私の後任ヒショだったKさんとランチ 彼女もほどなくして辞職した。
神宮を散歩しながらお話する。 いろいろと大変な研究室だったが、仕事量の多さはこなすしかないし、できないものはできないといえばよい。互いにやれるだけのことはした。何があんなにも大変でどうして私たちはこんなにも傷ついているのだろうと話し合う。
ふたりでTさんという女性に思い至る。 いかにも親切にあれこれ教えてくれていた風で結果、彼女に振り回され余計何かとこじらされ些細なミスを大きくされ、ヒショへの不信感を周囲に吹聴していた。しかもそれは彼女の色恋沙汰に端を発したもので1人密室で多忙な業務をこなしていると現れるヘルパーのふりをした「狸」でだった。
2人で話しながら合点がいき涙す。
人の気持ちが折れるのは仕事量からではない。まるでカルトのように、無力感を味あわされこの人がいないと自分はだめだと思い込まされ、おかしいなと思う事が多々あっても、研究室内のことは他言無用と言われているし忙殺的な忙しさでかまってられない。色恋のどろどろに巻き込まれたくない。相談する人もいない。疲弊していく。そこに子育て、家庭の事情、積み重なって行く仕事。
そうだった。 思い出した。 ふたりで洗脳がとけたように楽になる。
やれやれ。 ひとりお友達ができた。
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