てくてくミーハー道場
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2019年12月21日(土) |
花組芝居『義経千本桜』(あうるすぽっと) |
花組芝居の特徴をぼくが一言で表すと、
「歌舞伎座でやってる“歌舞伎”を、その1.3〜1.5倍のスピードで見せてくれる劇団」
ということになります(えっ?身も蓋もない・・・)
いや、それが正しいんだって(意固地)
今回の『義経千本桜』がまさにそうだった。
本物の(こっちはニセモノだとでも?!)歌舞伎では、“通し”と銘打ってもカットしたりする段も、今回はきっちり入れ込んていた(その代わり、場面場面を相当端折ってたが)
これは、普段歌舞伎の皆さんがやってるテンポでやってたら、それこそ24時間以上かかる代物。そこを逆に3時間以内で終わらせてしまうという快挙(なのか、暴挙なのか/苦笑)
実際には花組さんは歌舞伎だけじゃなく色んな作品をやってますが、こと、古典歌舞伎を彼らが上演するときに一番実感するのが、「歌舞伎座で見るよりちゃっちゃちゃっちゃと進むなあ」ということ。
もちろん、ちょっと現代風ギャグ入れたり小劇場らしいことをやってるんですが、大枠では原作の歌舞伎作品から逸れることはないです。
これは、本物の歌舞伎俳優が出演していて本当っぽく上演しているにもかかわらず、松竹監修のもと歌舞伎座で上演している“大歌舞伎”とは全く違う解釈をして価値観の落差を突き付けてくる串田和美さんのコクーン歌舞伎と実は対極にあるものとぼくは感じます。
コクーン歌舞伎は、歌舞伎作品を歌舞伎座で上演されているのとほぼ同じテンポで上演するが、最後に「当時の日本人はこういう価値観だったんだろうけど、その当時のままなんも考えず(というわけでもないはずだが)同じように上演してる歌舞伎座の歌舞伎は、ちょっとおかしいんじゃないか?そう思わないか?」と語りかけてくる。
でも、花組芝居の歌舞伎ものは、「この作品が初演されてた当時って、もっとテンポ良かったはずだよね。今みたいにまどろっこしくなかったはずだよね」と語りかけてくる。
ぼくにはそう思える。
いわば、現代の歌舞伎は、長年の再演再演再々演の影響で、その時々の世相や出演者たちの状況(諸事情で大スターが端役をやったせいで、登場人物のバランスがおかしくなったり)により、初演時からだいぶ変わっちゃってる。それを加納幸和は“初演時の勢い”に戻したいんじゃないか、とぼくは感じている。
本人に聞いたことないから本当はどうかわかんないけど。
なので、「いうほど『新解釈』みたいなのはないなあ」と思いつつ観てて、ラストシーンだけちょっと「おー」と思いました。
うん、もうちょっと何か欲しかったかなあ。
役者連に関してですが、この機会に初めて告白しますが、ぼくが数年前からこの座組で一番注目している役者は谷山和宏であります。
『花たち女たち』(2010年)で初めて認識した。その前から入団してたらしいんだけど、たぶん端役しかやってなかったんだろう(決めつけ)
谷山は女方も立役も演るらしいが、圧倒的に女方の方が魅力的で、こんなこと書くと観たことない人は「そんなにきれいな女方なのか」と誤解するであろう(えっ・・・)
花組芝居で「きれい」系というか「かわいい」系の女方と言えば、大昔在籍していた小森谷徹(いまやナイスミドルの情報キャスター)とか植本潤(今「純米」とかいう変な名前に変えちゃってどうしたんだ?!←)とか、万年妖幼女の大井靖彦とか、しとやか堀越涼とかちょっと横に広い顔だけど()二瓶拓也とかがいるんだが(列挙するとけっこう多いな)
谷山はそれらどの女方とも違う個性を放っている。
まず、女方の拵えをしても、一向に「美人」ではない上に、声も奇怪である(本人が読んだらショックだろうなあ・・・)
近い存在としては八代進一がいるが(つっても、花組芝居を知らない人にはわからんか・・・)
だが、いちど役になって動き出しセリフを放ち出すと、すっかりその役(それがすごい美人の役だったりする)に見えてくるのである。
この「いい女」への変貌ぶりには毎回感心させられる。
今回谷山は女方ではなしに“三役”のうちの一つ・佐藤忠信(狐)と、チョイ役として猪熊大之進を演ったのだが、この狐忠信も、力みのない良い忠信だった。
で、もっとびっくりしたのは、ちょっと時間軸が前後するが、一昨年に『いろは四谷怪談』を上演したときに、役替わりで“街中の現代人”の役をやったのを観た時。
要するに“素”で出てきたのだが、ぼくが思ってたよりもイケメンだったのでびっくりした(どんなのを想像してたんだよ!?)
あの、女方で出てくるときの怪奇なメイク(そ、そのぐらいにしといてあげて・・・/涙)は、生まれつきメイクが似合わない顔立ちなのだろうか。すっぴんだったら中の上のお兄ちゃんだったことに感動したあたくしでありました。タニ屋さん、応援してます。これからも頑張ってください(ファンレターにしては酷い内容)
実際花組には彼以外にも注目してる人がおりますので、いつかの機会に書きたいと思います。
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