月が降る


白い夜が降りている
迷いなく、まっすぐに
しん、とした光の海で
眠らないつま先は
記憶のしずくを受け止める
拾いあつめて願うなら
今夜は夢で逢えるだろうか
2008年02月29日(金)

みちくさ

じゃんけんぽん
あいこでしょ

ち、よ、こ、れ、い、と、

公民館の隣の神社
夕焼けを背負って
石段を一歩ずつのぼるたび
背中でふでばこが笑う

じゃんけんぽん
あいこでしょ

ぱ、い、な、つ、ぷ、る、

どうしてグーがグリコかなんて
悩む必要もなく
競って駆け上がることも
まだ知らない

じゃんけんぽん
あいこでしょ

あいこでしょ
あいこでしょ

ないしょのみちくさを
ピンクの雲だけが見ていた
においつきの消しゴムが
たからものだった帰り道に
2008年02月13日(水)

クリーニング

放り出された夜を
洗濯機にねじ込んで


ずぶ濡れのぼろ雑巾みたいに
ぺちゃんこにしてしまえ


月は細長くきざまれて
シンクのなかをゆらゆら


「何年も洗ってないカーテンが
ぶら下がっているみたい」


そうつぶやいたところで


それがいつか読んだ本の台詞だなんて
だれも気づきやしない

2008年02月10日(日)

Kiss me.

海を見ながらふたり
書棚に隠れてこっそり
映画館の暗がりにまぎれて
ベンチで手をつないで


あやふやな記憶は遠すぎて
全てが昨日のキスにすり替わる


気まぐれ なきべそ
お菓子まみれ よだれだらけ
つい、ぬぐってしまう
綿菓子みたいにこそばゆいそれは


本物のだぁいすきがぎゅっとつまった
あの子だけがくれる幸せのおまじない
2008年02月04日(月)
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