2013年03月28日(木)...新居

 だだっ広い部屋に寝転がっていた。予定の家具が、手違いで届かず、未だがらんとしている。書類が山の様に在って、ひとつひとつ読む気にもなれない。

2013年03月20日(水)...絶不調

 午前2時。救急車の立てる喚き声が、煩い。空っぽになった其れは、黄色く苦い胃液を吐き出して、痙攣を引き起こしている。手足は冷たく、痺れ震えていた。五臓六腑総てが軋んで、酷く痛んだ。定まらない焦点がちかちかと光を見ている。
 午前4時。気が付けば、点滴の刺さる腕をぼんやり、見ていた。

2013年03月14日(木)...最果て

 泥濘の様な気分が続いていた。其の、酷く不快な小康状態は、蔓延し、生活を怠惰なものにしていた。
 白と青緑のカプセルを舌先で転がす。禍々しい配色の其れは、眠気を助長して全てを虚ろにしてゆく。霞の掛かった極彩色の世界で、傷みだけが、苛立ちを掻き消し、鮮明で、甘美だった。傷口から溢れるネオンカラーの靄は部屋中に広がって、ふわふわと漂っている。傷みだけが、熱を持ち、色を持ち、きらきらとして心を落ち着かせていた。

2013年03月13日(水)...鍍金

 世間体と、見栄に繋がれた世界は、酷く整えられていて、何処か別の世界をふわふわと歩いているみたいに現実味を帯びない。見せ掛けの完璧さが実態と乖離して、傀儡の様吊るされた侭、ぱくぱくと呼吸をするだけ。
 罪悪感の齎した躍然たる無謀に、収拾が付けられる筈も無く、唯茫然と眺めている。手を出さなければ、自由で居られた、だろうか。

2013年03月11日(月)...性急

 何処かの本で、其れは根元的な罪悪のひとつだと綴られていた。性急。其れ故に、過つ。焦燥に急かされ、張り子の理想を求める空虚さに、道化だと、切り捨てる強さを思った。
 実情の無い、豪奢ばかりが増えて、がらんとした空々しさに身震いする。

2013年03月06日(水)...散髪

 つるん、とした毛先に、カラーリングの匂いが染込んでいる。
 数分後毎に、春の訪れを浮き浮きと待ち侘びたかと思えば、酷い嫌悪感に苛まれていたあの頃とは違い、今は、平坦な心持が続いていた。

2013年03月05日(火)...季節

 陽射しが温かさを含んで、アスファルトに零れている。其の、少しの暖かさを敏感に捉えた若さは、ミニスカートの裾をひらひらと素肌の太腿に擦っていた。
 若いな、と思うと同時に、酷く眩しい。未だ寒い、其れは、不活性から来る何か空々しい生き様を嘲笑っている気さえ、した。

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