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ここ7ねんぐらいを回想してみる
一枚の美しい布を見たときに感じる、きらきら光る崇高さ。その奥には、日々の生活から生まれる力強さ、それも豊かな自然環境の中で育まれた人間にしかできないしなやかな力強さがある。 なぜこんなに力強く美しいものが生み出せるのだろう、そう思いながら自分の浅い制作経験と照らし合わせてみる。油絵学科のときは、「なぜつくるんだろう」という問いばかりが先行して、頭だけで手が追いついていないようだった。テキスタイルに移ってからは、手に職をつけるのが精一杯で、それでも後からなんとか思考もついてきたようにも思う。その途上で経験した共通絵画の1ヶ月は、今から考えても自分にとって大切な時間だった。
目の前にある石、たったひとつの、だけどとてつもない存在を、どう受け止めればいいのか。シンプルな故に小手先では逃げられない命題を出されたようだった。それまでの油絵の課題では言葉ばかりが先行していてモノが後回しになっていたが、(今自分が生活している環境も、モノより言葉が重要視されがちであるけれど、)あの時は「大きな石と自分」というシンプルな関係をどうとらえるか、その一点だけが重要だった。大きな石というモノの秘めている力と、自分の奥深くに眠っている無意識を、ひたすらに感じ、対峙させた一ヶ月だった。そしてその時は「こわい」という単純な感情が、石と自分のとりあえずの帰結点となって画面に現れた。
その後の、テキスタイルの2年間、社会に出ての3年間は、いってみれば技術習得がメインだった。しかし、日々の合間を縫っての制作や、これから始まるミュージアムの仕事も、技術ではなく、「モノがあって自分がある」というシンプルな関係性を追求し続けること、(もしかしたら美術という枠すらも取り払って)そうして見えてくる本当の美しさを求めることが、これからの自分にとってのテーマなのではないか。
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