるけれど どこがホームなのだろうか 上る階段すら見つからない
ドスンと鈍い音がして その夢から目覚めると 縁側から見える庭の畑に 黒いゴムの縁がついた白い円筒形 大きな望遠鏡のようなものが めり込んでいる 雲間に高射砲の閃光が幾度も光る 空高く巨大な三角形とブーメランの形をした ジェット機が行き過ぎる 時折宙返りしながらキラキラ反射する 灰色の機体 戦争がもう始まっていた
その夢から目覚めると メディアを賑わせているのは お金をつぎ込んで 環境を与えて 開かれたつながりという 閉じられたコミュニティの中で 羽をもがれてあえぎながら お手本のないリアルを生きている みんなで育てた小さなテロリスト その夢からは目覚めそうにもない
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