てくてくミーハー道場

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2012年10月10日(水) 東京セレソンデラックス 解散公演『笑う巨塔』(サンシャイン劇場)

セレソンの評判はかねがね耳にしておりました。

でも、何でかね、腰が引けてた。

自分でもなぜこんなにひねくれてるのかと不思議なのだが、

「笑える! そして、泣ける!」

という謳い文句に、拒否反応してしまう。

「泣ける」というフレーズが、どうしてこんなに嫌いなのか。

えーと、正確に言えば、何にも知らずに観に行って、泣けてしまった場合は、とても嬉しいんです。

良かった! この劇団、ひいきにしよう! と思うんです。

でも、最初から「泣けるから、行こうよ!」と言われると、

「いや・・・今回は(ここがポイント)やめとく」

と言ってしまうんです。



そんな中、目に飛び込んできた“解散”の二文字。

「今回限り」「あとわずか!」の煽り文句に異常に弱い主婦心理(おい)を突かれて、評判のドラマの最終回だけを視るようなマネをしてしまうわたくしなのであった。

そんなぼくを、泣かせられるのか東京セレソンデラックス。(←なにこの挑戦的な態度?)



結論から申し上げますと、思ったほどは泣けなかった。(これは、ぼくの性格のせいですよ。脚本は良かったです)

だが、主宰・脚本・演出の宅間孝行という男の、人間性の良さがストレートに伝わってくる舞台であった。

もちろん宅間氏はこれからも芝居(というか、エンターテインメント)の世界にい続けるのであろうが、彼の、“長年育んできた子供”である劇団のピリオドを、滑り込みセーフで観といて良かった。そんな気持ちになれました。





まだまだ公演中なので、公式サイトで明らかにされている以上のネタバレはしたくありません。よって、ストーリーなどの内容に関しては書かないようにしますが、まぁ、言ってみれば、「勘違いが勘違いを生んで、収集つかなくなりそうになったあげく、うまい具合に丸く収まる」という話(おい、もうちょっと面白そうに紹介しろよ!)

基本的には三谷幸喜タイプの脚本である。彼が書くほどの毒っ気はないが。

その中心にいる人物を宅間氏自身が演じている。この辺、安定の小劇場タイプである。

ただ、今回しか観てないのにこう言ってしまうのもなんだが、この、宅間氏が演じた「富雄」という男の性格というか、宅間氏の芝居の感じというか、ふとした時にすごくベイベ(長瀬智也)っぽいと感じた。

そういや、セレソンの名作『歌姫』はベイベ主演でドラマ化されましたね。

一般受けはしてなかったみたいなんだが(何しろぼくはドラマを視ないので、よく知らない)、視てた人には「大傑作」と評判だったと聞く。

ストーリーがすごく良かったかららしい。

すると、テレビ化するにあたっての演出の失敗(て言うな!)だったのかな。

それはともかく、宅間氏が描く主人公の性格または雰囲気は、概してベイベのような(公式イメージの)、男っぽくて、捻くれ感のない、純情な人物なのかな? と、今回思った。

それは、率直に申し上げてぼくが感情移入できるタイプの人物ではないのだが、そういう人に憧れがないわけではない。

こんなふうに、正面からの風を恐れなく浴びて生きていける男になりたい。(←初めて聞きましたが?!)



・・・すいません嘘つきました(また嘘か!)

だが、そんな男に憧れがないわけではない、というのは本当です。

今回は思いっきりのコメディだったので、ありえないほど早とちりな人ではあったが、強引で乱暴な一方で、単純で純情で思ったことが全部表に出るような男は、やっぱり魅力的だ。

そんな男が最後に幸せになって終わる、という作劇には、素直に「良かったね」と思えた。


ただ(ここから、悪口っすか?!)、いくら「勘違いが勘違いを呼ぶ」スラップスティックコメディとはいえ、病院という舞台で、出てくる医者や看護師たちのコンプライアンス意識の低さには若干退いてしまった。

誰がいるかわかんないロビーで、患者のX線写真をドクターとナースが一緒に見てあれこれ言うとかありえねーし(←そういう細かいことで怒んないでよ・・・それじゃ話が進まないでしょ?)

たしかに、「そうしないと話が進まない」という理由なのはわかるが、バカすぎる政治家の秘書やバカすぎるナース、人の話をてんで聞いてない人たちが登場人物中8割を占めてるってのは、どうかなーと、思った次第です。

もう少し別の、シリアスな作品も観とけば良かったかも知れない(それこそ『歌姫』とか)



とはいえ、そんな「早とちり王」っぷりを発揮する人たちながら、金田明夫さんや石井愃一さんなどのベテラン勢だけでなく、出てくる人たちみんなが“良い人”だったのが、後味良かったです。

結局、金田さんに泣かされたしね。

日本人って、こういうの好きだし、そんなメンタルを持った日本人が、ぼくも好きだ。

そんな感じの、ぼくにとって最初で最後のセレソンでした。


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