てくてくミーハー道場

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2016年04月21日(木) 『グランドホテル』RED team(赤坂ACTシアター)

今回、主な登場人物がRED teamとGREEN teamのダブルキャストとなっており(なので、組み合わせが変わるということはない)、それだけでなく演出も要所要所変えてあるという凝った上演だったので、まんまと乗せられて()両方を連チャンで観させていただきました。

まずは、RED team。

まず、チーム云々の前に、ぼくは“伝説の”日本初演(トミー・チューン演出による宝塚歌劇団月組公演)と、その2年前の来日公演(これもトミー・チューン版)を観ていないのですが、その後、2006年に上演されたグレン・ウォルフォード演出版を観ています。

今回の演出はトム・サザーランドで、演出によって本当に印象が違ってくることを実感。

しかも、グレン版は確か二幕ものだったと記憶してるのだが、今回は一気呵成(?)の一幕もの。

でも確かタカラヅカ版もショーとの二本立てだったので、もともとそんな長々とやる作品ではないんだろうな。

一晩のうちに登場人物たちの人生がガラッと変わっちゃう、という話だから。





さて、細かい感想を書く体力が今ないので(理由は明日の日記で明かしますのだ)、大きく印象に残ったところだけを書いていきます。


まず、伊礼彼方 as ガイゲルン

上々吉。

これぞ(観客の望む100%の)ガイゲルン。

端麗なルックスに艶のあるバリトン、そして貴族然とした佇まい。

ずるい。←何が?

生まれつきこんなカッコいいなんて、ずるい。

・・・いやいや、もちろん、生まれ持った素材の良さに本人の努力の結果が加わったからこその完璧な男爵だったのだと申し上げますが。

ただ(おや?)、これはそもそもガイゲルン自体のキャラ設定に問題があると思うのだが、フレムシェンにええカッコして振り回してるくせに、あっさりグルシンスカヤに惚れてしまうこの男。いつ、どのようなきっかけでグルシンスカヤに心奪われたのかが若干分かりにくい。


もちろん、草刈民代演ずるグルシンスカヤ自身が、ものすごーく美しいのは分かる。

もうとにかく「ザ・プリマドンナ」なのだ。

本物感ハンパない。(だって、本物だし)

ああもうホント、しゃべらなければいいのに(おいっ!!!)

歌わなけれ(もう黙れ!)


真野恵里菜 as フレムシェン

本当に知らない子で、歌は普通に上手だし最初は違和感なく観てたのだが、「I Want To Go To Hollywood」あたりから、

「ひょっとして48グループの子か?」

と、そのアイドルくささを嗅ぎつけてしまった。アイドルであることは正しかったが、48ではなくハロプロだった。

だからといって何か違うわけではないが。

いや、下手とかそういうことではなく、独特の「アイドルくささ」が気になった。

フレムシェンて、まあ、若い方のヒロインではあるんだけど、いわゆるビッ○なんだぞ。かわいいだけじゃダメだ。

アイドルが舞台に出ること自体を否定しているわけではない。単純に、「フレムシェンというキャラクターになれてない」ということだ。


成河 as クリンゲライン

彼がこれまで出てきた舞台を何本か観ていて、芝居はもちろん歌えることも知っていたので、キャスト発表のときから期待はしていた。

登場シーンあたりから中盤まではトントン拍子だったのだが、後半なんとなく失速。

やっぱり、クリンゲラインのナンバーを最後まで楽々と歌いきるのは傍目よりもだいぶ難しいようだ。

申し訳ないが、早いとこアッキー(中川晃教)版を見たいと思った。

あとね、成河クンは元気がありすぎて先が長くなさそうに見えない。←


土居裕子 as ラファエラ

グレン版を観たとき、ぼくが一番感情移入したのがこのラファエラだった。

別にぼくがレズビアンだってことではなく(だいぶおばさん寄りのおっさんという性別不詳なところはあるが)、絶対ムリな恋心を永久に封じ込めて生きている中年女性というところが痛々しくて悲しくて。

もし、これが「男性の雇い主に秘めた恋心を抱いている男の使用人」だったら、そんなに痛々しいと思わないのだが。

性差別かしら?

ところが、その痛々しさは、もしかしたらグレン版でラファエラを演じていた諏訪マリーさんの力によるものなのかな、とふと今回思った次第で。

土居さんのラファエラは、あまりその悲しさを感じさせず、彼女はずっとこのままグルシンスカヤのそばにいて、報われなくてもそばにいるだけで幸せに生きていくんだろうな、みたいに思わせた。

なんとなく、暗さを感じさせない、ちゃっかりしたラファエラだった。

土居さんの声のせいかな?


吉原光夫 as プライジング

迫力があって怖いセクハラ社長。ハマリ役(←ほめ言葉です!!)

この一見強そうな男が、どんどんうまくいかなくなる人生の坂を転げ落ちる感じが、“観客はドS”セオリーにピタリ嵌って快感だった(ドSはお前だろ)

強面だからこそ、「手を洗わせてくれ」のセリフがあんなにも哀れに響くのだ。


佐山陽規 as オッテンシュラッグ

傍観者でありストーリーテラー的な「ドクター」だった。冷たい、乾いた視線で登場人物たちを俯瞰している。

エリックに、出産で苦しむ妻のためにモルヒネを都合してくれ、と請われて冷たく拒絶するのだが、「赤ん坊に悪影響がある」と付け加えるセリフで「本当は情のある人なんだな」と思わせた。





さて、Wキャストじゃなくて両方に出てるんだけどかなり重要な役二つ。

藤岡正明 as エリック

エリックって、「ちょっといい端役」みたいに思ってたんだけど、かなり重要な役だよね。藤岡くんの力のなせるところなのかもしれないが。

電話の向こうの声が実際には聞こえないのにそれと会話するテイでセリフを言うっていうのは、技術的にはさほど難しいわけではないとは思うが、その独り言みたいなやりとりで(言い方!)観客を感動させるっていうのはさすがだと思う。


スペシャルダンサー(死)as 湖月わたる ←やっぱ字をデカくしたか。

他の演出でも、この『グランドホテル』には「死を象徴するダンス」が出てくるのだが、それは確か男女(ジゴロと盲目の伯爵夫人)ペアでのダンスだったと思う。

グレン版ではプロのソシアルダンサーがやって、ダンス力のレベルの違いにびっくりした記憶がある。

わたちゃんがやったこの役は、どっちかってと『ロミオ&ジュリエット』に出てくる“死”のイメージ。

そして、『蜘蛛女のキス』のオーロラのイメージ。

ダンス力は当然のこと、無表情とゾッとするような笑顔との使い分けがもうぼくら観客のツボをヒット!

トム、日本の観客の好みをよーわかっとる(笑)

ほぼセリフがないんだが、ビッグナンバー「The Grand Parade」の中で一言だけ「人を捜しているんです」と言う。

彼女が“捜す”人とは、どういう人のことなのか。

意味が判ったときの怖いことといったら!

セットの階段がぐるりと回ったときに、(ここネタばれっす)ある人物を指差してニッと笑うその恐ろしさ。

今思い出しても震えがくるだよ。





うわあ、結局こまごま書いてしまった。

そんだけ楽しめたということです。ありがとう、トム。


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