舌の色はピンク
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2016年03月13日(日) ガールズ&パンツァーについて一考

遅ればせながら、
このたびTVシリーズに加えOVAならびに劇場版までをいっきみしました。
すばらしかった。いいぞ。ってやつですね。

の一言で済ませてもいいんだけど自身の覚え書きもかねて、
個人的な見方を以下に記してみます。



とにもかくにも戦車道という題材が抜群に魅力的でした。
かねてより、戦争を扱った作品にはいちいち悲壮感だとか教訓だとかの
野暮ったらしい後ろめたさがつきものであるのに辟易してまして、
時代劇での「戦」がちっとも不謹慎でないのと同じ地平に立つには
あと何十年待てばよいものかと、僕はやさぐれていたのです。

戦争そのものは悲惨である、忌避すべきである、
肯定せざるべきものであるのは自明だとして、
「それはそれ」としてみれば、戦争には面白みのある要素が、
消費者を楽しませる娯楽的材料が盛りだくさんなんですよね。
それらはフィクションの作品で描かれる分には問題ないはずなんです。
だれも時代劇の戦を不謹慎だなんて叩きません。
SFも同様ですね。日本にあってはロボットアニメで顕著です。
しかしこれがWW2を扱ったとなると途端に大人たち、身構えてしまいます。
作品の送り手だけならまだしも、受け手にしてみても
「これを楽しんじゃっていいのかな」という気負いが発生してしまうものです。
ずっとそう縛られ続けているんです。


そこでガルパンです。戦車道です。
戦車といえば戦争の兵器である、
この連想はそうそう断ち切れないことでしょう。
しかし作中のセリフにもあるとおり、
「戦車道は戦争とは違う」のです。
殺傷のための剣術が武芸としての剣道へ化けたのとまるきり同じ論法で、
殺し合いからは切り離されて独立して、
一側面においてのみとはいえ大げさにいえば
「脱・戦後」を果たしているんです。すげえよ。
ガルパンには押し付けがましいメッセージなど皆無で、
物語は明るく健全で、キャラクターも前向きで、後ろめたさがまったくない。
その清澄さが、これまで余計な気負いに縛られていた人々の魂を解放してくれた、
フィクション作品のいちジャンルが自由な未来を歩める手続きを済ませてくれたのだと、
ごくごく個人的な小さくか細い声ながらも、偉大さを讃えたいわけです。


で。今後現れやすくなるのであろう「解放された作品」の最適な好例を、
ほかでもないガルパンそのものが、劇場版で示してくれた。
きもちよかった。びっくりした。
それだけでも泣きそうになるくらい感動したのです。


何より、以上の見方をまるごと全てのけても、ガルパンはすばらしい。
あの作品をかこむ全ての人間が好循環の幸福を楽しんでいるような、
そう見える現象もてつだって、ただひたすらに味わい尽くしています。


れどれ |MAIL