てくてくミーハー道場
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2015年03月21日(土) |
宝塚歌劇団雪組公演『ルパン三世−王妃の首飾りを追え!−』『ファンシー・ガイ!』(東京宝塚劇場) |
通常、新トップのお披露目公演というのは、新トップさんのファンはともかく、組ファンやぼくのような「平均的にどの組も好き=歌劇団そのものをゆるく好き」な客は前トップのサヨナラ公演疲れ()を起こして若干フィーバーダウンするものなんですが、今回の公演は、日本いや世界的にも永年熱狂的な人気を誇る名作『ルパン三世』の劇化とあって、もーチケットとるのホント大変でした(←)
そして、だからこそ、「粋でワルくてエロくてキザな」主人公を、すみれの園のお嬢様が演じられるのかよ? という原作ファンの心配たるや半端なかったことも見逃せません。
で、観た結論から先に書きます。
小柳奈穂子、でかした。
そんで、
早霧せいな、よくやった。
実家にコミックス初版全巻(『新ルパン三世』も含む)を保管してあるおばさんは満足です。
そりゃあさ、さすがに「エロ」はありませんでしたよ。すみれの園ですから。
方向性としては、“ジブリ版ルパン”と揶揄され、一般人気はトップを誇りながらも原作ファンからはモヤつかれた『カリオストロの城』にだいぶ近いです。
クラリス≒マリーちゃん(=アントワネット)です。
元来のルパンらしからぬ、清らかな少女に優しいルパンです。
でも、時代が下って来るにしたがって、ルパンの性格も徐々にこうなってくるのはやむをえないのかもな、という昭和生まれの諦めもあるのです。
(逆に、最近のルパン(映画の『コナンvsルパン』とか、テレビ版スペシャルとか)をもう観ていない身なので、実はもうよく解ってないのです)
そんなことより(そ、そんなこと?!)、乙女系の旗手・小柳奈穂子の、ミーハー客のかゆいところに手が届く作劇っぷりに、今回も十分喜ばせてもらいました。
以下、肝心なところまで完全にネタばれいたします。
期待通りのシチュエーションでの始まり方(いかにもルパンが狙いそうなお宝の展示会場に、早速銭形警部率いる警察官集団待機)、期待通りのルパンの登場の仕方(次元と二人で変装→正体バレる!→銭形が叫ぶ「待ぁてぇ〜!ルパァァアアン!」)、
そして、
あのテーマ曲!(チャチャッチャチャッチャチャッチャチャーーーン!♪)
劇場全体の温度がぐあっと上がるのが体感できました。
これだよこれだよ! これを待ってたんだよ!!q(≧∇≦)pきゃ〜!
このテーマ曲そしてBGMの使用を決意し大野雄二先生にお願いした奈穂子ちゃんと歌劇団、そして許可してくださった大野先生に心から感謝。
このテーマがなけりゃルパンじゃないです(『カリオストロの城』ではなかったけど、あれは全編大野先生が音楽を担当されていたので無問題)
もうここまででおいらは大満足したのですが、お話はまだプロローグです。
秘宝の力で18世紀フランスへタイムスリップしたルパン一味(+銭形)ときたら、もうこれタカラヅカの独壇場じゃありませんか。
で、まー、なんやかんやあって(急に大はしょり)、タイムパラドックスもなんのその()、アントワネットにあっさり気に入られちゃう我らがルパン。この辺の、歴史少女マンガのパロディよろしく“細かいところは忠実に、大きいところで大嘘を”という作劇の絶妙さにも感心。
ただ、(ここ、一番のネタばれとなります)ルパンがアントワネットに、
「あなたが本当に未来から来たのなら、私の未来をご存じのはず。私は将来どうなるの?」
と訊かれて、
「子供たちや孫たちに囲まれて、幸せに暮らすさ」
と答えるシーンがあり、ぼくは、ルパンが優しい嘘をついているんだと思い、ついうるっときてしまったのですが、実はこれ、“嘘”にならないのです。
えええええーーーっ?! タ、タイムパラドックスはぁ?!
と、最初は憮然としてしまったのですが、よくよく考えれば、この“アルセーヌ・ルパンの孫”という存在自体、架空じゃん。(←身も蓋もない・・・)
現実には存在しない人物が、現実にはありえないタイムスリップをする話なんですから、その時点で何でもアリ。
架空の人物であるルパンが、実在の人物であるマリー・アントワネットをこっそり断頭台での処刑から救い出して長生きさせた、なんて話自体、ごちゃごちゃ検証するほどのものじゃないのだ(←暴論・・・/汗)
とにかく、今作の勝因は、観終わって胸がスカッとした、その一点につきます。
生徒たちのキャラクターへの成りきりぶりに関しては、ぼく自身がヅカオタですから、若干点が甘いことは承知しております。
でも、少なくともちぎ(ルパン)とともみん(=夢乃聖夏 as 銭形)には、花丸上げてもいいんじゃないかな。
ともみんは、そもそも仁が銭形だったということもあり、最初から安心して見ていられたのですが、途中「銭形マーチ」(イントロにも、60年代生まれのおばちゃんはニヤニヤ)をフルコーラスで(!)歌うシーンがあり、奈穂子ちゃんのともみんへの信頼感と愛に感ずるものがありました。とても温かなはなむけだったと思います(←この辺はヅカオタだけが判ってればよろしい)
ちぎに関しては、正直、こんなにデキる子だと知らなかったので、脱帽しました。
ちぎを覚えたのは、宙組版『外伝ベルサイユのばら−アンドレ編−』でのオスカルを観たときなので、例によってすっかり路線になってからの記憶しかないのだが、このときのオスカルが、ぼくが観たオスカル(全体で見たら少ないんだけど)の中でもかなり上位に入る役づくりの的確さだった記憶がある。
本公演では「ダンスの子」的な印象でずっときていたのだが、もしかしたら、演技力的にもずば抜けているのかもしれない。トップになってから気づくのもいささかアレだが、今後この点注目していきたいと思ったことであります。
えーと、他の生徒たちに関しては、うん・・・まあ。(←おい)
現在の雪組でておどるさんイチオシのだいもん(望海風斗)は?! というお尋ねに対しましては、カリオストロという役が、名前から想像したような(なんせ、ルパンで“カリオストロ”っちゅうたら、あれのイメージ強すぎるもんな)大カタキ役ではなくて、ちょいとドジでかわいいおちょくられキャラだったので、可とか不可とか判断できませんでした。
まあ、可愛かったです。←
で、ショー『ファンシー・ガイ!』の方なんですが。
(ん? また例の行空け)
ええ。三木(章雄)先生、過去の傑作をレンジで温め直して出してきました。(こ、こらっ/汗)
ファンシーシリーズで人気のあったあの場面この楽曲、再度観れて嬉しいわ、というオールドファン、これらのシーンは初めて観るけどステキ!と喜ぶ若いファン、そして、そのどっちでもない微妙な気分にさいなまれたあたし。と、お客さんの反応がバラけてた印象れす。
特にぼくとしては、「あの、今も記憶に残るあの名ダンス」の劣化版(←怖くて濃く書けない)を見せられたような気分がして、ちょっと悲しかったです。
今冷静に思い出してみると、そんなに劣化してたかしらん? とは思うんですが、観た瞬間になぜかそう思ってしまったの。
“ダンスのちぎちゃん”のはずなんだけどなあ。ていうか、ちぎちゃんというより、今回の雪組生たちが初演の方々に比べてスケールダウンしてたというか、組子全員で客席に押し寄せる熱気をかもし出せてなかったというか。
歌唱力も、だいもん先生だけが頼り(他の子たちが弱すぎる)だし。
娘役(というか、女役)には普通にうまい子はいるんだけど、「ザ・歌姫」ここにあり!っていう存在を活かせてなかった気がしました。
どうもここんとこショーで「今回のショーは名作だわ!」と満足できるような作品に当たらない。
ショー作家の先生方、がんばってください。
なんといってもやはり、ショーこそ、レビューこそ、宝塚歌劇団のレゾン・デートルなんですから。
ともあれ、雪組の今後には粛々と期待。
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