てくてくミーハー道場

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2013年02月09日(土) 『L'OPERA ROCK MOZART-indigo ver.-』(東急シアターオーブ)

本日開幕! というか、今日明日はプレビュー公演です。

今日はモーツァルトを(山本)耕史君、サリエリをアッキー(中川晃教)のインディゴバージョン。





まーこの作品が上演されると知った時に、誰もが思ったことだと思うんだけど、エンゲキに『アマデウス』という巨大なる名作があり、ミュージカルには『モーツァルト!』という傑作ありで、その大きな二つの壁を、この作品は越えられるのか? いささかの心配は否めず。

でも、とにかく本国フランスで大ヒットした作品だし、フランス製ミュージカルといやぁこのところ次から次へと日本人も好むロマンティックな良作を生み出してるしで、きっと期待をズタズタに裏切るようなことはあるまい。

と、先入観だらけのよろしくない客として参上。

ただ我ながら偉かったのは、上記の二人以外の出演者を予習していかなかったので、そっちへの先入観がなかったこと。

純粋にまず作品の音楽のみを味わうことができました。



そんな、まっさら(でもないか)な気持ちで受け取った『ロックオペラ モーツァルト』の作品への感想は、まず、音楽と衣裳と装置はすごくスタイリッシュでカッコいいということ。

ただ、ストーリーには『アマデウス』ほどの深遠さはない(これは、セリフだけで成立するストレートプレイと、音楽が入るミュージカルとじゃ成立からして違うのだから、比べること自体がいけないんだけど)

んで、日本のミューオタ大好き(こら)なクンツェ&リーヴァイ作品の『モーツァルト!』と比べますと、第一、アッキーが出演してる時点でイメージがダブるのはしゃーない(だから、わざとアッキー=サリエリの方を選んだのだ。・・・いや実はもちろん両方観たかったんだけど、時間的金銭的事情があって叶いませんでした)

主人公・ウォルフガング=モーツァルトの描かれ方は、『モーツァルト!』まんまで、これは現代の研究家がモーツァルトの性格をほぼこういう具合のはねっ返りで享楽的な天才だったとしているので、変えようもないんだろうが、話の進み方が(まぁ史実だからしかたないんだけど)あまりにもダブっているので、心配になった。

あれだけの傑作があるのに、改めて似たようなものを作る必要があるんだろうか? と。

まぁ例えば、『モーツァルト!』(以下何度も出てきてめんどくさいので、『!』と表記)ではコロレドにサリエリの性格も含ませてあったり、父親レオポルドの比重がずっと大きかったりと、若干の違いもある(こっちにはヴァルトシュテッテン男爵夫人やシカネーダーが出てこない)

そうかと思うと、『!』では少年の姿をしたもの言わぬアマデがずっとウォルフガングの傍に寄り添っているのに対して、こっちでは“運命”という影がずっとモーツァルトとサリエリを高いところからずっと見下ろしている、という風に、ありがちな設定がすごく似ていたりする。

構成(特に第一幕)があまりにも似ているので、そこで歌われるナンバーもついつい比べてしまうのだが、こちらの作品では70年代プログレッシブ・ロックが主体で、『!』ほどバラエティに富んではいない。

ただ、雰囲気はすっごくカッコいいのだが、歌詞が抽象的すぎて、劇中歌というよりも、どこでも使えることを目指してるような、つまり、“一般的にヒット”するように作られたような感じがちょっとイヤだった。

これはぼくの勝手な決めつけで申し訳ないのだが、ミュージカルのナンバーって、セリフと同等のものじゃないですか。

その場面の状況や、その登場人物の心境をメロディに乗せるものだと思うんですが。

それを離れて、誰がどこで歌っても「一般大衆の共感を呼ぶ」みたいな、汎用性のある歌詞をつけるのって、なんかぼくはイヤで。

「果てしない時のかなたへ〜」だとか、「何者にも縛られずに生きてゆーきーたーいー♪」なんて歌詞、飽き飽きなんだよっ!(こ、こら・・・/震)

それと、ちょっとこれはどうか・・・? と思ったのは、モーツァルト本人の曲を使いすぎてる気がした点。

現代作家(今作のナンバーは、一人の作曲家が全部作っているのではなく、何人もの作曲家が楽曲を提供している)が作ったカッコいいロック・ナンバーはどれもけっこうな秀作なのだが、モーツァルトの曲が流れてしまうと、「結局、モーツァルト本人が作った曲にはかなわねぇ!」って気になっちゃうのだ(先入観かもしれないが)

要所要所で使うのはかまわないと思うのだが、その曲も、ちょっと、長く使いすぎな感じがする。

まぁせっかくプロの二期会のプリマ(北原瑠美)が出演してるので、長く歌わせなきゃもったいないってのは解るけど。




他の出演者さんたちに関して言うと、オタケさん(北村岳子)とコング(桑田)さんのソロナンバーがないに等しかったのが、もったいなさすぎ。役自体はでかいんですけど二人とも。

コロレドは、『!』ほどの大役ではなく、単純にザルツブルグでモーツァルト一家を苦しめた暴君という位置づけ。

アンナ・マリアは、セリフすらなかった『!』よりもずっと大きい役で、マンハイムとパリでヴォルフにさんざん苦労を掛けられる可哀相なおっかさん。

確かに出番は多かった(お母さんはナンネールお姉ちゃんより出番が多い)のだが、二人とも“歌いどころ”がないのに、こんな立派な役者さんをあてる必要があったのか? って失礼な感想を抱いてしまいました。

お母さんの分レオポルド父さんは『!』よりちょとだけ役が小さくなってはいたが、ソロはあるしやっぱり重要な役(ヴォルフにとってレオポルドの存在って大きいもんね)

だけど、うん、正直に申し上げます。

芝居はダイコン、歌は中途半端に下手だった(完全に、ではなく、中途半端に、ってとこが、ぼくにとってはこれまた「むぎゅう」って感じだった)

どなたでしたんじゃろ?(←わ、わざとらしい!/震撼)

あの・・・本当に全然知らずに観に行ったんですよ。だから決して先入観じゃないんです。

プログラムで確認して、「・・・え?」と絶句。

ん、まぁ・・・いろんな方がいるんだろうよね。あの世界にもね。(結局名前出さんのか。臆病者め)



ウェーバー一家は『!』とほとんど同じ性格づけで(ホントにこんなたかり一家だったんだか? 一応音楽一家だったと聞いたことがあるのだが)、ただ、アロイジアの役が大きくなってた。

アカネちゃん(AKANE LIV)は容姿にしろ歌唱力にしろ日本人離れしており(まぁ、半分スウェーデン人だし)押し出しもあるので、役的にでかくなったアロイジアにはぴったりだった。

そのアロイジアに負けずヒロインじゃなきゃいけなかったコンスタンツェ(秋元才加)は、最初誰が演じてるのか全然判らずに観てまして、歌がうまいしスタイルもいい、と感心してました。

AKBってほんと玉石混交なんだよな(←こ、こっちは勇者!)

え? いや大丈夫でしょ? 事実だし。(←ゆ、勇者・・・!)

ちょっと「・・・」だったのは、キムラ緑子さんがせっかく熱演してたにもかかわらず、とにかくセシリアのキャラクターが『!』の阿知波さんと丸かぶりだったところかな。



キャラクターでお見事だったのは、『アマデウス』での同役にも劣らないヨーゼフ二世。酒井敏也さんの個性バクハツだった。

ローゼンベルク。・・・わかる人にだけわかるように書きます。

次回こそマリア・マグダレーナ様に会いにいきます! お会いしたいとずっと思ってるんですが、どうしても、その・・・怯えてしまって(何でだよ?!)

あと、さっきも書きましたが“運命”・・・あの方が演る必然性って何なん?

バレエダンサーかモデルさんが演るべき役だと思うんだが?

そういう固定観念がいけないんですかね?




疑問点ばっかりでアレなんで、最後に、主役のお二人について。

(以下、ネタばれっす)

第一幕ではモーツァルト、第二幕ではサリエリに比重があります。

第一幕でのはねっかえりモーツァルトを観ながら、

「うーん、やっぱルージュバージョン(モーツァルト=アッキー)にすべきだったか」

と思いつつ小一時間。

この作品ではその辺はさして重要じゃない感じになってるんですが、サリエリってモーツァルトより年上だったじゃないですか。

アッキーって、実年齢と関係なく、どんな相手役でも「相手より年下」に見えるからねぇ・・・。

それと、耕史君はキャラ的に「はちゃめちゃなやつ」に見えない。

歌も芝居ももちろん充分満足できるレベルなんですが、やっぱどこか、その端正さが、モーツァルトっていうキャラクターの邪魔をしている感じ。

見た目はぶっちぎりにカッコよく、最盛期(どゆ意味?)のTERUみたいだったのだが。

そうそう、コンスタンツェとの結婚式での白い衣裳なんて目も眩むほどの美しさで、思わず後ろに倒れるところだった。後ろの人の迷惑になるから堪えたが(←)

さすがにあの美しさはアッキーには出せ(略!)

でも第二幕になると、サリエリの聴かせどころ続々で、それまでじらされてた分、アッキーマニアのリビドー(おい!)が爆発。

クセが強い声なんですけどね、ここが堪らんところなのよね(*^^*)





総合的に評しますと、ビジュアル面(上にも書いたが、衣裳と装置がめっさおステキ!)はすごく豪華でスタイリッシュ(ダンスもおステキ!!)で満足できる作品でしたが、歌詞世界に若干の疑問あり。ストーリーはさほど目新しい切り口はなく、まぁ「トリコになるほどでもないが、がっかりもしない」という感じ。音楽は『!』ほど傑作ではないが、全然悪くはない。

ミーハー的意見で申し訳なさ100%なのだが、アッキーが出演していることが最大の評価点。

とにかく、ぼくはもう観に行けないので、そんなぼくのために、同じキャストでぜひ再演(今から?!)をお願いします!

次回は逆のキャストで観に行って、もしかしたらもう1ターンしますので!

これから行かれる方には、絶対がっかりはしない公演ですので、ぜひお楽しみに、と申し上げておきます。


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