てくてくミーハー道場
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2014年09月28日(日) |
『ファントム』(赤坂ACTシアター) |
大阪公演がまだなので、ネタばれがお嫌な方はスルーでお願いします。
去年青山劇場で観た『4Stars〜One World of Broadway Musicals〜』でしろたん(城田優)が歌う「You Are Music」を聴いて以来、今年一番楽しみにしていたと言っても過言ではない作品だったのですが。
(“が”・・・?)←悪い予感
どんなに脚本・音楽・出演者が良くても、演出次第で台無し(てほどまで悪くはなかったけど、正直がっかりの出来)になることってあるんですね。
「演出家」という人が作品の命を握ってるんだっていう当たり前のことを、実感しました。
なんつーか、感情がゆさぶられない。
あまりに淡々としている。
そして、一幕の幕切れに、スズカツ(鈴木勝秀)さんバージョンやタカラヅカバージョン(ヅカ版の演出はイットク(中村一徳)先生)のような、
「カッコええ!」
てなカタルシス(一幕の終わり方って、大事だよねー?)が全然ない。
今回の演出家は、その『4Stars』を演出したダニエル・カトナー。たぶんぼくは彼が前回演出した『みんな我が子』も観てるはずだけど、正直、内容をさっぱし覚えていない。
ぼく自身、派手なわかりやすい演出を好むので、カトナーとの相性は最悪なのかもしれない。
現代アメリカの、哲学的な家族関係の話とかが得意な人らしいからね。
とりあえず、しろたんは期待に背かぬ美しい(これは、見た目がカッコいいとかいう意味でなく、芝居がキザでない、清々しいといったような意味です)演技でエリックを好演。
歌はもちろん大合格なんだけど、ただ、前回の日本上演で大沢たかおが演じたようなほとばしる芝居エネルギーはいまいち感じられず。
大沢たかお、「歌」以外はカンペキだったもんなー。(こら!ほめてない)
しろたんて、トートのときもそうだったんだけど、「歌が上手」で「ビジュアル抜群」なんだけど、なにか・・・なにかちょっと足りないんだよな。それは何なんだろう? よくわからないんだけど。
あと、今回、すごーく期待したキャストだったのに「あれ?」と思ったのが、マルシア。
カルロッタって、ただのいじわるババアじゃないんだけどなあ。いや、それ以前に、一応「人気プリマドンナ」のはずのカルロッタが、どう見ても場末のバールの女主人にしか見えない。
気品、とかが必要だって言ってるんじゃない。でも、カルロッタって、性格は品性下劣でもいいんだけど、一応人気歌手で、「金持ちとしての生活に慣れてる」人種なんじゃないの?
生まれは貧乏人で、のし上がってきたのかもしれない。でも、今でも貧乏人に見えるのって、どうなのかな?
あ、なんか、すげーマルシアをディスってますね。ごめんなさい。
役の解釈にこだわりすぎなのかもしれませんねぼく自身が。
ただ、これだけははっきりしてると思うのは、しろたんとマルシアに共通して言えることは、日本語の発音がちょっと怪しいところかな。
それが何だかほんのちょっとモヤモヤさせる一因かもしれない。気が散るというか。
歌は上手だけど芝居がどうもモヤモヤ・・・というのは、山下リオちゃんや日野真一郎くんにも言えたな。まあこの二人の場合、どちらも「ミュージカル初挑戦」という部分が共通してる。
二人とも、歌は上々吉(特にリオちゃんは、すんごくきれいな声で、ほんのちょっとこなれてない感じが、それこそクリスティーヌそのものだった)だったので、ちょっぴし残念というか。
あと主要なキャストといえば、キャリエールさんの吉田栄作ウォーーーーーー(コラ)であるが、彼も年齢が年齢なのですでに「ウォーーーーーー」キャラではなく、落ち着いた渋いキャリエールを好演。セリフ術は出演者の中でもかなり上位にいたんですが、歌がねえ・・・。
かつて彼も歌手であったことは確かなんですが、ミュージカルってのは発声方法からして違うからなあ。
ある種『ファントム』オタ(?)のモースト萌えナンバー(おい)である「You Are My Own」があんな(ってどんなかは、実際に聴いてくださいこれから行く方)出来映えでは、思わずがっくりしたぼくの気持ちも理解していただけるかと思います。
ううん、これはどうしたら良いのか(えっ?)
今回版と前回のスズカツ(鈴木勝秀)さん演出版を足して良い所だけを抽出できればいいんだが。
そんなうまくいかねえか。(当たり前だ)
あ、最後にこれを最も主張したい。
幼いころのエリックを演じた(子役なのでダブルキャストのようですが、ぼくは今日の子一人しか観られませんでした)松井月杜くん。まさに「天使の声」!澄んだボーイソプラノに心が洗われました。
そして、幼いエリックの絶望の慟哭が「オペラ座のファントム伝説」を生んだ・・・という設定なので、かなり長い間エーンエーンと泣き続けるシーンがあるのですが、その芝居力もすばらしいものがありました。
大きくなったら、実力派ミュージカルスターとしてぼくらの前に現れるかもしれません。
楽しみにしていようと思います。
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