ゆらゆら

ゆれる、ゆれる
ずっと天秤の皿の上
掴めばさびてしまう錘
愛しさと苦しさが
となりあわせの
2007年07月31日(火)

ぼくたちの日々(2)






君ともう少し早く出逢っていたら
今とは何か違っていただろうか


君がすべてを失う前に
僕がすべてを手に入れる前に


出逢っていたとしたら


君のやがて奪われゆく大切なものを
その日に戻って守ることができたとしたら


けれどそれは
ひとつのきっかけとしてしか存在しえずに


ふれあうこともなく 二人
笑顔で別れるのだろうか


もし そうだとしても
君とあのころに出逢っていたなら


僕らがそれぞれ別の場所で
瞳を輝かせて生きていたころに
2007年07月26日(木)

有線放送

知らない人が早朝にやってくる
知らない誰かのお見舞いを集めに


知らない人が夕暮れにもやってくる
笑顔で連れ立ってお悔やみに誘う


鳴り止まないピンポンと
役に立たないインタフォン


考えることはなにもないさと
にこにこ笑う


人々は葬儀の準備に仕事を休み
わたしは明かりを消して月を見上げる


有線放送はいつものように
誰かの葬儀のご案内を申し上げている
2007年07月25日(水)

ホームシック





キッチンのゆかの
冷たいタイルにほっぺたをくっつけて
あのこがやってたみたいに
足をぱたぱたさせながら
さて、そろそろ帰ろうか
なんて
つぶやいてみる











2007年07月22日(日)

部屋とワイシャツと・・・。


君のために生きて
君のために死ぬと
誓った土曜日は
束ねられた記憶の
後ろから三番目あたり


部屋とわたしは磨いても
ワイシャツはかごの中で
くしゃくしゃのまま


君との最新の記録は
どのへんだっけ








2007年07月20日(金)

スターバックス コーヒー

わたしたち
また逢えるのかな
今度逢うときも
はじめて逢ったときみたいにうつむいて
君の白いスニーカーばかり見るのかな
手に触れるまでに半日かかって
ちゃんと目を見ることができる頃には
駅に見送りに行くのかな
小雨が降ったね
示し合わせてもいないのに
二人してブルーグレーの服を着てたね
写真をあまり撮らなかった
なぜかは言わないでおく
時間がもったいなくて
眠ってしまわないように
夜中に手をひじまで洗ったね
そして二人で
朝まで触れ合って眠ったね
わたしたち
努力することさえ
忘れてしまったのかな
君はもうわたしのぬくもりも
忘れてしまったんだろうな
また逢えるのかな
わたしたち
いつか
また逢えるのかな

2007年07月18日(水)

本能

誰も知らない空っぽの部屋で
雨の降る日は外を眺めて
月の夜には天窓の下で


拾われた猫みたいに
屋根のあることに感謝して
飼われることを選んだ


封印していたはずの本能が
ずれた心の隙間から
漏れはじめている


贅沢だと責められようが
無謀だと笑われようが
 

それに気づいてしまったのだから
2007年07月16日(月)

男の子


キーボードを操り

仕事をそつなくこなす手は
おもちゃのロボットを
満足げに組み立てる



介護バスのハンドルを
慎重に握る手は
颯爽と
自慢のバイクのキーを取る 



小難しい本とプラモデルが
いっしょくたにおかれている机の上



男の人の手
男の子の手
2007年07月13日(金)

ワガママ









いなくなってしまえば
悲しいことなんかなくなると


最初からいなければ
悲しいことに気づくこともなかったと


そう思って
いなくなる準備をしたけれど


黙っていなくなることができずに
声を聞いたらいたたまれずに


いやになるほど知っている
とりのこされる苦しみを


悲しみから逃れるために
押し付けることはできなくて


でも ほんというと


そんなキレイな想いなんかじゃなく
ただ 声を聞いていたいだけ


たましいなんかつながっちゃいなくても
まだ そばにいたいだけ


それだけのこと
ただの身勝手な想い


もしも 許されるなら


たとえ 許されなくても







2007年07月10日(火)

7月7日、曇り

コンビニで
白黒の封筒と筆ペンを買い
見慣れた道を急ぐ
レシートに7が三つ並んでいることは
心の中にしまった


やまない雨が
星に願いをかけたあの日をつれてくる


一粒の雨さえ許さない梅雨空をみあげて
涙雨なんて言葉を拒む
気丈なあの人らしいと
感心したっけな
2007年07月08日(日)

アヒルのきもち


それは 週明けの深夜
シャボンの香り エコーする鼻歌
塩ビのくちばしに気まぐれなキス


あるいは 
思い出さえ流し去るつもりでいた新しい朝
酔った勢いで捨てた歯ブラシを探す


時間と記憶のトリックにのまれ
おそるおそる寄り添った肩は
愛しい嘘に傷ついて


涙で溢れたバスタブに
心まで沈めた日曜の午後


いつでも いつだって
君のほんとうを ここでみている


君の信じる道を 思うままに
不器用でも 回り道でも
見返りなんか得られなくても


今夜もこのせまい空間で
未練がましい君の泣き言を
黙って聞いてあげるから







2007年07月06日(金)

雨の月曜日

寝転がって目を閉じて
それから
薄目を開けて
天井を見る


雨音が
泣いてもいいよと誘っている


哀しさの訳は
昨夜から降り続く雨と
月曜日の憂鬱


雨の日がすきだなんてことは
この際
こっちにおいといて

2007年07月02日(月)
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