RMの日記
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2009年06月19日(金) 語る力

 研究能力を認められて大学教員になる場合が多く、私もそうだ(と思う)。そして研究を始め、発見をし、この自然界のシステムを解き明かしていく。その成果は研究室内で、あるいは学会で語られていく。解き明かしたことをそのまま伝える。しかし、ある程度解き明かしができ始めた頃からそれだけではいけなくなってくる。求められる能力がある。語る力。解き明かしたことを研究にまったく触れていない人に理解してもらうのに必要な語る力。小学生、中学生、高校生にもわかってもらえるように伝える力。
 相手の状況や理解レベルを把握して、平易な言葉のみで伝える。伝えるには惹き込まないといけない。魅力を感じさせないといけない。相手の興味に合わせて語らないといけない。そうやって魅力を伝えられた暁に、研究が世間から認められて、人が集まり、予算がつく。世間に認められるために研究をしているのではないけれど、世間に認められないと研究できないシステムになっているので、昨今の研究者には必須の能力。
 正確に語る必要はあるけれど、細部にこだわることなく、エッセンスをいかに伝えるかに重点を置く話し方。完全に正確でないと話せない、という良心的な人は魅力的な語りはできない。研究者にはそういう良心的な人が多い。私もまだそういう部分から抜け出せていない。大胆に語らないといけない。伝えたいことを一つ二つのみ決めて、それを伝えることを重点に置いて、相手に合わせて語る。
 子供の頃からあらゆるタイプの人と接してきたかとか、大人にもまれて育ってきたかとか、親にいろいろ物語を伝えてもらったかとか、親や友達とどんな類のものでもディスカッションしてきたか、とかそういうことが語る力を作っていく上で大事。過保護状態で幼少時を過ごし、反抗期には大人と話さなくなり、教員になってからは純粋に研究を楽しんでいたのでは、語る力はつかない。
 今年から研究室では半独立状態で、私の語りのみでついてくる学生が何人かいる。今年から講義担当がある。真剣に語る力をつけないといけない。
 今日、出前授業80回をこなしてきた先生と懇談してそんなことを思っていた。母校の出前授業にも行こう。


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