てくてくミーハー道場
もくじ|前回てくてく|次回てくてく
2015年02月09日(月) |
『ラ・カージュ・オ・フォール −籠の中の道化たち−』(日生劇場) |
これぞ、ぼくが一番待ち望んでいたいっちゃん(市村正親)の完全復活。
完璧なアルバン、完璧なザザでした。
それにしても、この作品の脚本がぼくはほんとーに好きだ。
『ラ・マンチャの男』と双璧を成す、「人生に躓いたとき、迷ったときに観るべき」名作だと思う。
おかまが主人公のドタバタコメディだと思って観ず嫌いでいる人が、ほんと可哀相。
しかも、とびっきり楽しいときてる。
アフタートークで塩ちゃん(指揮の塩田明弘氏)も言ってたけど、この作品ほど、内容と音楽とダンスの必然性とクオリティが釣り合ってる作品は、実はめずらしい(歌だけ、とか、ダンスだけ、とかに偏ってる作品が意外に多いから)
ちょっとだけ残念だったのは、総裁(鹿賀丈史)の呂律のあやしさ。看過できないほど、「・・・?」となってしまうところが何度かあって、ハラハラした。
唄になると全然大丈夫なんだけど。
・・・単純にお歳のせいなのかしら? それとも、まさか、何かご病気・・・? すごく心配です。
いっちゃんと総裁のアルバンとジョルジュが二人っきりで舞台にいる姿なんて、本当に何十年も連れ添った夫婦感が出てて、じんわりと心が温かくなれるものがあるだけに、このコンビで今後もずっとやっていただきたいので、気がかりです(まあ、昔「このコンビは今回で最後!」なんて言ってたけど、結局復活した◎※★〓ムニャムニャ・・・)
あと、ジャン・ミッシェルのバッチ(相葉裕樹)、この子を観るのは初めてではないんだけど、何か今回、
「おやおや? こんなにセリフも歌も××(褒めてあげられないので伏せます)だっけ?」
と思いました。
いや、そーんなにお下手(←伏字の意味なし!)というわけではないんだけど、何しろ動きがぎこちなすぎ。
東宝ミュージカルデビューは時期尚早だったのかもしれん。
アンナのみなこ(愛原実花)がお芝居も歌も、もちろんダンスも上手にスルスルこなしていたので、余計に目立ってしまった。
でもバッチには、無敵の「声優声」()がある。この美青年声に演技力が備われば(←今備わってないって言ってるような・・・)、既に備わっている美ビジュアルと共に鬼に金棒であろう。がんばれ。
他の出演者の方たちは、前回公演からの続投の人たちばかりで皆さん堂に入っていて、何も言うことなし。
“ハンブルグのハンナ”の美尻にも見とれてしまいました(≧∇≦)いや〜“まじ”でマジー(真島茂樹)すごいっす
しかし、本気でカジェルたち皆さんの可愛さは異常。
タップからカンカンからロケットまで、徹頭徹尾全力のショーのシーンには、5×歳になって(しつこくてスイマセン)涙もろくなったおばさんには、もう、もう・・・(;;)みんなよくがんばってる!
そして、『ラ・カージュ・オ・フォール』という作品について今の時代に語る以上は、忘れてはならない要素がひとつ。
もうお分かりですね。
去年から世界中が「ありのままの姿見せるのよ〜♪」と自己肯定に勤しんでいますが(口が悪いでっせ5×歳のおばさん!)、この作品こそ“元祖”「ありのままの私」主張ソングのふるさと。
ただ、ここをぜひ強調したいのは、「ありのままの私」を正々堂々と主張するためには、自分の「ありのまま」の姿に対して、責任をとらなければならないということ。
『ラ・カージュ』であれ『アナ雪』であれ、そういうことを言っているのに、何か流行の表面だけ見て、
「そうか、“ありのまま”でいいんだ!」
と勘違いしている人たちが多いのだとしたら、ものすごく残念だ。
「世界にひとつだけの花」がヒットしたときにも、「ナンバーワンにならなくていい」という歌詞をゆとり視していた短絡的な人たち(共感するにしても、批判するにしても)が多かったことが残念でならなかったのだが、去年の「ありのままブーム」()のときにも、「ま、またか(汗)」と思ったものだった。
アルバンが第一幕のラストシーンで、
「そう、ありのまま。これが私」
と敢然と宣言して去ってゆく姿は、(褒め言葉になってないが)本当にめっちゃ男らしくてかっこいい。
この部分が、言ってることは真逆なのに、『ラ・マンチャの男』でアロンゾ・キハーナ老人が、
「最も憎むべき“狂気”とは、ありのままの自分を受け入れないことではなく、あるべき姿のために戦わないことだ!」
と断言するシーンと何故か重なるのだ。
「ありのままの自分」であれ、「あるべき自分」であれ、その自分でいることが“ラクだから”そっちに逃げたい、と思っている人は、どんな自分であろうとだめなのだ。
そんな深いふかーい作品なので、ぼくにとってこの『ラ・カージュ・オ・フォール』という作品は「生涯の3本」のうちの1本なわけなのです(2本目は、さっきからちょこちょこ出てくる『ラ・マンチャの男』。そして3本目が・・・決まらん。多すぎて←)
と、誕生日の贅沢第一弾は、超Happyで幕を閉じたのでした。
|