てくてくミーハー道場

もくじ前回てくてく次回てくてく


2018年02月19日(月) 『髑髏城の七人 season月』−上弦の月&下弦の月−(IHI STAGE AROUND TOKYO)

小平奈緒選手、スピードスケート500m金メダル、おめでとうございます!!!

羽生君もだけど、小平さんも今回あっちからもこっちからも「最高で金、最低でも金」を期待されて、相当な重圧だったことでしょう。

一流のアスリートはその“重圧”を上手に“チカラ”に変えられるそうですが、そうは言っても心の柔らかい生きた人間ですから、押し寄せるプレッシャーを全部もらさず受け取って「元気玉」を作れるほどの都合のよいメンタルでもないはず。

こっちは勝手に期待して勝手にあなたがたを弱い自分の代わりに頑張らせているのだから、本当に身勝手なものです。

そんなぼくたちの身勝手を純粋な力に浄化してくれてありがとう。

もちろん、金メダルじゃなかった選手も、メダルに届かなかった選手も、オリンピックという大会に出ただけでもすごいんで、皆さんの頑張りをあまさず讃えます。運動神経虚弱選手権なら2大会連続金メダルの自信のあるぼくの偽らざる気持ちです。







さて、運動神経虚弱人間ならではの「舞台上縦横無尽アクション超大作」大好物のぼく、もうすぐ千穐楽が来ちゃうんで、慌てて上弦下弦2連チャンしてきました(昨日上弦ソワレ、本日下弦マチネ)

本当は分けて感想を書きたいんだけど、昨日は羽生君のことを書いてしまったので(1日に1本しか書けないのがエンピツ日記の唯一の弱点なんだよねー・・・)、今日2本分まとめます。

そうすると、自然にダブルキャストを比べてしまうことになりますね。それがちょっと気が引けるんだけどまあしょうがない。



まず、「Season月」の他Seasonとの大きな違いについて。

一番大きかったのは、何といっても沙霧が男の子(霧丸)になっていることですね。これについては正直本当に疑問でした。キャストに男優を増やしたかったのか?それは何故?と思います。

多分女客(それも若い)を増やすためなんじゃないかと単純に想像。そしてそれははっきり言って当たってました。休憩時の女性トイレへの列の長さが半端ない。ぶっちゃけ男客目に見えて少なかったなあ。

実はぼく自身も今回のSeasonのキャストには最初あまり食指をそそられなかった。

来たのはひたすら極楽太夫のお二人へのノスタルジーにほかならず(失言でしょうか。すまん)

そんで、熊木衆の生き残りを霧丸という男の子にしたことで、捨之介との関係性をどうするのかが一つの注目点でした。

清らかに「主人公と少年キャラの兄弟分的友情物語」にするのか、それともちょっと衆道的にしてフ女子客をゲットするこころづもりか・・・。

もう公演終わっちゃうのであっさりネタばれしますが、答えは前者でした。

で、正直言うと、これだと霧丸への感情移入吸引力が弱いのかな・・・という感想。実際に観劇後もその予想は覆りませんでしたね。

常々メインキャラの中で沙霧に一番冷たいぼくが言っても説得力ないとは思いますが、やはり沙霧が最終的に捨之介に恋心を抱く流れにならないと、ラストシーンの胸キュンが不足します。今回観てはっきり判りました。

いっそBL風味を少し足しても良かったんじゃないかなと思うけどね、客層的にも。



さてそんなわけですがこの『髑髏城の七人』シリーズ、これまで1年近くに亘ってひとつの作品を上演してきたわけで、ぼく個人としても10か月の間に5回観たわけだからストーリーが既に入っちゃってるのは自明なんですが(もちろんアカドクロもアオドクロもワカドクロも観てるんだけど、だいたいぼくは半年以上前に観た作品のストーリーは忘れる性質←鳥頭かよ)、それとは別に今回は今までで一番ストーリーが分かりやすかった気がした。

“人の男”が天魔王になるくだりから始まってるからかな。捨之介の謎めいたところは今までと同じだが(ここまではっきりさせちゃうと、いくらなんでも面白みが失せる?)、登場人物の絡まり具合が観客に対して低難度になってる気がして、オールド客のぼくからすると、少し食い足りない気がした。

そんなわけで、今回の公演はストーリーの複雑さを味わうよりも、これまでで一番年齢的に若い(特に上弦の方)キャストの“体の動き具合”を楽しむ場として認識しました。



では、頼まれてもいないのに(むしろ迷惑がられてるだろうに)勝手に対決評価。

捨之介(福士蒼汰 vs 宮野真守)

二人とも長身美丈夫で、アラウンド20列席からぼくの視力で見た限りでは、舞台姿は五分五分。ただ、元気の漲り方ではさすがに福士君に分があり。ことに終盤の殺陣の連続攻撃後でも動きやせりふの鈍りがなかったことに目を見張った。

若いって、いいわね(涙)←深くとらないでください!

観る前は宮野君の“主人公声”に明らかに分があるだろうなと予想していたのだが、実際に観てみると福士君も“主人公声”だったのよな。

ただ、演技力については少しだけ宮野君の方が上。特に贋鉄斎とのアドリブシーンでの「間の持ち」がさすがだった(ただしここは中村まことの力もあったと思う)


天魔王(早乙女太一 vs 鈴木拡樹)

うん、ごめんね。太一君圧 勝(−−;)やはり、そうきました?

はい。もうこれは上弦下弦どころか、満月と新月ぐらいの差がありました。

太一君、完 璧っす。

羽生君の2015年グランプリファイナルの「SEIMEI」、2017年世界選手権の「Hope&Legacy」、2017年オータムクラシックの「バラード第1番ト短調」ぐらいカンペキです。

うーん、鈴木君も頑張ってはいたんだけど、先に太一君を見ちゃったせいもあるのかな。あらゆるセリフの抑揚、声色、動き(殺陣じゃないところも)・・・すべてが邪悪の塊(誉めてます)

特に、細かいところなんだけど、黒い扇子の使い方が秀逸。あんなに色っぽく扇子を使えるのは、やはり少年時代からの女方としての修練の賜物ではないかと思った。

ただ変なところに文句をつけると、今回、太一君と蘭兵衛役の三浦翔平君の声が似てて、天魔王と蘭兵衛が会話するシーンで、どっちがしゃべってるのか判らん瞬間がありました。ここは、二人とも同じようなトーンでがなり合うんじゃなく、甲の声と呂の声とでバランスをとるべき(これは文楽の浄瑠璃の手法である)だと思ったのだが、そういうことに造詣の深いいのうえ(ひでのり)さんがそうしなかったことに少し疑問。

・・・まあそれにしても、恐ろしいわ早乙女太一。天魔王もできれば蘭兵衛もできる。そのうち捨之介もやってコンプリすんのかな?()

ちょっと楽しみにしておこう。


蘭兵衛(三浦翔平 vs 廣瀬智紀)

まず、三浦君の美貌にびっくり。(ほう/感心)

テレビドラマとかでちょろっと視たことがある程度の俳優さんですが、大変イケメンなのは知ってました。演技力の方は、テレビドラマと舞台とではメソッドが全然違うのでいつも判断材料にしていない。

だが今回、遠くから見たときのたたずまいまでもがべらぼうにイケメンなことに感動。

スタイルという意味ではまず捨之介の福士君がこの座組では最強(身長183センチ!)なわけで、その彼とツーショットで会話するシーンの多い蘭兵衛としては、スタイル負けするわけにはいかないのですが、そこらへんはしっかりと配慮されていたようです(三浦君は181センチ)

そして、セリフ術(これに関しては上にも書いたように、太一君との対比がいま一つうまくいってなかったのが残念。ただ、太一君に比べて発声力がほぼ劣っていなかったところは重畳でした)も二重丸。

さらに、立ち回り技術も合格。

ステキな蘭兵衛でした。

・・・となると評価するのがツラいのが廣瀬君。

頑張ってはいたよ?・・・うーんでもね、まず羽織着流しという蘭兵衛独特の出で立ちでの立ち姿がいまいち。

着物を着て江戸時代(直前)の人なんだ、ってのを意識しすぎてたかと思う。意外と蘭兵衛ってね、普通にスラッと立ってていいんだよ。そういうキャラだから。

ぼくはそういう、登場シーンでのインプレッションを引きずっちゃう客なので、ちょっと残念に思いました。要所要所では良いお芝居をしていただけに、残念でした。


兵庫(須賀健太 vs 木村了)

須賀君、大人になったなあ(『人にやさしく』世代の典型的感想)

ところで今回、兵庫役の俳優と極楽太夫役の女優のはなはだしい(コラ)年齢差について、いのうえさんの見解をお聞きしたいところ。パンフレットに書いてあるのかしら?まだ読んでないの実は。あとで読んどこう。

というわけで、困った()ことに、兵庫と霧丸の区別がつかないおばさんには。←

なんでこういうキャスティングにしたんだろうかなあ(愚痴なの?)

ちょっとツラかったです。うん。

(えっ?感想これだけ?)


霧丸(平間壮一 vs 松岡広大)

ほんに今回は、下弦チームはほぼ2.5次元俳優で固められていて、ぼくは初見の俳優さんが多かった(極楽と家康、贋鉄斎と新感線メンバーは除く)

松岡君もその一人で、なのでむしろ何の先入観もなく観ることができたのだが、非常に元気があって口跡も良く、宮野君とのバランスも「主人公と少年の兄弟分的友情物語」としてぴったりきていた。

正直、上弦チームは演者の年齢バランスがおかしかったんだよな。霧丸より兵庫や捨之介(!)の方が若かったりして。

平間君のことを初めて観たのは地球ゴージャスの『The Love Bags』で、よく体が動くのは知っていたが、セリフ術の方は残念ながらもうちょっと。こちらも、霧丸と兵庫が一緒にいるシーンでは、どっちがしゃべっているのか判らない瞬間があり。

おばちゃん、耳が衰えてきたのかしら(悲)

というような感想です。


極楽太夫(高田聖子 vs 羽野晶紀)

新感線クラスタを逃がさないためのキャスティングだな?(←やらしい)

それにまんまと嵌ったぞおいらは。←

母性の聖子ねえさんに、年齢を感じさせぬ化け物(失礼)ハノアキ、という感じでした。

いやーそれぞれ懐かしかった(こういう感想で正しいのか?ダメだろ・・・)

信頼と実績のお二人でありました。

うん、これ以上余計なことは言わん!(←逆に失礼な感想)


狸穴二郎衛門(渡辺いっけい vs 千葉哲也)

いっけいさん、楽しそうだったな(笑)

古巣ですもんね。

ただ、ぼくはいっけいさんがいたころの新感線は生で観たことがない。

ぼくにとってのいっけいさんはNODA MAPの人だったから。

でも、未だに『阿修羅城の瞳』の祓刀斎は最高傑作として思い出される(なるしー(池田成志)と間違えてたくせにそ、それを言うな(汗)

千葉氏はもともとTHE・ガジラの俳優さんだがそれは観たことなくて(おい)新感線作品にもよく出てこられるのでそこでは印象に残っている。だが実はターコさん(麻実れい)の緑川夫人の『黒蜥蜴』(2006年)で明智小五郎をやられてたのがすごく良かった記憶があり、それ以来ちょっと気にしている俳優さんではあります。

二郎衛門は上置きになるようなベテラン俳優さんが、若い者の邪魔をせず()それでもちょっとだけ面白いことをやってもいいという役なので、あんまり目立っちゃうのは逆に良くない。

そこはお二人ともさすがに心得ておいででした。

うん。甲乙つけがたし。


贋鉄斎(市川しんぺー vs 中村まこと)

猫のホテルのメイン俳優対決(笑)

しんぺーちゃんがのどつぶしててしんどそうだった。福士君へのツッコミすぎだったらしい(苦笑)

中村氏は手練。

でもなんかちょっと二人ともかわいそうというか、贋鉄斎は「小劇場界でのベテラン俳優のごちそう役」みたいなとこがあると思うので、今回のお客さんたちに猫ホテが知れ渡っているとは思えず、出てきた瞬間に笑いが起きるようなオイシイ思いをさせてあげられず残念に思いました。


渡京(粟根まこと vs 伊達暁)

これは伊達君が可哀相すぎる。

“裏切り渡京”は粟根さんの超当たり役なんだから、同じコスチューム同じ髪型同じキャラ設定でやらせるのはハンデありすぎ。

伊達君独自のキャラづくりでやらせてあげれば良かったのにと思いました。



で、今キャスト一覧をつらつら見ていて驚いたのだが、ぼくはてっきりメイン以外の人たち(無界里の女たちや関八州荒武者隊、鉄機兵など)は共通出演かと思ったら、全員違うんだね。そらそうだ、あんなハードなアクションを全公演でやってたら体がもたない・・・と思ってたら、なんと、一人だけ両方に出ているお方を発見。


服部半蔵(安田桃太郎)

すんげええええ(感服)

けっこう立ち回りのある役だぞ?

恐れ入りました。





さて、最後になっていやらしいことを話題にするが、今回、なぜか(って失礼)下弦の方がチケ難でした。

声優さんやら2.5次元業界さんやらとはあまり接点のないぼくには不思議だったんですが、ぼくに言わせればメインのイケメンキャスト5人のスキル的には、上弦チームの方がレベルが上だったので釈然としなかったんです。

例のシーン(とは?)までは。

「例のシーン」とは、このチャンバラだらけの『髑髏城の七人』の中でも最大の見せ場である、「刀を研ぎながらの100人斬りシーン」です。

このシーンの出演者の身体能力が、上弦と下弦とで甚だしく差があったわけ。

福士と宮野、平間と松岡、市川と中村の、誰の間に身体能力の差があったのかは考察しませんが(例によって性格悪いぞ)

「そりゃあ、どっちかしか観られないとしたら、下弦の方を観たいわなー・・・」と率直に思ってしまいました。

まあ他のシーンでは逆のパターンも多くあったので、平均すれば同じような感じだったんだけどさ。





というわけで、一通りこのシリーズは終了して、来月からは『【極】修羅天魔』が始まります。

新作なので、スッキリした頭で観に行かないとストーリー追うだけで精いっぱいになってしまうかもな。

来月からは規則正しい生活しよう・・・(いつもしろよ/叱)


もくじ前回てくてく次回てくてく
ておどる 【昔書いていた日記はこちら】Kin-SMA放言