2006年06月30日(金)...冷静、分析

 体温がすう、と下がった。成れ親しんだ諦めは感情を覆って、無様さを巧みに理由付けながら消し去ってゆく。

2006年06月29日(木)...落着

 予想外にするすると沈着してゆく気持ちに、安堵を憶える。今なら、如何でもいいとくしゃくしゃに丸めて、捨てて仕舞える様な気がした。

2006年06月28日(水)...儀礼

 何処まで許されて、何処からが非礼なのか時々解らなくなる。明確である筈の隔たりが段々とあやふやになって、躊躇いを飲み込んだまま立ち止まる度に浮き彫りになる距離が、期待を磨り減らしていた。

2006年06月27日(火)...ランチ

 久し振りに見た友人の顔は忙しさが齎す充実の、或いは如何にもならない煩いの所為で、暇を持て余していたあの頃よりもずっと憂いを帯びて美しかった。
 喋り疲れて手にしたふわふわとした満足感はプールから上がった後の気だるい達成感に似て、酷く眠気を誘う。机に突っ伏したまま授業時間を消費した後は、じりじりとしたアスファルトの上に此の、とろんとした平和を何時までも引き摺っていたい気がした。

2006年06月26日(月)...濃霧

 薄暗い窓の外に揺らぐ灰色を眺めながら欠伸を噛み締めた。しなければならないことを挙げれば限が無いのに、今は何もしたくない気分でいる。

2006年06月25日(日)...泣き顔

 愛していると告げる口元が歪んでゆくのを、不思議な気持ちで眺めて居た。滴る水分が透明で、毎日そんな風に涙してくれるのならば、傍に置いても良いとすら思えた。拭いもせず嗚咽を堪えたまま、静かに佇むその様子に少し、魔が差したのかもしれない。跳ね除けようと思えば直ぐにでも引き剥がしてしまえる距離をただ縋るような拒否で受け入れる姿に、徐々に力の篭る指が肩に食い込んでゆくのを感じながら見蕩れていた。

2006年06月24日(土)...微温湯

 今の、ほんの少し待ち遠しいような気持ちは、あの頃の302号室に厭と云う程染み込ませて置いてきたものと多分に等しかった。

2006年06月22日(木)...隠す

 世界が雨で覆われていて、動きやすいな、と思った。

2006年06月21日(水)...維持

 見え透いた終端に脅かされて、今さえ楽しむことが出来ずにいる。突き詰めた先に転がる事実に縛られて、弁えた節度を引き上げなければ感情が持たない。

2006年06月20日(火)...小休止

 少し、疲れた。微熱に浮かされて頭の奥が酷く痛い。

2006年06月18日(日)...解釈次第

 行動と裏腹な物云いが互いの間に定着して、核心に迫らぬよう調節を図っている。夜景を見せようと高速を半ばにする心意気さえも、意味は無いと切り捨てて仕舞うけれど、含み笑いを浮かべた暗黙の前には意味を成さない。

2006年06月17日(土)...除光液

 部屋に満たされた、鼻腔を衝く其の甘さに少しだけくらくらして、48時間以上眠っていない思考がゆるゆると機能を低下させるのを、倖せの心持ちで受け入れて居た。

2006年06月16日(金)...プロローグ

 其のメールに含まれた僅かな打診に気付いたのは、此の明確な関係に於ける朦朧とした糸を意識的に繋ぎ止め様としているからなのだろう。汲み取ることで、断ち切らない様そっと、温めている。

2006年06月15日(木)...媚びる

 見苦しいな、と思った。発熱の所為で少し逆上せた思考は配慮を欠いて、情けない表情を向ける。

2006年06月14日(水)...独立精神

 聊頼への希求さえ棄てて仕舞えば、此の世界に包まれたまま自由に生きてゆけるだろうと思った。総てを自給自足出来ればきっと、誰も要らない。

2006年06月13日(火)...不断

 引き延ばせば延ばす程に厄介が累積してゆく、そう解っているから、この身の上げる悲鳴すら愉楽出来るのかもしれない、と思った。追い立てられて追い立てられて、何処に辿り着くのだろう。

2006年06月12日(月)...褪める

 偶像に紐を付けて動かしても、慰めにしかならない。

2006年06月11日(日)...疲憊

 疲れたと漏らす声が、自棄に響いて頭が酷く痛んだ。眼を瞑れば治まる筈の視界の混乱が目蓋に張り付いて、極彩色が身体をがくがくと揺すっている。

2006年06月10日(土)...夜行バス

 広告塔の群れを抜けてからもう、何時間もずっと変わり映えの無い景色をただ眺めて居る。対向車のヘッドライトに時折浮かび上がる視界は、達成感と仄暗い諦めに満ちていて、車内に眼を移すとフィルムを剥がしたばかりに思えたマーブルチョコが、その中身を半分に減らしていた。

2006年06月09日(金)...退廃

 窓を洗う雨に、総て消えて仕舞えばいい、と呟く。

2006年06月08日(木)...疲弊

 濃淡を繰り返す意義に振り回されている気がした。

2006年06月07日(水)...距離感

 欲求が配慮を退ける、其の余りの性急さに馬鹿だな、とひとりごちた。

2006年06月06日(火)...縋る

 優越感と罪悪感が交差して、甘えを捻じ伏せる理性が強弱を繰り返している。厭になる程の幼さを露呈していることにさえ注意を払えずに、今は、何時か尽かされるだろう愛想にしがみ付いている。

2006年06月05日(月)...食欲

 チャイムを聞いた刹那、胃液がぐっ、と逆流するのが解った。辿り着いた教室は食べ物の匂いとひとの動きで満ち満ちていて、扉を前に躊躇いが生じる。其の咀嚼して飲み込む様を眺めて居ると、本日3度目の嘔吐を催して、眩暈がした。

2006年06月04日(日)...散髪

 少しだけ見通しの良くなった視野とつるん、とした毛先に、感情までもが浄化された気がした。

2006年06月03日(土)...独善

 絶望が世界を揺るがして色を奪っているのに、眼に映る景色は如何してこんなにも夏の躍動感に満ち溢れて華やいでいるのだろう、と思った。麗らかな午後は幾時振りかにふわふわと身体を飲み込んで、今朝方の緊迫を溶かしてゆく。もし、総てを認知するだけの許容があれば、優しさを少し奪われても苦にならなくなるのだろうか。

2006年06月02日(金)...限界

 衝動と理性が鬩ぎ合って、その不明瞭に依存した時間軸は蜃気楼のような不確かさでゆるゆると進んでいる。刻々と希薄になる存在に耐えかねて、眼を鎖すと瞼の裏に広がる世界1面に書き殴られた、消えたいの文字。

2006年06月01日(木)...無駄、埋没

 鏡越しの出口を、躍起になって抉じ開け様として居たのかもしれない、と思った。結局、此処はひとりで、如何にも為らない。
 鎖した瞼に結論がちらついて、突き詰めようとする思考を反射的に絶った。ぼんやりと形作られたそれは消化不良のまま、じりじりと機会を窺っている。

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