てくてくミーハー道場
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2012年07月15日(日) |
『ルドルフ −ザ・ラスト・キス−』(帝国劇場) |
わが国随一のルドルフ役者(笑)が、帝劇に満を持してご登場。
『エリザベート』という作品自体が、(ルキーニとトート以外の)登場人物=繰り人形という構成もあって、お人形のようにつるんとした造形のルドルフ君たち三人の後に見ると(とはいえ、芳雄君も最初はその「お人形ルドルフ」から出発したわけなんだが)、御歳33歳を迎えた(初日の次の日にお誕生日だったのよね。おめでとうございます!殿下)ルドルフは(本物のルドルフ皇太子は30歳で死んじゃってるけど)、大人の男の色香も芳しく(決して加齢ナントカではなく!←余計なこと言うな!)血肉のある人間として現れました。
・・・文が長すぎますか?(←そうっすねはい。)
今白状しますと、日本初演は大遅刻をして一幕目の最後の15分以降からしか観られなかった(遅刻するぐらいならすっぱと観るな! と正しいシアターゴアーはおっしゃるのでしょう。わかります。わかりますが・・・うう/涙)
なので、感想なんておこがましいものは持ってはいけないと思い、封じておりました。
一言だけ許されるならば、「当たり前っちゃ当たり前だけど、なんて陰気な話だ」と思ってました。
『うたかたの恋』という、オンナコドモ好みの(コラ)大ロマンティックラブストーリーが、タカラヅカ作品にあるじゃないですか。
恋愛大音痴のわりには、あれ、意外と好きな作品なんですよ。
盛り上げ方が半端なく上手くて。
で、この『ルドルフ −ザ・ラスト・キス−』は、恋愛劇側面にしても、政治劇側面にしても、中途半端というか、ぐずぐずした印象を受けまして。
最初の小一時間を観てないんだから当たり前だが、ストーリーがよく解らんくて、「なにこの盛り上がりのなさ」と。
ラス前の場で、マリーがルドルフの前に現れるシーンの演出に、「月9か!」と突っ込んでしまったほど、げんなりしてしまったぼくでした。
で、今回演出家が変わりまして(え? 亜門がどうとか言ってるわけじゃないよ? って、言ってるようなもんか・・・)、ぼくには“観念的”“難解”の権化のように思えるデヴィッド・ルヴォー。
いやー、tpt作品はほんまぼくには難解だった。いろいろ。
今はその話はいいとして、では今回、「やたら盛り上がる」んで有名な(こらまた毒!)ワイルドホーン作品を、「いつ盛り上がればいいの?」と難解さで押してくるルヴォーが演出するとか、こいつは見もの! と、遅刻せずに(それが普通なの!)挑みました。
前置きがだらだら長たらしいのが、ホントぼくの文の欠点ですね。
今回、一番印象的だったのは、マリー・ヴェッツェラの性格が、『うたかたの恋』のマリーと全く違ってて(多分、ヅカの方が事実と乖離してるんだと思う)えらい勝気で、当時の17歳のコムスメとは思えぬような、理屈っぽい、言論大好きな女の子であったところ。
ヅカの娘役でこんな性格当てられたら、観客の反感食らって大変な気がする。
そこは面白かったな。前回もマリーってこんな性格だったっけ? よく覚えてないが、(笹本)玲奈ちゃんはもっと少女めいた印象があった。「勝気」ってとこは一緒だが、理屈っぽい感じはなくて(いえ、決して難しいこと考えそうにないとか言う意味ではなく・・・しどろもどろ←墓穴)
ただ、「背伸びして読んでた『ウィーン日報』に青臭くて理想的な記事を書いてたステキな“ユーリウス”は“このお方”だった! なんて幸せなの!」とうっとりしてるお嬢ちゃんの恋、って感じ。
いわゆる『あしながおじさん』のジュディ?(←芳雄君の次回作の宣伝ではありません)
たっちん(和音美桜)にはそもそも“臈長けた”雰囲気があるんで(じ、実年齢のせいじゃないっすよ!←墓穴2)、そういう「絵空事の恋」というより、マリーの方がぐいぐいルドルフを引っ張って行ってる感じ。
まぁ昔から、歳の差恋愛に限って、かなり年下のカノジョの方が精神年齢はぐっと上だ、なんて申しますが。
玲奈ちゃんはエポニーヌでたっちんはファンテーヌってことだな、そういうことなんだな。
それにしても、現代のぼくらの感覚をもってしても不思議だな、と思ったのは、「庶民の娘(確かヴェッツェラの男爵位って、金で買ったんじゃなかった?←翌日追記:これはぼくの勘違いでした。すみません。とはいっても、「皇太子」と「男爵」なんて、えらい身分差には違いないよな)」のマリーが、「皇太子」に対して、あんな、対等にずけずけと対峙できるもんなんだろうか? という点。
いや、17歳の、世間知らずの勇敢なコムスメだからこそ、できたのだろうか?
でもさあ、いくら世間知らずでも、たとえばさ、学習院のご学友たち(現在のニッポンには“身分の差”は一応ないことになっているが、そこはさー)は、ニッポンのやんごとなきあの一族に対して、あんなふうに接してるもん? 知らないけど。
やっぱ一応、敬語で話しちゃうんじゃないのか?
キコちゃんは、礼宮に対して、学生時代、どんな口調だったのだろうか?
キコちゃんはともかく、ずけずけしてる子ほど、やんごとなき男子は、「ドキ」っとしたり「ズキュン」としたりするのだろうか?
本当のマリーって、どんな子だったんだろうなぁ? と、未だに謎に思ってる。
考えてみれば、29歳の妻子持ちだったんだからねルドルフって。
そんなのに(「そんなの」って、あーた)恋する17歳処女。
薄汚れたおばさんには理解できない(←お前の好みなんか知るか)
いや、そんな「大人の男」で、さらに身持ちが悪くて(これは男には使わないか)女遊びが激しかった。ストレスが半端なかったのもあって。
そんなワルな男に魅力を感じるオトメも広い世間にはいるかもしれん。
だけど、そこに「皇太子」なんていうめんどくさい枷が加わったら、普通だったらますます退いてしまう気がするのだが。
そこを納得させてもらえる作劇ではなかった。(あ、やっと本題に入りましたね)
ルドルフの方の心理もそうだ。
『うたかたの恋』だったら、堅くてドブス(おい)な正妻にうんざりし、娼婦たちと遊んではいるものの、結局空虚でしょうがなくて、うぶで何しても自分を肯定してくれるコムスメにのめってしまった・・・てな感じに描かれてて(←ひどい曲解)よく解るんです(そういうのが解るって、あーた/呆)
だけどなんか、『ルドルフ −ザ・ラスト・キス−』のマリーは、そんな感じじゃないんだよな。
なんかこう、強気すぎて。
ルドルフはそういう女が好きだったのかなぁ?
母ちゃんがああいう人だけに(こら)
まぁ、東洋の片隅に巣食う恋愛ド音痴のぼくなぞに、歴史の大変換期に生きたオーストリア皇太子の心理など解り得ようか。いや、ない。(反語)
よって、どうにもこの作品の「恋愛劇的側面」が、ルヴォー演出をもってしても、一切沁みてこないのであった。
こりゃまさしく、ぼくの方に原因があるとしか思えん。
なので、ここは諦めよう。
で、「政治的側面」の方だが、こっちはなかなか面白かった。
登場シーンが本物の肖像そっくりでぼくのテンションを相当盛り上げてくれたクニクニ(村井國夫)のフランツ・ヨーゼフと、サカケン(坂元健児)のターフェ。大好演。
特にターフェは、サカケンのキャラクターもあるのか、ルヴォーの演出もあるのか、単純な悪役じゃなく、奇妙な不気味さがあって、彼が登場するどのシーンも傑作となっていた。
そもそもぼくは、マイヤーリンク事件って、本当に「ルドルフとマリーの大恋愛の末の心中」か? と実は疑ってまして(真相は藪の中だしさ)
マリーの死因がルドルフに撃たれたもので、それは彼女本人も納得の上・・・までは本当だと思ってるのだが、その後というか、前後の事柄がどうもいまいち・・・。
ルドルフは心中の相手に本当はミッツィーを望んでいたのに思いっきり拒否されたらしいとか、実はマイヤーリンクは心中なんかするために行ったわけじゃなくて、軍隊が襲ってきたから追いつめられて発作的に自殺しちゃったんだとか、もろもろの逸話に心揺れてるわけです。
要するに、ルドルフ皇太子に対して(というか「歴史事実」というものに対して)拘りすぎてんだろうなぼく自身が。
なので、ターフェの怪しさ満点の動きやフランツ・ヨーゼフのさりげない行動(何かの伏線じゃないか? みたいに見える)なんかに、とても目が行きました。
で、ハプスブルクに絡んだ話になると、するっと登場する(おいこら)イチロさん(一路真輝)
ラリッシュは気のいい姉さま的キャラで、本質的に彼女に似合うのはアンナ・カレーニナみたいなよろよろした人妻だとぼくは思ってるので(そ、そうなの?)、一幕目は軽快さがいまいちかなと思ってたけど、二幕目のシリアスな役回りになると、ヅカ出身らしい振り幅の広い分かりやすい彼女の演技って、こういう大劇場ものにはマッチしてるなあと感心いたしました。(また皮肉っぽくなってしまった。違うのよ。本心で「良かった」と思ってるんです)
歌は相変わらず鼻にかかってたけど(←だからその一言が余計なの!)
で、結局どうだったのかというと、ダークレッドというテーマカラーで印象が統一されたルヴォーの演出はとてもスタイリッシュで、「カッコいいなぁ」と感心はしたものの、今回も結局「暗いな」という印象。
暗いのは大好きなんだが、なんかこう、ゾクゾクする暗さというよりも、単純に“元気を出す気がなくなる”暗さというか・・・。
なんだろな。やっぱぼくにはルヴォーの演出を理解する力がないのかもな。
『ナイン』も、G2さんの演出の方がずっと面白く感じたし。
ただ、あの「盛り上がり皆無」の終わらせ方には、逆に感動しました。
すごい勇気だと思うよ。演出家として。
ミュージカルじゃなくて、ストレートプレイでルヴォーが演出した「マイヤーリンクもの」を観たいな。
そんな気持ちを抱きました。
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