絶望の最中で死んで行くよりも、最高に満ち足りた瞬間に逝く方が、人生の幕引きの仕方としては良いのかもしれない。 その方が、惨めでは無いだろう。
絶頂で潔く散る事ができたら、何も言う事は、無い。
母の鼻歌は、怖い。
機嫌が良い事の証、では無いからだ。
鼻歌を歌う時は、心が波立って居る時。
あの鼻歌は、狂気交じりに聞こえる。
だから私は、不穏な空気が広がっても心が持ち堪えられるように、身構える。
今日ばかりは、障碍があって良かったと思った。 もしも此の身体が健常であったなら、立ち上がり、凶器を手に取り、彼奴を打ちのめしていただろう。
犯罪者に為らずに済んだのは、忌まわしき障碍のおかげか。
否。
打ちのめしたいと思う程に見縊られるのも、この障碍故であろう。
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