2009年12月09日(水)...哀婉

 マフラーを忘れた首元が寒くて、身震いする。2年ぶりに降り立つ駅と、見上げたアパート。おかえり、の言葉で迎え入れられた部屋は、懐かしい匂いがした。薄っすらと緑掛かった蛍光灯に照らされた其の顔を見るなり、安堵の溜息が零れる。
 白と山吹色の科学が喉を伝って、久しく味わって居なかった安寧の気配を感じる。サイケデリックな原色が飛び散って、膨張と収縮を繰り返す世界は、何時もの黒い羽虫に塗り潰されることなく、白く白く光輝いていた。揺らめく天井に溢れる水が身体をふわふわと浮かべた。気持ちいい?、と尋ねる腕が押し付ける心臓に、鼓動が直接響いて、まるで羊水に居るみたいだと、思う。
 嗚呼、もう、如何でもいい。

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