ささやかな日々

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2022年05月22日(日) 
新苗の薔薇たちに次々蕾がついてしまうので、私も懲りずに次々摘んでゆく。お花をつけるのは秋でいいんだよ、と声をかけながら。それでもやっぱり、摘むときは胸がぎゅっとなる。せっかくついた蕾なのにね、ごめんね、と思う。宿根菫はもういい加減終わりなのかもしれない。花がつく速度がぐんと落ちた。あれだけ咲き誇ればそれも当然か、と思う。種があちこちに飛び散って、芽を出して来ている。これは抜くべきなのかどうするべきなのか、と迷っているうちに、一枚また一枚と新しい葉を伸ばしてくるので、まぁしばらくはそのままでいいか、と放っている。それにしても、こんなところまで種が飛ぶのか、と驚くほどの距離、そのくらい勢いよく種がはじけるのだな、と感心する。息子の朝顔は蔓がしゅるしゅると伸びてきており。しばらくはその蔓を棚の網に絡ませてやることに終始することになりそう。大きくなれよ、朝顔。

疲れがピークだったのか何なのか。顔を洗わないで倒れ込むなんてことはほぼない今日この頃だったのに、昨晩久々にやってしまった。顔も髪も洗う余力はなく、とにかく倒れ込みたいという気持ちでワンコの隣に丸くなった。ワンコはそんな私を何食わぬ顔で見やるばかりで、でもそれが私にとっては安心できる要素でもあり。それにしても体中が痛い。今日は特に下っ腹がぱんぱんに腫れあがってちょっと体を動かすだけでも痛みが生じるという具合で。何が楽しくてこんなに膨れ上がってくれるんだろう、と自分の下っ腹を見下ろしながら思う。

昨日の日記をいつどうやって書いたのかちっとも思い出せない。一体いつ? 覚えがまったくもって、ない。なかなかな、謎。
そしてまた、今日が日曜日だというこの実感のなさったら、ない。どうしてこんなにも現実感が薄いんだろう。

SIさんから連絡が入る。担当している子の中に自傷癖のある子がいて、その子がちょっと騒動を起こしてしまったのだという。リストカットの衝動が止まらない為施設の職員にカッターを貸してほしいと頼んだが、職員は当然渡すわけもなく、それに腹を立てたその子は職員に物を投げつけちょっとした怪我をさせてしまったのだという。衝動が起こるとどうやっても自力では止められないそうで。結果、他害に及んでしまう、という具合。リストカットは深いものではなく、表面を切るくらいのものなのだが、とにかく一度衝動が起きると止められない、と。父親からの酷い虐待とネグレクトに晒されて育ったそうで。母親はそれを止める術を持たなかったという。
SIさんは、他害に及んでしまうくらいなら、カッターを渡した方がいいのではないか、と考えてしまうという。表面を切るくらいの程度なら、命に関わるわけではない、それなら、他害に及んでしまうよりずっと、リストカットをさせる方がいいのではないか、と。
どう思いますか、と問われたが、私はその問いには直接応えられなかった。
代わりに、この話を伝えた。
私がリストカットが酷く、毎日のように腕を切っていた頃。当時の主治医がこう言ったのだ。「左腕はもう、しょうがない、でも、この綺麗な右腕は、綺麗なままとっておこうね。左腕だけにしよう」。私はその言葉を聞いた時、自分を全否定されないことに深い安堵を覚えたんだった。だからこそ、この主治医との約束は絶対守らなければいけない、と自分に誓ったんだった。それからというもの、酷い衝動に襲われ左腕がすべて傷で埋まってしまって他に切る余白がなくなって、もう右腕をいっそ切ってしまおうかと思われるような時でも、ぎりぎりのところで主治医との約束が足枷になってくれた。それでもだめだったことが二度ほどあって、その時は右腕を切ってしまった後で深い後悔に襲われ、泣いた。約束を破ってしまった自分に、絶望した。
私の場合、傷ひとつひとつが深くて、放っておくと命に関わる深さだったから、余計に、左腕だけに留めておく必要があったんだろうなと今なら分かる。だからこその主治医の言葉だったんだろうけれども、その主治医の提案は、当時の私をそっと支えるだけのものとなったことに間違いは、ない。
その話を、SIさんに伝えた。カッターを渡すという選択肢はよほどのことがない限り私にはありえないけれども、とも付け加えて。あとはもう、SIさんがその都度その都度、その子と向き合う中で選択してゆくことなんだろう、と思う。

明日はアートセラピー講師の日。ちょっとこの、現実感のなさをどうにかしないといけない。明日の授業の時間まであと半日以上ある。大丈夫、なんとか、なる。信じよう、自分の底力を。


浅岡忍 HOMEMAIL

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