つぶやき連絡帳

田中 くうき。の伝言板。

2020年12月29日(火) 貴様は(ry其の弐。

祝いたいコトは、美穂の妊娠だけではなかった。

つとむくんにはやっと彼女ができたし、

亜紀も婚約者がやっとできた。

まあ、亜紀が一瞬見せる氷のような眼差しを解っていて結婚したのか、
それとも亜紀の生贄なのかは判らなかったので、
一瞬、最悪の事態も想定したが。

今度のパートナーこそ『冷血ロマンチスト』な亜紀を
不倫を許すような相手ではないコトを願ったが、
後に亜紀が不倫なぞしようものなら亜紀をポッキポキにできる
強力な義兄であることを知るようになるのだ。それで安心した。

でも、テルミさんにとって一番のトップニュースは、
私(の中のS)がやっと岐阜に帰ってくる事で、
「くうきの為!くうきの為!」と、亜紀が焚きつけると、
テルミさんはそれまで大事にしていた嫁入り家具をどんどん捨てた。

「嫌イヤいや嫌イヤいや――――!!!」と、嫁入りタンスを
何個も所有していて、それが余計にデッドスペースを作り、猫が
そこで匂いを発するスプレーをしまくっていると、理性では分かるが
二度と会えないと思うと吹っ切れないテルミさんに閉口していた
ソレを、娘がひとり帰ってくるというだけで捨てたのだ。

一年の間、手紙の一通の返事もしなかったが、
…というか、私の目につくところに母の手紙を見つけると、
ハヤシくんがしっかり握り潰していて、それで当時の私は
テルミさんの言葉なぞ一言も触れたことが無かった。
(見せてもらったが、虫唾が走ってトイレで吐いた。)
が、ハヤシくんがそういう冷血な精神の持ち主だからこそ、
テルミさんのようなチャランポランな母親から強力に
分断することが出来たのだ。

当時はまだテルミさんに対する敵対心というか、
薬が足りなくて錯乱状態になると決まって必ず、

「なんで産んだ!?私を産んだ!?産む価値無いのに!?
 テルミさん、最初は堕胎する気だったんでしょ!?
 私が役に立たないと、しょっちゅう、私に、オマエは
 避妊リングをつけたのにできた子だよって言って聞かせて
 要らない存在なんだって教えてくれたよね!?
 なーのーに殺してもくれない!やることが中途半端なの!」

…と言った感じで(汗)
誰にも相手にしてくれない。
それなのにこの世に生まれてきたことに心底、怒っていた。
涙をボロボロ流しながらテルミさんを詰った。
テルミさんの料理が下手なのもテルミさんに「下手。」と突っ返して、
テルミさんを(´・ω・`)ショボーンとさせたまま帰した。

しかし、家計にひとり分出費が増えるのは痛い事だ。
亜紀は口には出さないが、明るい笑顔の向こう側に、
やはり氷のような眼差しを隠していて、
「やっぱり家計ってやってみると色々判るもんでねー。
 二人分のお給料で三人養うのって難しいのよー。」
など、帰ってきた私を、日を追うごとに邪険にするようになった。

「ならなんであの時帰ってこいって言ったの?
 ハヤシくんと同じように精神的サンドバッグにするため?
 それなら私にはもう居る場所が無い。どこかで死のう。」


そういう岐阜に帰る計画のさなかにひとちゃんの存在があった。
私の方からは毎日のように日記を書いて、
うつ病と戦っている様子をなるべく頻繁にアップした。
けれど、彼女の方は声は沈みがちで、「絶対なんかある…」と思い、
軽〜く、「なんかあったの?」と訊くと、ひとちゃんは号泣した。

「最初はお母さんがストーカーされてるって言う話だったのに、
 お母さんが嘘ついてて、本当は相手と不倫してるんだって!
 それからうちの中がギスギスするし、相手は自分の妻に
 こういう話がばれても離婚されないからって、
 ばれても全然平気だって。慰謝料も、"合意の上で"したんだから
 払わないって!」

最初は若干、ひとちゃんのほとばしり出る悲しみや
悔しさ腹立たしさや不安にショックを与えられた理不尽感。
それらに圧倒されていたが、うちの父親も妻がありながら、
他の女や私を穢す放蕩男だったので、気持ちは痛い程解った。
なので、一言、二言、彼女に癒しの言葉を述べると、

「本当は寿美さんにしか話せないと思ったの。
 他の普通の家の子に話すと引かれちゃうと思ったから。
 でも正解だった。寿美さん迷惑そうでもないし、
 引いてもいないから。」

「まあ、私は人生色々あったからね。特に家庭は。」

「それ!うちは普通の家だと思ってた。くうきさんちみたいな
 修羅場とかは自分には無縁のモノだと思ってから。
 まあまあ、幸福な中流家庭だと思ってて…そしたらね?」

「まあ、イキナリひとちゃんの思い込んでた平和な家庭っていうのが
 思い込みでしか無かった…と。」

「うん…。他の人に馬鹿にされそうな家に格下げされた感じ。」

「う〜ん、それはそれで私サイドの人間を馬鹿にしてると思うけど。」

「あっ!ゴメンそういうつもりじゃ」

「まあ、ひとちゃんの気持ちもわかるよ。」

(流石に幼児のうちから近親相姦とは言えなかったが。笑)

「もう何処に引っ越すワケでなし、今度、サイゼリアにでも行こうよ。」

「うん、こんな話ばっかりしてたらイヤにならない?」

「其処は友達なので。笑」

(ゲシュタルト療法でも施術すれば一年くらいで休まるだろう…。)

堅く誓った。何年経っても、作り笑いじゃない。
彼女の本当の笑顔を見る!

でも、やっぱり私ひとりの力では限界があった。
若干笑いは増えたが、これでは本当の笑顔とは隔たりがあり過ぎる。

…悩んだ。

「人に本当の笑顔を見せてもらおうと思ったら、
 自分だけでは駄目ですかね。」

「あら、都築様には珍しくお悩み事のひとつでも?」

「う〜ん、迷惑というワケではないですよ。けど、最近ひとり、
 笑顔が見えないな〜、という友人がおりまして。」

「うふふ、都築様らしくていらっしゃるのね〜。笑」

「からかわないでください。私は真剣ですよ、綾崎様。」

「ごめんなさい、あんなにまっすぐな生き方をしておいでなのに、
 それでも悩みや戸惑いはあるんだ〜、と、純粋に興味が、ね。」

「私はそんな真っ直ぐな人間ではありません。
 綾崎様は私を買い被り過ぎです!」

「あの2ちゃんねるで専用スレまでお持ちの"うぃ様"がお悩みなんて。」

「似合いませんか?」

「もうちょっと真っ直ぐだと思いましてよ。」

「ひとちゃんの家にドア蹴破って突入して、金属バットで
 彼女の両親でも殴ってきましょうか?幸いあそこは男が弱い。」

「きゃ☆うぃ様お得意の実力行使ですね☆素敵☆」

「私は真面目に言ってます。」

「ていうか、都築さまは何で癒されました?」

「それはもう。山ほどの薬とカウンセリングですね。」

「…それって、お友達には薦められません?」

「精神科、ですか…。」
 彼女に精神科の受診をしろと…。」

「だって彼女、たしかに都築様のゲシュタルト療法で
 癒されているみたいですけど、私の大事なお友達のコトは
 酷使して当然みたいな様子じゃあありませんか。
 ただでさえ"田中くうき"もどんどんファンがつきつつあるのに、
 "うぃ様"や"都築石榴様"まで、全部独占して、私…私だって。」

「一番の友達はひとちゃんですからね。
 貴女がセフィロスとは何も比べられないようにね。」

「悔しいです!早くお医者に診せてください!」

「セフィロスは壊れないからいいですねぇ。
 私の友人は繊細で、何処で地雷を踏むのかハラハラしています。」

「あれが壊れるとは私は到底認められません!」

「友人ですから、心のピ―――――に引っ掛からないから
 良いんです。貴女だってセフィロスは心のピ――――に
 引っかかるなんて畏れ多くて馬鹿みたいでしょう?
 友人が日番谷隊長だったらこんなまどろっこしいステップは
 踏まないし、間違った時を考えることは無いでしょ?」

「まー、そうやって、『ひとちゃん』のコトになると饒舌になる!
 彼女は良いお友達を持ったと思いますよ。」

「誉め言葉と受け取って良いのですか?」

「いいえ、馬鹿です。
 そのお友達を何より大事にしている貴女は何より馬鹿です!」

「『ひとちゃん』もそうやってよく泣きます。」

「貴女は本当は朴念仁なのではないかと思いますよ。」

「?」

「あんな風に何十、いえ、何千の人の心を、
 素の自分のまま、引き摺って持って行ってしまう。」

「・・・。」

「2ちゃんねるで、ただの相談スレのクセに
 スタッフルームまであるスレの持ち主は
 なかなか居ないと思いますよ。」

「おかしいですかね…。」

「おかしいですよ。むしろオカシイですよ。」

「しかし、彼女の両親は、金属バットで一度殴りたいですね。」

「あら、風向きが変わった。」

「不倫女に、不倫を告白されるまで妻の浮気に気づかない男。
 まあ、お見合い結婚の結末のひとつらしくて、ある意味納得。」

「あら、明日はお仕事の日では?」

「そうですよ。」

「こんな時間まで都築様をお引き留めしてしまうなんて!
 早くお布団にお入りになって!」

「良いんですよ、別に。」

「貴女が良くても、私は嫌です!」

「ははははははは!」

「何を笑っているのですか!」

「いやあ、たまにはマンツーマンで話さないと
 欲求不満になる友人も居ましてね。
 テーマは何でもいいんですけど。」

「…それは…私のコト…。」

「ははははははは!」

「朴念仁だと思わせておいて…卑怯ですよ。」

「やだなあ、綾崎様、"うぃ様"で"田中くうき"が
 そんなことくらい勘付かないと思うんですか?」

「馬鹿!このッ!馬鹿ぁ!」

「それでは、今日は良いアドバイスをありがとうございました!
 おっしゃる通りに眠るコトにいたします。良い夢を。」



――プッ―−



翌日、映画を観た後の車の中で、取り乱されるといけないので、
ひとちゃんの車を運転しながら、なるべく言葉を選んで、
今、私が見ている『ひとちゃん』はどう見えるか、
24時間、一緒に居られないから、他所にフォローが要ること。
家族をサイゼリアで罵ることで力を得る生活をしてきたが、
私の「ゲシュタルト療法」では限界があり、専門家の助けが
どうしても必要になること。

横目で彼女をちらりと見ると、鼻拭きタオルで涙を拭いていた。
運転手をかって出て良かった。思いながら、「大丈夫?」ときくと、

「普通の家で通さないといけないから、普通の顔してきたけど、
 私って可哀想な子なんだ。悲しんだり傷ついたりして、
 世間体とか気にせず『辛い』って言って良いんだ。」  

「そりゃ、涙は悲しみを洗い流す効能があるから、泣けばいいよ。」

「くうきさん、迷惑じゃない?」

「迷惑だったらこんな話切り出さないじゃない?」

「そっか、迷惑じゃないんだ。」

「なんか、ひとちゃんの大本命?の"岩田さん"?
 あの遺産で遊んでる。彼女には話しちゃダメだよ?
 家族のぬくもりを最初から知らないから、
 "はい、痛い思いしてるね。自分だけ可哀想だね。
 私には聞かせないでね(内心、うっわめんどくさそう!)"
 …って思われるだけだから。友達の定義も間違ってるから。
 ひとちゃんには『一番話を聞いてもらいたい』かもだけど
 それ、ひとちゃんだけだから。」

「そんなもんなのかなぁ…。
 話したら同情してくれるんじゃ?」

「ナイナイそんなもんナイ。」

「ごはんは?サイゼリアでOK?」

場所は近所のサイゼリアに移る。

「くうきさん、あの…。」

「うん?」

「精神科に行くから、今からスケジュールしておきたいんだ。
 気が変わらないうちに…だから、今、行く日を決めたいんだ。」

「んじゃ、4月1日とかどう。」

「いいね、じゃあ4月1日…と。」

「今度の通院の時に杉浦先生にも話通しとくよ。」

「よ、よろしくお願いします…。」

「予約決まったらまた連絡するよ。」

「ハイ…。」

「その、犬山病院への行き方がわからないから教えてもらっていいかな。」

「多分、ひとちゃんじゃ、一回で覚えられないだろうし、
 精神科って結構特殊な空間だから、最初から何回か、
 付き添おうと思ってるんだけど。専門用語もわからないでしょ?」

「ついてきてくれるなら助かるよ〜。
 でもくうきさんも仕事あるよね。」

「うちは土日完全休業日だから大丈夫。」

(此処でひとちゃんの両親とか妹とかが口突っ込んで来そうで
 それだけはやだな〜、IQ低いから「精神病院」っていう
 キーワードだけで大騒ぎになりそうな家庭だしな。)

何処までも果てしない、ひとちゃんの沼の深淵。
何処まで付き合っていけるだろう。
あの無能そうなカウンセラーに任せて良いのだろうか。

でも、本当に、ひとちゃんの両親は寝てる間に金属バッドとか
やりたい感じ。最初は男の子が良かったから男児服着せるとか、
お人形遊びしたい年頃にさせてもらえなかったり、
近所の、基本学級に本当に通っている子と遊ばせようとしたり…。

よく頑張ったね。
ちなみに今日は大晦日なんだけど。
良いお年を!










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