てくてくミーハー道場
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2018年02月10日(土) |
ミュージカル『マタ・ハリ』(東京国際フォーラム ホールC) |
むちゃくちゃワイルドホーンやった。←
どうでもいいけど、最近ワイルドホーンだらけじゃねえか?ニッポンミュージカル界(←文句?)
い、いえそんなことはありません(しどろもどろ)
正直、ワイルドホーンの曲って、一曲一曲全力投球すぎると思う。
役者も疲れるが、客も疲れる(いきなり批判?)
と思ってるんですが、今回はなぜかその「全員歌い上げるべし」ワイルドホーン節が、一周回って面白かった。
多分、お話の題材のせいだと思う。
第一次世界大戦中の「明日をも知れぬ」混乱と不安の中で、登場人物全員が本意気で生きている。その緊迫感が、いちいち歌い上げるワイルドホーン節とマッチしてたんだと思う。
平凡で地味な人が、一人も出てこないお話でした。
・・・アンナ(マタ・ハリの衣装係の女性)がその中では一番地味っぽいかな。でも、そんな彼女も心の内にはパッションが渦巻いてるてのが分かる第二幕である。
もう、出てくる人全員、「私は命がけで生きてます!」的な自己主張が強くて、逆に面白すぎた。
だがその中でも、今回ぼくが一番喝采したのが、
佐藤隆紀 as ジョルジュ・ラドゥー
である(≧∇≦)
ラドゥーみたいなキャラがぼく好み(←変態)てのもあるんだけど、ストレートに、歌の上手さで感服させていただきましたm(__)m
まさにワイルドホーンを歌うためにあるような声のシュガー君。
もー大好き!(どさくさにまぎれて告白)
なんというイケボであろうか。基礎ができてる人ってすばらしい。
言外に加藤和樹をディスってるみたいになってしまったが、そんなことはない。
今回はカネも時間も都合がつかず和樹君のラドゥー(Wキャストなのである。加藤和樹を売り出す気満々である←コラ)は観に行けないのだけど、今日観た印象では、佐藤ラドゥー×加藤アルマンの組み合わせが王道なんだと思う。
もし加藤ラドゥー×東アルマンの方がものすごい化学反応起こしてたらぼくの負け(?)だけど。
そしたら多分その組み合わせで再演されるであろうと期待しておきます。
それよりそもそも和樹君はここにいる誰よりもイケメン(おい他の出演者に失礼だぞ)という最大の武器を持っている。
歩く2.5次元、動く実物大うたプリ(例えが・・・)
今頃『レディ・ベス』の話をして申し訳ないが、和樹君のロビン・ブレイクは、「少女漫画の登場人物がそのまま動いてるよー」としか思えなかった。まじ卍(←ムリして若ぶるな!)
歌も実はそんなに悪くない。アルマンとしては大変良かった。
シュガー君と並べちゃうとアレってだけで(おい/叱)
冷徹なラドゥーもいつかは観ておきたいところだが、和樹君の美貌はアルマンを演るためのものって気が100%いたしました。
実は、ストーリーももっと重苦しいものだと思っていた。題材が題材(戦争中のスパイが主人公)だからね。
だけど、題材が題材(マタ・ハリ)だけに、予想以上にめちゃくちゃ華やかだった。そして、切なく熱いラブストーリーだった。
ラブストーリーには冷たいぼくでさえ、この作品は素晴らしいと感じたのは、やっぱ登場人物たちが「ぬるい」生き方をしてないからなんだろうな。その意味でぼくはある種のサディストなんです。これは白状しておきます。
けどもう一つには、ちえちゃん(柚希礼音)がマタ・ハリを単純になよなよした「なんだかんだ言って恋愛至上主義の女」として演じていなかったことが大きい。
マタ・ハリのアルマンへの愛は、「女が男にすがる」ようなものではなかった。
それは、脚本上そうだったのかもしれないし、ちえちゃんがそういう女にはとうてい見えないからってのもあったかもしれない(・・・こら?)
どっちにしても、ちえちゃんのマタ・ハリを形容する単語は、「堂々としてる」以外に見つからない。
ヨーロッパ中の人々の熱い視線を集めた蠱惑のダンサー“マタ・ハリ”に、ちえちゃんの迫力ある肢体ほどふさわしいものがあったであろうかっ(知ってたけど、何なの?あの脚の長さ!!!)
そしてダンス力の大勝利!
それだけじゃなく、歌もとても良かった。
ちえちゃんは声がハスキーなので声域がせまいんじゃないかと勝手に思い込んでたが(現役時代を思い出せ。そんなことないだろ?!)、今回、男役OGにありがちな「不自然なファルセット」を出してなかった。これは演出家つうかワイルドホーン先生のご配慮なんだろうか? ちゃんと本人の声に合ったレンジで、なおかつちゃんと女性の声になっていた。
なので、マタ・ハリの役づくりに違和感がなく、スターらしい威風堂々さがありながらもちゃんと女性らしいたおやかさもあって。
そらそうと、今ぼくは帯ドラマ『越路吹雪物語』を視るのが毎日の楽しみなんですが、マタ・ハリとアンナは、コーチャンさんと岩谷時子さんの関係性に似てるような気がした。
もしくは『グランドホテル』のグルーシンスカヤとラファエラのような。
アンナがマタ・ハリに「ただの衣装係のくせに!」とひどい言葉を投げつけられるシーンがあるのだが、それに敢然と反論(?)するアンナの歌「Through You」が良かった。
歌自体もだけど、なんつってもたっちん(和音美桜)の歌唱力のすごさに圧倒された。
今公演、正直シュガー君とたっちんの歌でグレードアップしてるといっても過言ではない。
(以下ネタばれ)
アンナがマタ・ハリにとってどんだけ大事な存在なのかが分かるシーンがラストシーン。
マタ・ハリとアンナがショーの開演前に必ずする会話「今夜の客席は?」「大入り満員です」「批評家たちは?」「ヨーロッパ中の新聞が来ていますよ」が、マタ・ハリが処刑されるこのラストシーン直前に繰り返される。
世紀の悪女が処刑されるのを物見高く見物しようとする大衆や、彼女への悪意をたれ流す無責任なマスコミの姿を実際には見せずに、この会話でくっきりと示す秀逸な脚本であった。
と、ここまで褒めまくってきたが、実はちょっとした不満もある公演だった。
これまた楽曲についての不満なのだが、コーダがこっちが思ってるよりも1拍少なく終わっちゃってるナンバーが多いのだ。
言葉で説明しようとすると難しいのだが、要するに、ワイルドホーンらしい歌い上げ〜〜〜!!!の後に、1拍タメて「ジャン♪」で終わってほしいのに、その「ジャン♪」がないか、もしくはその1拍前に「ジャン♪」が来ちゃうのだ(・・・わ、わかります?/不安)
なので、すごく拍手しづらい。
わざとショーストップを避けてるのかと思うぐらい、拍手入れるスキを与えない演出がたびたび見られた。
演出の石丸さち子さんのさりげない主張なのかもしれないが、はっきり言ってフラストレーションでしたぞ。特に第一幕。
凝った見せ方(そのシーンの中心となる登場人物から離れたところで、関係ない人物がさりげなくリンクした動きを見せたりする)が多い石丸演出はけっこう好きなんですが、この“音楽上のリズムの気持ち悪さ”はぼくはちょっといただけなかったっす。
ドイツとフランスの国旗を模したカーテン使いとか、面白くて良かったのになあ。
まあ、何にしても、ぼくがお金と時間の余裕のある時にぜひとも再演してほしいと思いました。もう一回観たい。そんな舞台でした。
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