てくてくミーハー道場

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2012年11月25日(日) 『里見八犬伝』(新国立劇場 中劇場)

新国立劇場、上(中劇場)でも下(小劇場)でもチャンバラやってます(笑)

ぼくも両方観たかったんだけど、うっかりしてるうちに、小劇場の方は今日で千穐楽だった(´・‐・`)ショボン





さてさて、日本最古(?)の冒険サーガと呼んでも差し支えないであろう『南総里見八犬伝』

後世の日本人が、壮大な世界観の中で主人公たちが一つの目的のために旅をしながら成長していく――みたいな冒険譚を創る際の基礎知識となっていると言っても過言ではない。

かように、鉄壁の世界観、立ちまくりのキャラ、飽きないジェットコースター・ストーリーの三拍子が揃っているので、いかようにアレンジしても面白い・・・と言いたいのだが(な、何ですって?!)

いえ、今回のこの作品はちゃんと(←もっと素直に褒めろ!)面白かったです。

今頃言うのは卑怯だと重々承知しておるのですが、今回のこの舞台を演出された深作健太氏、その父君である名匠・深作欣二監督による映画『里見八犬伝』が、ぼくは実を言うと全然好きじゃなかった。

まぁそもそも、かの映画の原作となった鎌田敏夫作の小説が、滝沢馬琴による本家本元の原作の換骨奪胎以上の“改変”っぷりであったことを、ぼくが好まなかったというのが原因ではある。

この映画は、当時の角川映画のプリンセスであった薬師丸ひろ子のためのアイドル映画だったからだ。

あそこまでのアレンジには、さすがに耐えられなかった。

ま、元々ぼくだって、江戸時代に書かれた大長編を読んだわけじゃなく、ぼくたちの世代なら120%がハマったと言っても過言ではないNHK人形劇『新八犬伝』こそが“我らにとっての八犬伝”だから、1960年代生まれにとっての『八犬伝』は、“あの”『八犬伝』以外にないのである。

そのベースの上で、歌舞伎版の八犬伝(たいてい芳流閣しか出てこないが/笑)や横内謙介氏による「スーパーカブキ」版八犬伝なんかが面白いと感じて育ってきた。

『新八犬伝』の場合、何が良かったかって、やっぱり長期間にわたって放映されていたので、このサーガのサーガたるゆえんと言うか、八犬士が一人、また一人と丁寧に描かれながら登場し、その生い立ちがじっくりと描かれていた、それがたまらず良かったのだ。

それに加えて、敵方のキャラクターの魅力的なこと!

ラスボスとも言える玉梓の怨霊は言うに及ばず(阿部寿美子さんによる、迫力ある低音の「たーまずさが〜お〜んりょ〜〜〜!」という声と、辻村寿三郎氏による、他のキャラの人形よりも二回りも大きな人形が、このキャラが他のキャラクターとは一線を画していることを示していた)

「さもしい浪人・網乾左母二郎」とか、悪女・舟虫(←女の名前ですよ!)とか・・・。





ておどるさん、本題の感想を全然書かないうちに、もう1時間経ってるんですけど・・・。





うわっ!(汗)

す、すまん。

さて、今回の舞台版は、まさに平成ニッポンの若者たちにすんなり受け入れられる要素ばっちりだった。

一人ずつ、仲間を増やしていく様は、まさに「RPG八犬伝」

八犬士の中でもやはり犬塚信乃にやや重心が来てるのはいたしかたないが、八人それぞれに見せ場があり思い入れもできるという、戦隊モノ的な要素もあり。

もちろん「戦隊モノ」と言っても、昭和のソレのような、「個性的なヒーローが8人集まって、“ヤァ!”っつって悪人を倒してめでたしめでたし」という単純な作劇ではなく、「自分探し」を髣髴とさせる今風ロマンティックなテーマもかぶせてあり、現代の青少年たちに、これはウケるぞ、役者も全員イケメンだし(笑)



そして、ぼく的に(当然これを期待して行ったのだ)最高だったのが、たぁたん(香寿たつき)

もちろん、玉梓ですよね? とワキワキしながら観ていたら(こっから先、大ネタばれ!)、なんと伏姫として登場!

・・・っえ? なんですってぇ?!!(いや、伏姫も良い役だけどさ)

と、無念に思っていたら、早替わり(ってほどではないが)して次のシーンで玉梓として登場\(^^)/やった〜!(喜)

しかも、この二役は、単に「伏姫は出番少なくてもったいないから」みたいな理由ではなく(←そんな理由考えるのはおめーだけだ/叱)、「伏姫と玉梓は同一人物が演じるべき」というれっきとした理由があることが、話が進むにつれて判っていくのであった。

そんなこともあって、今回の脚本は、ぼくぐらいの年齢の者にとっては、若干「ゲーム脳向けだねぇ」という気持ちにさせられはしたが、かといって嫌悪感を抱くようなものでもなく、ちゃんと面白い出来ではあった。



他の役者たちについても、たぁたんや山口馬木也くんなどの“大人チーム”は良くて当たり前な感じだったが、八犬士+浜路、房八、ぬいを演じた若人チームも、はつらつとしていて、大変楽しめました。

八犬士たち(西島隆弘くん、加藤和樹くん、市瀬秀和くん、矢崎広くんは以前にも舞台を観たことがあります。あとの4人さんは初見)は、体がよく動くのはもちろん、セリフも達者。特に、先入観なしに(早乙女太一くんの弟だというのを知らずに)早乙女友貴くんを観ることができて良かったと思いました。突出して舞台度胸がハンパないのはすぐ判りました。

あと、浜路の森田彩華ちゃんは、なよなよした(コラ)浜路の時は学芸会アイドル芝居っぽかったんですが(おいおい、なぜ女の子にはキビしいの?)、浜路の“念”になった時の芝居には迫力がありました。

ちいさなところでは(脚本も含め)ツッコミどころがなくはなかったんですが、全体的には上出来。

特に、ラストシーン(ここは原作と全然違うんだけど、残念な感じはしなかった)

信乃が、八人の仲間たちが集結した玉の中に見た“文字”とは何だったのか。それを観客に考えさせる終わり方は、なるほど(良い意味で)RPG世代の作劇だと思いました。

面白かった。

清々しい作品でした。



蛇足。

東京千穐楽の26日は、たぁたんの○回目のお誕生日ではないですか!

うわぁ! やっぱり今日は『イエロー』(小劇場でやってたやつ)観て、26日にこっち観れば良かった!(とはいえチケットが・・・)


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