てくてくミーハー道場
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2017年03月11日(土) |
NODA・MAP第21回公演『足跡姫−時代錯誤冬幽霊−』(東京芸術劇場プレイハウス) |
3月11日です。
6年前の今日、いや正確には6年前の明日からの数日間または数週間の日本では、直にひどい目に遭っていた人たちとはまた別に、“拠り所”を失った大勢の日本人が右往左往してましたね。
ヒマがあれば劇場へ行っていた当時のぼくも、翌日(土曜日でしたよね)以降、何も起きてなかった時に立てていた予定をすべてキャンセルし、自分たち夫婦と親の生活を維持することに奔走していた。
そして、故郷ふぐすまが直面した重大事故に対し、何もできぬ無力感と不安を募らせていた。
それでも人間とは薄情なもので、一週間も経つと、テレビの向こうの人たちの苦しみは、ちょっとばかりのお金を寄付することで償った気になり、自分たちの生活を元通りにすることに関心が向いていった。
ぼくが震災後に最初に観た芝居は何だったのか、この日記には書いてないので(PC開ける気力もなかった。電気とかそういう問題以前に)今ちょっと思い出せないのだが、もしかしたらNODA・MAPじゃなかったかな、と今思い出している。
もしかしたら別の芝居だったかもしれないが、少なくとも3.11の余韻の中で観た芝居の中で、一番強烈に覚えているのがNODA・MAP第16回公演『南へ』だった。
あのとき数日間の休演(これは劇場の安全確認作業のための休演だったので、いわゆる自粛ではなかった)の後、上演を再開した野田の、演劇人としての依怙地さに賛否両論だったことを鮮明に覚えている。
だがそれよりももっとぼくを驚かせたのは、『南へ』が、地震をモチーフに使っている芝居だったことだ。
「非常時にチャラチャラ芝居なんてやりやがって」などという朴念仁への反論は簡単にできる。
だが、よりによってその芝居の題材(の一部に過ぎないのが観進めるとわかるのだが)が「地震」
とんでもない野郎だな野田秀樹(お察しとは思いますが、十八代目中村勘三郎の声で再生してください)
もちろん偶然の一致だったのだけど、最も自粛派の口撃に晒されそうな内容の芝居を、頑固に(いや、だからこそか)再開した野田秀樹って、ほんと野田秀樹だなあ(何のこっちゃ)とうなった記憶がある。
もちろん、芝居自体もめちゃくちゃ面白く、上演時期と一切関係なく「相変わらず尖ってるな」と感心させられた。
さて、全然今回の芝居の話にならないけれども、結論としてはいつもどおり面白かった。
「いつもどおり」って感想は、多分野田は気に食わないだろう。
でも、本当にいつもどおりだったんだからしょうがない。
とか言っといて、そういえばぼく、前回の『逆鱗』は行かなかったんだった。
家庭の事情で観劇本数を減らしていた時期だったのでごめん。確かNHKかWOWOWの放送は録画してある(でもまだ視ていない←)
今回の出演者は、NODA・MAPの二大レギュラー女優その1の宮沢りえ(その2は松たか子)、そして『キル』『エッグ』『南へ』で、すっかり野田のお気に入りになった妻夫木聡を中心に、古田新太、佐藤隆太、池谷のぶえ、鈴木杏、中村扇雀、そして野田。
えっ? と思ったのが鈴木杏で、何と初NODA・MAPとか。
ええ? 前に出てたよね? と思ったが、どうやら『元禄港歌』でりえちゃんの“妹分”をやってた記憶が勘違いのもとだったようだ。あと、『MIWA』に出ていた井上真央と何となく混同していた。すまん。
さて、そもそも今回の公演は、勘三郎へのオマージュだと方々で(?)野田が吹きまくっていたので、最初からもうその気合満々で観始めたのだが(ブッキーの役名が“サルワカ”だし)、それもあるけど、やはりいつもの野田全開だった。
権力への反骨心は漲りまくっているし、アウトローへの愛はダダ漏れだし、もうゴーゴーカレーのメジャーカレー並みのボリュームなのである(←意味わからん)
そして、ラストシーンの“サルワカ”のセリフは、「待ってました!」というよりも「よくも最後の最後まで待たせてくれたな」と言いたくなるような待望のセリフ。
ひねくれ者(おいこら)のくせに、ここだけは期待通りにしてくれたんだ、と、奇妙に複雑な気分ではありました。
そんで、こんなに熱演大奮闘してくれたブッキーには申し訳ないのだが、“サルワカ”は勘九郎がやってくれてたらもっと泣いたのに(いや別に泣きに行ったわけでは)と思った。
(2月はどっちにしろ出れなかったよな)
いっそのこと、勘九郎とブッキーの二役にして、“三、四代目出雲阿国”も大竹しのぶと宮沢りえのダブルキャストでも良かったろうに、などと空想がどんどん膨らむのであった。
あまりにも身内感が過ぎるか。(←正気に戻った)
まぁそんな、“賑やかなお通夜”みたいな芝居も時にはいいじゃん、と思わせるような人だったから勘三郎は。
良い手向けだったに違いないと感じました。
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