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■ 塩大福
「お父さん、銀座のアケボノって知ってます?」 「ええ、もちろんです。あそこの塩大福、銀座苺、桜餅旨いですよ・・それが何か?」 「そうそう、その塩大福なんですがね、段ボールの箱に一杯入った前日の売れ残りを、毎朝店の前にサンプルとして飾るんですねぇ。段ボール一杯ですよ!旨くないから売れないんじゃないですかねぇ?」 「へ???それって本当のサンプルではないんですか?オイラも毎日側を通りますから知っていますがねぇ」 「いや、あれは本物の大福です。間違いありません」アイチャンは人に疑われると身振りが大きくなって目が三角になります。 「ね、ね、ね、触ってみました?柔らかかったですか?」 「飾るところも見ましたし、触ってもみました。柔らかかったですよ」 「半分に切って中のあんこを見せたサンプルもありましたか?」 「イヤあれは絶対に本物の大福です」 その場にいた全員が(ウッソ!)という顔。
次の日、お父さんは何故か恐る恐るアケボノの前に近づきました。例の大福が店の前に山のように積まれています。ほこりにまみれて少し灰色ぽく見えます。あれは絶対に本物のサンプルです。でも・・・柔らかいと言っていましたねぇ。もしかして本物かも。どちらが正しいか本気で触るしかありません。誰かに見られたらすごくかっこわるい気持ちです。サンプルをじっと見ている自分も、他人から見たら滑稽でしょう。あのジイサンよっぽど腹すいてるのかな・・・・? そそそっと何気なく指先で大福の腹を触りました。堅いです!隣の半分に切られた大福のあんこに指をつっこみました。指が入るわけありません。ヲッホォかっこわり・・・・!すんげぇかっこわりぃぃ! アイチャンの触ったのはいったい何だったんだ。もしかして隣のオバサンのおしり? それは去年の今頃のお話。今日店の前を通ったらふと思い出しクスリとしました。ちょうどお雛様です。桜餅のサンプルが目に入りました。本物の桜餅を土産に買って帰りました。桜の葉っぱの香りと何とも云えない柔らかさ・・旨かったです。そして再び思い出しました。アイチャンの言っていた柔らかかったって何だったんでしょうね?
2005年03月03日(木)
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