ささやかな日々

DiaryINDEXpastwill HOME


2020年08月17日(月) 
昨日はH君との撮影だった。島まで出掛けたのだけれど、あまりの暑さに二人とも早々に汗だく。せめて熱中症にならぬようにとこまめに水分補給。始発で出掛けてよかった。一時間を過ぎた頃にはばらばらと人の姿が。みな水着を着ている。
家族の話、結婚の話、研究の話、あれやこれや。この十年近くの間に彼の身辺もずいぶん環境が変わった。それだけ彼が生きて来た証なんだよなとしみじみ思う。
寝坊して遅刻してはいけないと徹夜でやってきた彼は、それでもへこたれず最後まで笑顔だった。昔の彼なら早々に「もう無理っすー!」と言っていたに違いない。そういうところもこの十年で変わった。
私にとっての十年はどうだったろう。この十年、本当に忙しかった。次々降りかかることに対処しているうちにあっという間に時間が過ぎてしまったという感じだ。再婚したり息子を産んだり、娘の反抗期に涙したり、かと思えば娘の結婚、DV、離婚。でも、今の娘を見ていると、ああ離婚できて本当によかったと思うのだ。娘と孫の幸せそうな笑顔を見ているとつくづくそう思う。
撮影終盤、鳶が何羽も空で円を描いていた。彼らの影が私たちの足元に。その影の大きさに息をのむ。すごいですね、すごいね。私たちは彼らを見上げ、影を見つめ、思わずそう声にする。
別の岩場に辿り着くと、その入口で橙色の百合のような花が群れて咲いているのを見つける。こんな場所にも花が咲くんですね、とH君がその中に入ってゆく。出て来た時には彼の紺色の服にびっしり花粉がついてしまっており。慌ててぱたぱたと叩く。
容赦のない強烈な陽光に閉口しつつも、それでも三時間ほど撮影をし帰路につく。駅に着いて二人でアイスクリームを食べる頃にはもうくったくたで、顔を見合わせ苦笑する。
帰宅すると家人に「熱中症にならなかった?」と言われる。そういえばなってないなぁと返すと「よくこの天気で熱中症にならなかったね、あなた相変わらずタフだね」と笑われる。確かに。
H君と別れてから、改めて考えている。彼らを撮り続けたこの十年という時間。二十代という季節。喪ったもの、得たもの、見送ったもの、迎え入れたもの、いろいろなものが交叉しながら走馬灯のように私の脳裏を往く。


浅岡忍 HOMEMAIL

My追加