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2017年05月21日(日) 『グレート・ギャツビー』(日生劇場)

なんかあのー・・・変な舞台だったぞ。





いきなり問題発言ですみません。

「変」っていうのは、作品そのものが変だったということではなくて、今回の上演に対するぼくの観客としてのキモチに「変」なものが生じたというか。

意味分かんない?

うん、そうでしょうね。

噛み砕いて説明します。



井上芳雄が主役を演じた舞台作品は、17年前の彼のデビュー以来、大小合わせてこれまで20作以上。主役じゃなくても、ヒロインの相手役とか、重要な役を演じたものも合わせれば、30作近くになる。つまり、芳雄君が主役を演じるということに、いまさら気負いだとか力みだとかを感じる(本人は知らないけど、少なくとも、観客であるこっちが)ほうがおかしいのだ。

だけど、なぜか今回は違った。

F・スコット・フィッツジェラルドが生んだ、この稀代の悲劇の青年を井上芳雄が演じるということに、ぼくはものすごーい覚悟(期待、というのとちょっと違うんだよな)を抱いてしまったのだ。

それはやはり、脚本・演出が小池修一郎だという点が大きく影響してくる。

小池先生がギャツビーを描く、ということは、当然あの、大傑作の再来を期待されるということだからだ。

つっても、ぼくは1991年に雪組によって上演された『華麗なるギャツビー』は映像でしか観ていない。

だが、映像で観てもおそろしいほどの傑作だった。

ほんとに女の人がやってんの?!って、素人みたいな(実際当時のぼくは、タカラヅカの観客として素人だったが)感想が何度も湧き上がってきたことを思い出す。

実際にはめっちゃ華奢で小柄だった杜けあきさんが、バブル時代みたいな肩パットを何枚も入れた背広(ジャケット、ではないところがミソっす)を着てがんばってギャツビーを演じていて、最初はその違和感にクラクラしたのだが(暴言!)、お話が進むにつれ、その不自然さ丸出しの背広の背中が、もーこの上なく美しくてカッコ良くて、その背中を見ていて涙がこぼれてくるという、すごい経験だった。

ちなみに、実際に生の舞台を観ることができた瀬奈じゅんさん主演の『グレート・ギャツビー』では、女性にしてはすがすがしいほど()広く美しい背中を持つあさこ(瀬奈)のその後姿に、思う存分うっとりしたものだ。

そう、「背中」なのである。

ギャツビーのキモは、「背中」

この点については、今回芳雄君がギャツビーを演じるに当たって、カリンチョ(杜)と、あさこ(瀬奈じゅん)の、二人の“小池ギャツビー”の先輩から、しっかりと伝授されたらしい。

女性が本物の男性に「カッコいい男の背中の見せ方」についてアドバイスする、ってところが、さすが世界に誇る男装演劇集団(変な異名つけないで!by ヅカファン)を擁する日本演劇界って感じだ。

そんなこともあって、今回の芳雄君主演による『グレート・ギャツビー』は、ぼくにとって、「タカラヅカでの三演目」みたいな位置づけになってしまったのだった。

そういうわけで、ぼくは今回、芳雄君がどんなふうにギャツビーを演じるのか、ということよりも、芳雄君が“いかにトップさんらしく”主演してくれるのか、という方に意識が行ってしまったのだった。

長くなったが、これが最初に書いた「変な舞台」のゆえんである。

これまで芳雄君が、初めて『ミーアンドマイガール』のビルを演るときも、『エリザベート』のトートを演るときも、そんな風に感じなかったんだけど、なんでだろな。

と思って、ハタと気づいたのが、今回のキャストである。

デイジー=夢咲ねね

マートル=蒼乃夕妃

ジョーダン=AKANE LIV

エリザベス=渚あき

キャサリン=音花ゆり

ヒルダ=七瀬りりこ




・・・おいっ!小池!! (°°;)よ、呼び捨てすんなよ(汗)

OG公演かよ(こらこらこら)

実際、彼女たち、何か“お手の物”感がすごかった。

かといって、ヅカ臭が強いわけでもなく、むしろ娘役芝居などしてたら骨の太い本物の男相手ではおかしなことになるわけで。

タカラヅカ芝居が、というよりも、小池演出が“お手の物”だったんだろうな、きっと。

でも、それなら芳雄君も万里生君も、広瀬君も畠中さんも、小池演出は受けたことがあるわけで。

実は、今名前上げた人たちの中で、ぼくがモヤモヤしたのは井上芳雄だけなのである。

流れで、男優さんたちへの一言寸評。



田代万里生(as ニック)

すばらしく良かった。彼は観客の代表である。観客と同じ感情で、この悲劇を見守る。その傍観者ぶり、そして適度なおちゃめぶりが見事。

ギャツビーやジョーダンに振り回されて舞台の上でちょこちょこ小芝居をしてるんだけど、それがいちいち的確で、ほとんど彼から目が離せなかった。


広瀬友祐(as トム)

研11にして見事3番手昇格(だから、タカラヅカじゃねえっての)

実力と華がすっかり身についてきましたな。芳雄君相手に迫力負けしてなかったのがとにかくすばらしかった。


畠中洋(as ジョージ)

ショボいおっさんだが、観客の心に最も重たいものを落としてくる役。いつも自信なさげにぼそぼそしゃべってるのに、きちんと台詞が聞こえてくる。その熟練に唸りました。


本間ひとし(as ウルフシャイム)

最初はコメディリリーフみたいに出てくるのに、最後には裏社会の人間の残忍さを見せ付ける。その緩急の見事さ。



皆さん、がっちりピースがはまってた。

ついでに女子も。


夢咲ねね(as デイジー)

あえて言うなら、一番ヅカっぽい芝居をしてた。若い時の場面とかね。

でも、とにかくひたすら「美人」だった。(何だそのほめ言葉)

いやいや、デイジーはとにかく「美人」でないとならん。そこ大切。

二幕目の冒頭、ギャツビーとデイジーが互いに身支度させ合うシーンがあって、ここを生々しく描いていないところにグッときたのだが(トムとマートルの浮気の場面との対比なんだろうな)、そのシーンでのねね姫の首の細さに思わずくらくら。

男って、女の乳とか尻とか以上に(ておどるさん、お下品だわよ)、こういうところにドキドキしちゃうんだよねー、と思わず感心してしまいました(分かるんかい?!)

だが、未だにねね姫の相手がちえちゃん(柚希礼音)じゃないと違和感があるのは、こっち側の責任だろう。早く『1789』再演を観たいものだ(今それ関係ねえぞ)


AKANE LIV(as ジョーダン)

彼女については、そもそも歌劇団時代の記憶がないので、すっかり今の感じしか知らない。そもそも男役だったそうなので、最初から娘役芝居にはならない強みがある。

強気で冷淡な女ジョーダンを楽々と表現していた。歌も楽々。そろそろ強気じゃない役も見てみたいけど、今回はジャスト適役だったと思います。


蒼乃夕妃(as マートル)

まりもが実に迫力のある女優であることを、実は退団後に実感している。

やっぱ娘役って、相手役さんを“食わない”ことを求められちゃうのが現実なんだよね。

どんなに実力があり男らしさ満開のトップさんでも、娘役が地を出してぶつかっちゃうと、骨細なのがばれちゃうんだもの。そこをいかにも強そうに見せてあげるのが娘役トップの隠された実力。

それを今さら思い出させてくれるまりもの体当たり演技でございました。

そして、トップ時代に思ってたより、あんま歌がうまくなかったんだなー(おい!)と今日思いました。


あとの3名様(OGとしてはもう一人、山田裕美子さんが出てたが、申し訳ないが在団時のことはまったく思い出せない。夢華あやりさんという名前で雪組だったそうである)に関しては、「しっかり実力を発揮してるな」というあっさりした感想で失礼します。

そうそう、りりこの美声がけっこうフィーチャーされてて(ヒルダがソロ歌う場面があったほか、小池演出得意の()幻想のシーンでカゲソロやってた)耳が幸せでした。





で、また芳雄君への感想に戻る。

さっき散々「背中」について語ったが、実は今回ぼくが芳雄君のギャツビーに違和感を抱いたのは、ギャツビーがパーティの場に初めて姿を現す、タカラヅカでいう「トップさん登場!」のシーンであった。

ヅカ演出脳になっちゃってたのかなあ、思わず拍手したくなるインパクトが感じられなかったのである(実際にはちゃんと拍手が起きてましたが)

もともと小池先生は、主役が登場するときにファンファーレ鳴らしたりするタイプの演出家ではない(誰に対する皮肉だ?!)

でも、そういうときこそ、タカラヅカのトップさんは、自前で観客の脳内に直接ファンファーレを響き渡らせちゃう超能力のようなものをお持ちなのである。

その華やかさといったら!

・・・芳雄君にそれがなかった・・・あ、いや、弱かったのが、すごく残念というか不思議で。

感じられなかったのはぼくだけなのかな。そこも不安なのだが。

とにかく、この登場のインパクトの弱さを、最後までずっと引きずってしまった感じである。

この他の場面では、若き日のジェイの初心さ、デイジーへの溢れまくりの恋情、期待したとおりの芝居を見せてくれた。

ただ、裏社会で生きている男のドスのきいた黒さが見えてこない。

やっぱ、“王子”だからなのかなー?



まあ、ぼくの期待が多大すぎたといういつものオチなのかも知れない。決して「ぼくが観たかったのはこんなんじゃない」って感想ではないので、悪く思わないでください(と、腰が引けたシメ)

あ、最後に。

音楽がタカラヅカバージョンとは全く変えられていたんだけど、それはもちろん吉だったと思います。

「パーティ♪パーティ♪ギャッツビーのーパーティ♪」っていう例の曲が最初頭ん中でぐるぐるしてたんだけど(笑)

ちなみにぼくが一番気に入ったのは、ジョージの店で歌われる「灰の谷」

自動車工たちのダンスもカッコ良かった。

以上であります。


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