ささやかな日々

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2020年12月29日(火) 
親友と記念日反応のきつさについてああだこうだと語り合う。彼女は12月と1月、私は1月と6月。この時期はだから共にきつい。でもいくら語り合ったって辛さは変わらないから途中で話を旅行に変える。そして何故か、死ぬまでに絶対行こうという約束を交わす。ひとつはパリ。もう一つはカナダ。パリは私が学生時代しばらく過ごした街で、カナダは彼女が詳しい。お互いに、ここに行こう、あそこに行こうと盛り上がる。実際に行けるのかどうかなんてどうでもいいんだ。今この時、私と彼女が共に夢見、行こうね、と言えることが大事。
約束を果たす為には二人ともまず生きていなくちゃいけなくて。何よりこの記念日を無事に越えていかなければならなくて。だから私たちは思い切り想像の羽根を膨らます。何処までも何処までも、羽ばたいていく想像力。

「ジェニーの記憶」を少し見る。見ただけで頭がくらくらしてくる。心臓がばくばくしてくる。親友も私も、ストックホルム症候群を長いこと引きずった人間だから、主人公の有様が分かりすぎる程分かって辛い。でも気になる。そういうところで見ているから猶更追い詰まる。
かつて、加害者や第三者に私が被害を訴えて、しばらくして、加害者はこう言った。「僕は君のことが好きなんだ。結婚しよう。結婚すればすべて丸く収まるでしょ?」。つまり、あったことをなかったことにするということ。僕は君が好き=僕の気持ちを受け取って=レイプしてもしょうがないでしょ=でも結婚すれば結果的にレイプじゃなくなるよね?
冗談じゃない。あったことはなかったことにはならない。そうできるのはそれを為した側だけだ。

でも、酷いセカンドレイプに長いこと晒されるうちに私は、「加害者にしか私の気持ちは分からない」と思うようになってしまった。
ストックホルム症候群にすっかり呑み込まれ、自分の一番の理解者は加害者だけなのだ、と。
何言ってんの、と言われるに違いないと思って本当に長いこと、二十年近く、誰かに打ち明けることさえできなかった。主治医にだけ、こういうことを加害者から言われましたと告げた。主治医とカウンセラーに「加害者はそうやって自分の加害行為を隠蔽するのよ」と話してくれた。そういわれるまで私はずっとずっとずっと、罪悪感を抱いていた。今だってちょっとすれば、その罪悪感に呑み込まれてしまうほど。それは強烈な。

この世の大半の人間は、合意があったかなかったか、という観点でしかレイプを語らないけれども、それは違うと思う。それだけじゃあ語り切れないものが実際にあったりする。
加害者は巧妙に、実に巧妙に罠を仕掛けてくる。被害者を巧妙に絡めとる。そうして真綿で首を絞めるかのようにじわじわと心の命を奪ってゆくんだ。


浅岡忍 HOMEMAIL

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